前回まで、ダンジョンの形を定めモンスターを配置しました。戦闘だけであれば、ルールとデータはそろっていますが、PCが体験する舞台として「どのような場所なのか」の風味付けをしましょう。
洞窟ダンジョンであれば、壁、床、天井などは天然ですので、「壁も床も岩がちです。」。さらに湿っぽい洞窟なら「空気は湿っぽく、天井からは短めの鍾乳石がぽつぽつさがっている。」と言っても良いでしょう(乾いている洞窟なら付け加えなくてよいです)。さらに詳細に描写するのなら、実際の洞窟の写真などを参考に描写をすれば「らしく」できます。
建物の廃墟でも、「壁はボロボロ、天井や屋根もあちこち落ちたり穴が開いている。」と言えばよく、詳しくしたければ廃墟の写真集などが参考になります。廃墟ではない通常の建物であれば、中世ヨーロッパについての知識本や映画などから、"らしい" 建物の情報を得て描写ができるでしょう。
さらなるダンジョンの中の風景は、ダンジョンの住人の住み方から考えます。つまり配置したモンスターが、どのように過ごしているかを想像するところから引き出すのです。住者がどの部屋で起きてすごし、どこでどのように寝るのか。台所にあたる場所があるのか、食事をしてどのように片づけるのか(あるいは食べっぱなしか)。
今回は、ハーフオーガ、ゴブリンというヒューマノイドと、ウルフが住人です。起きてすごしているのが一番奥の部屋C(第26回参照)なのは決めていますから、そこが彼らがくつろいだり、ボスが子分に指示したりしている部屋になるわけです。ボスは子分を働かせて、食事も就寝も部屋Cで行うなら、粗末な寝具と、ボスが "人食い鬼" ならば食べてしまったヒューマノイドの骨や遺体が部屋の隅に放置されているかもしれません。生で食べるのでなく、焼いたりする焚火があるかもしれません。火をたくなら煙が出ていく換気口も、PCが出入りできるサイズかどうかは別として、部屋Cのどこかにあるはずです。空気が入れ替わらないと火が付きませんし、最悪窒息する環境になり、住むのに適さないことになってしまいます(ハーフオーガ、ゴブリンとも暗視があるので、彼らはダンジョン全体に灯りを設ける必要はありません)。お話のひねりとして、ボス自らも狩りに外出していて、PCたちがひとけのない洞窟を進んでいたら、入口からハーフオークの勝どきが聞こえた! というパターンも考えられます。とはいえ初めてのアドベンチャー作成では、奇をてらったことは後の楽しみにしておきましょう。
さて、洞窟の住人は排泄を、つまりトイレを洞窟の外で済ますでしょうか。ダンジョンの中に小さくても水の流れがあれば、そこでしそうです。
襲撃した者たちから奪った物品も、部屋のすみに山にしてあるか、なにかしらの箱にしまってあるか、寝具の下に隠したりするでしょう。就寝の際、愛用の武器を置く場所もあるかもしれません。
ゴブリンは、うまく食べ物が手に入らなければ自分たちを食べてしまいかねないハーフオーガとは、別のところで就寝するのではないでしょうか。それが部屋B(第26回参照)に当てはめられます。彼らの寝具やその下に隠した彼らなりのお気に入りの小物や宝物、ゴブリン的な台所や、飼っているウルフの餌を用意する場所と捨て場などを考えます。
部屋A(第26回参照)は、一番外に位置しますから、番犬の意味でもウルフが飼われている場所になるでしょうし、ウルフのエサ皿や犬小屋ならぬウルフ小屋か檻があるかもしれません。ウルフも食事の食べクズなどをキレイに片づけたりはしないでしょうから、部屋Bも部屋Aも、落ちているゴミが目に付く、不潔な場所だと想像できます。
このダンジョンが、村か町に近く、屋敷や廃墟としてあるなら、これらの風景の中に壊れかけた家具があったり、ソファとテーブルのセットや台所があったり、ボスはボロく不潔になってしまった大きなベッドなどを使っていることも想像できます。
このように、データ・ブロックにはない情報で冒険の舞台を飾ることで臨場感が出ます。単に数値データを操作する遊びではなく、プレイヤーがPCとして冒険を体験するというTRPGとしての特性を備えたセッションを楽しむことができます。
モンスターの生態から場所の様子を想像するのは、ヒューマノイドのモンスターでなくても同じです。ジャイアント・スパイダーやドラゴンだと、今回のゴブリンやウルフのようには共生しているクリーチャーを置くことは難しいですが、蜘蛛なら仲間としてジャイアント・ウルフ・スパイダーやスパイダーがいたり、ドラゴンは賢いため共生というよりは組織的な配下をそろえカルト教団員が仕えていたりということが考えられます。
MMにはそれら想像の材料になる解説があります。「ファンデルヴァーの失われた鉱山」をはじめとした既成のアドベンチャーでの描かれ方を参考にすることもできます。ゴブリン、コボルドが住むダンジョンについては、『大口亭奇譚』収録の「地底の城砦」がとても参考になります(そして楽しいセッションが楽しめます)。
また、テンプレート的なハーフオーガやゴブリンの生態を元に設定を考えましたが、D&Dを繰り返し遊んで慣れれば、きれい好きなハーフオーガやゴブリンだという変化球でプレイヤーたちの予想を裏切ってみたり、PCが依頼させる事件は実は彼らが犯人でなく、別のモンスターが原因での誤解で、それを解決したら地域で和解が成される、といった物語のバリエーションにチャレンジするのもいいでしょう。まずは型を修めて応用も楽しむといったところです。
〉D&Dのはじめかた一覧
次回は9月5日(土)に公開予定!
ダンジョンズ&ドラゴンズ 日本公式サイト
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