セッションをプレイ記録から動画を編集するにあたっての手法の三つ目、「ストーリーで楽しませる」を説明しましょう。
ストーリーで楽しませる
ストーリーで楽しませるにはは、プレイヤーと動画視聴者の予想を越える意外性のある面白いストーリーを用意する必要があります。この手法はDMに高い技量が求められる方法です。動画編集の段階においても、伏線を張っておいて結末で感心してもらえるような編集をしなくてはなりません。いままで見たこともないような驚天動地の映像であれば、ありきたりのストーリーでも作品を見る価値を高めることはできるかもしれませんが、TRPGの動画で、そこまで奇抜な画作りはできないでしょう。セッションでは、プレイヤーたちに対して意外性を維持しながらのマスタリングが求められます。かつ、そのストーリーをたどるように、あるいは狙った結末に至るよう、アドベンチャーの運営が必要です。PCたちの能力、特徴などにより、用意したストーリーのギミックが役に立たなかったり、プレイヤーの良いアイディアによってDMが予想しない問題解決がされてしまったり、技能判定の失敗や、戦闘遭遇においてPCたちが負けたり死亡したり、ということもあり得るため、想定したストーリーから外れてしまうことも少なくないのです。
製品のアトベンチャーならば、ルールを踏まえた様々な展開が用意されていて(例えば「この戦闘でPCが全滅したら、敵はPCを殺さずに捉えて連行する」など)、ストーリーを辿れるよう先回りした情報が設定されていることも多いです。遊ぼうとするアドベンチャーをプレイヤーが読んでいないなら、この面白さはかなりの部分で担保されるでしょう。D&Dの大型キャンペーン・アトベンチャー製品の表紙イラストは、大抵がラスボスの姿なのですが、それが分かっていてもプレイすることが楽しい、という造りになっています。
DMsGuild で手に入る D&D Adventurers League 向けをはじめとする短編アトベンチャーでは、連続ドラマのように、連作を続けてプレイしていくと「そういう話だったのか」というストーリー性が仕組まれているものが多いです。
自作のアドベンチャーの場合は、アドベンチャー作成者のストーリーテラーとしての腕前が試されます。
登場キャラクターたちの面白い経歴や相互の関係、興味深い街やダンジョンという舞台、攻略しがいのあるモンスターに、それらとのいい勝負の戦闘など、深めることのできる要素はいくつもあります。D&Dのアトベンチャーにおけるそれらの要素については、『ダンジョン・マスターズ・ガイド』「第3章:アドベンチャーの作成」が役に立ちます。それらの解説や、ランダムに設定をそろえるための表などが掲載されているからです。
また、完成している例として、公式の連作アトベンチャーを読み通すとアトベンチャーへの物語の仕込み方や、ストーリーの進みと動画をどこで区切るかの判断の参考になるでしょう。