前回まで「ゲームシステムを紹介する」「キャラクターの活躍を魅せる」「ストーリーで楽しませる」という三つの切り口を説明してきました。ゲームのプレイ動画であれば、実際にはどれかひとつということはなく、ルールというゲームそのものの紹介・説明、キャラクターの魅力、ストーリーの面白さは、それぞれを必要とします。
ルールはルールブックがありますし、ストーリーは評価の定まったアドベンチャーがあれば、動画にどこまで取り入れるかは編集の腕の見せ所です。D&Dの能力値判定、技能判定などのルールはシンプルですから、動画ひとつのシリーズのうちの序盤に、一度説明してしまえば、繰り返して時間を取る必要はないでしょう。
それに比べて戦闘遭遇でのPCの立ち回りや、呪文の効果と活用といったことは、収録したプレイで起きたことによっては場面場面で説明が必要になるかもしれません。とは言え特徴や呪文の活用は、そのPCの活躍場面でもあるので「ゲームシステムを紹介する」「キャラクターの活躍を魅せる」を兼ねることもできるでしょう。
2レベルでしかなくても、ファイターが「怒涛のアクション」の特徴によって連続で敵にダメージを与えてやっつけたり、ウィザードが「呪文効果範囲操作」の特徴により乱戦の中の味方だけを避けて力術呪文を発動し敵だけを倒すとか、小休憩をhpの処理だけとしてでなく、バードが「休息の歌」を歌う場面として演出するなど、個々のPCの活躍を強調すればルールの説明とPCの特徴を見せることを両立できます。セッションにおいて、プレイヤーが演技的なロールプレイをしていれば、PCのルール的な機能だけでなく、人物としての魅力も盛り込めるでしょう。
収録したあとは変更ができないことから、いずれのPC、モンスターとも動画制作者にとってはノン・プレイヤー・キャラクター(NPC)ですから、DMG P.89「第4章:ノンプレイヤー・キャラクターの作成」の「作りこんだNPC」に紹介される、個性的で印象に残るNPCの味付けを参照して "キャラ立ち" させましょう。ここには、ダイス・ロールで決めることもできる表が10個の要素について、それぞれ掲載されています。「職業と来歴」「外見」「能力値」「才能」「くせ」「他者とのやりとり」「便利な知識」「尊ぶもの」「関わり深いもの」「弱味や秘密」。PCに関しては、キャラクターシートに設定されたものはそのまま活かし、動画に登場する場面において「外見」や「くせ」あたりで強化するとよいでしょう。PHB P.159「珍品奇品」から、なにか追加して持っていることにして、それをいじるくせがあるとか、誰かから渡させて気にしている、といった手もあります。珍品奇品が突飛なものばかりで扱いや見せ方が難しいようでしたら、映画やアニメ作品では、長らくタバコ、口紅、オルゴール、ペンダントなどがキャラ立て用具に使われてきました。生活の中にある普通のグッズでも、画面に繰り返し映すことで所持しているキャラクターのくせを表現できるのです。