海の底の真珠貝の中でつくられる6月の誕生石・パール(真珠)。日本を含む世界中で古くから、パールには特別な魔力が秘められていると考えられてきました。
今回はそんなパールにまつわる伝説や神話をご紹介しましょう。
目次
世界各地に残るパールの誕生伝説
真珠貝の中で、パールはどのようにして作られるのでしょう? その仕組みを知らなかった古代の人々は、海の底の真珠貝の中からパールが見つかることに神秘的なイメージを抱いていたようです。
インドでは、天の滴が海に落ち、口を開けた貝の中に入るとパールになると考えられていました。天の滴は雲の中でパールになることもあり、こちらは雲の真珠と呼ばれて神々だけが所有できるものとされています。
一方、中東ではよく晴れた日になると、真珠貝が日光浴をしようと海面に浮上し口を開けることがあるといいます。この時、天上界から落ちた神々の涙が太陽の光を受けて火と水の化合物となり、口を開けていた真珠貝の中に落ちてパールとなるのです。
古代ローマでも、パールは不思議な方法で誕生すると考えられていました。1世紀のローマの学者プリニウスが著した『博物誌』には、繁殖の時期に口を開けてあくびをした貝が特別な露で満たされて妊娠し、やがてパールが誕生するという話が残されています。
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何でも願いを叶えてくれる「如意宝珠」
パールはアジアでも不思議な魔力を持つ宝物だと考えられていました。
仏教の経典や伝承の中には、パールが「如意宝珠」という魔力を秘めた宝物として登場します。如意宝珠とは、如意輪観音や地蔵菩薩などの仏像が手にしている宝珠で、先のとがった栗の実のような形をしており、炎が燃え上がっているような形の飾りがついていることもあります。
仏教説話によると、パールが海の底の真珠貝の中で成長するように、如意宝珠も海の底の龍宮に保管されているといいます。
如意宝珠は文字通り「意」の「如」く願いを叶えてくれる魔法の宝物で、次のような力を持つということです。
・心に思った瞬間に、欲しいものが何でも手に入る。
・如意宝珠に触れれば風邪や熱病もあっという間に全快する。
・付近一帯を過ごしやすい季節に変えることができる。
・眼病、皮膚病、腫れ物などが治る。毒蛇に咬まれた毒も消滅する。
・濁った水を清らかな飲み水に変えることができる。
・如意宝珠に触れれば風邪や熱病もあっという間に全快する。
・付近一帯を過ごしやすい季節に変えることができる。
・眼病、皮膚病、腫れ物などが治る。毒蛇に咬まれた毒も消滅する。
・濁った水を清らかな飲み水に変えることができる。
ひとたびこの宝珠を手に入れれば、無くさない限りいつまでも思いのままの生活を送れるといわれています。
如意宝珠とパール
『源平盛衰記』の中から、如意宝珠とパールにまつわる逸話をご紹介しましょう。
その昔、
それからずっと後のこと、熊野参りにいらした後白河法皇は、那智の滝壺を訪れた際にこの花山法皇の逸話を思い出し、滝壺に放たれたという鮑を見てみようと考えました。そこで早速、海人を滝壺へと潜らせると、戻って来た海人は「傘くらいの大きさの貝がある」と報告したではありませんか。
こうして、那智を参詣した人たちは口々にこんなことを言い合うようになりました。
「滝壺の鮑のおかげで、那智の滝の水に触れた者は命が長くなるという。さらに、洞窟の如意宝珠のご利益で全ての願いが叶うそうだ」
ちなみに鮑も真珠貝の一種で、中から真珠が取れることがあるということです。
日本神話とパール
パールは日本神話にも登場します。
そこで占いをしたところ、島の神が現れ、「明石の海の底に真珠がある。その珠をわたしに供えれば、獲物は全て手に入るだろう」というではありませんか。
こうして島中の海人が集められ、海に潜ることになりました。ところが明石の海は深いため、海底までたどり着けたのはたったひとりの海人だけでした。その海人も、光る巨大な鮑を抱いて戻るなり海上で息絶えてしまいます。
鮑の中からは占いの通り、桃の実ほどもある大きな真珠がでてきました。允恭天皇がこの真珠を島の神に供えて猟をしたところ、大量の獲物に恵まれたということです。
日本を含め、世界中で古代から魔法の力を持つと考えられてきたパール。パールを見かけたり身に着けたりした際は、今回ご紹介した伝説をぜひ思い出してみてください。
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