PCが探検するダンジョンのサイズを決めたら内容を決めていきます。今回は登場させるモンスターを選び、そのモンスターによって、用意した部屋が洞窟なのか、屋敷や廃墟なのかを考えていきましょう。
D&D第5版では、1レベルPC4~5名のパーティーがプレイされることを土台に、様々な難しさ ― 罠やダンジョンの広さや危険、遭遇するモンスターの強さや数 ― を設定します。この後説明する、出すモンスターの計算のためにPC4名として作ります(それ以外の人数へ対応するノウハウは、『ダンジョン・マスターズ・ガイド』(DMG)に書かれています)。
3部屋で戦闘を用意するとして、プレイヤーたちが勝つか負けるかドキドキするような戦闘を楽しんでもらうのに、登場させるモンスターがどれくらい強いかを計算するための項目が、クリーチャーの「脅威度」です。脅威度の意味は『モンスター・マニュアル』(MM)に詳しいですが、今回は詳しい計算は無しで簡易な方法を進めます。
1レベルPC4~5名向けの「ファンデルヴァーの失われた鉱山」の最初の山場には、モンスターの脅威度で、ボス・脅威度1×1体、子分・脅威度1/4×2体、ペット・脅威度1/4×1体、という構成です。同じ脅威度と数で部屋Cにモンスターを配置すれば、ラストバトルを完成することができます。こだわりなく、アトベンチャー作りとバトルの練習にプレイするためであれば、「ファンデルヴァーの失われた鉱山」での4体をそのまま配置してもかまいません。
この脅威度の組み合わせは、PC4名が部屋Cに到達するまでの戦闘でも快勝し、「小休憩」を取ったりして、ほぼ万全の状態で部屋Cに到達した上で、PCの一人か二人はhp0で倒れるかもしれない、またはDMがふる、モンスターの判定のダイスの出目が良い場合には、さらに悪い結果も起こるかもしれない、という危険がある度合いです。ひとつ易しくするには、子分・脅威度1/4を1体に減らすとよいでしょう。
モンスターを選ぶには、MM掲載のモンスターを脅威度の順に並べた表がDMGにあります(P.306「付録B:モンスターのリスト」中の「脅威度別のモンスター」)。この項目には、環境別のモンスターリストもあるので、出すモンスターを選ぶのと同時に環境を決めることもできます。もちろん、理由を考えて、違う環境に選択したモンスターがいる、というアドベンチャーを作ることもかまいません。
ボスは「脅威度1〈200XP〉」のモンスターを見て1体決めましょう。部屋A、部屋Bにもモンスターを配置するなら、知性があって群れやチームを組むクリーチャーを選べば、部屋Aにはその見張り、部屋Bは手下たちという理由も生まれます。MMのモンスターの解説やデータ・ブロックも見て考えてみましょう。
例として、ハーフオーガを選びます。ハーフとはいえサイズが「大型」のヒューマノイドで、ドワーフ、ハーフリングを食べてしまう人食い鬼が周辺地域の脅威になっているとなれば悪役らしさは十分。
ハーフオーガのデータ・ブロックは、MMのオーガの項目にあります。「オーガは可能な限り常に他のモンスターとつるみ、弱い者をいじめたり餌食にする。ゴブリン類、オーク、トロルとは喜んで手を組むし、巨人族はオーガの崇拝対象だ。」とありますので、子分は「脅威度1/4〈50XP〉」からゴブリンにします。ですが、ハーフオーガの武器のダメージが大きいく強い気がするので、子分は1体に減らします。能力値では出ない差かもしれませんが、この子分のゴブリンがハーフオーガをうまくそそのかして、群れを成立させている、かもしれません。また、PCが5名の予定だったら、子分2体でも良いかもしれません。
ボスのペットは、脅威度1/4のリストからだとウルフかボアといったところでしょうが、オーガやゴブリンが手なずけるのはウルフが絵になると思い、ウルフにします。
これで部屋Cのモンスターを決めることができました。同時に、この選択なら場所は洞窟か、廃墟となるでしょう〈村や町の中の屋敷や、小城ではなく〉。遭遇したプレイヤーが「なるほど」と思える範囲を考えて、脅威度が同じ別のモンスターを選択してもかまいません。
村や町を舞台にしようとするなら、ハーフオークは野良の野蛮な人食い鬼というよりは、文明化された思考もできる性格の個体だとします(データ・ブロックの情報としてはかわらない)。「都市のモンスター」の表の脅威度1/2の中から子分を「ならず者」に、ペットを「クロコダイル」にして、「街はずれの古い空き家をハーフオーガが率いる乱暴者たちが占拠している」という話にできます。
さて、手前の部屋の戦闘にも、部屋Cに選んだモンスターから「そこに居そうだ」という連想ができるモンスターを、脅威度を減らした基準で選択していきます。部屋Bには、ボスとペットなしで子分2体、つまり脅威度1/4×2体でゴブリン2体。部屋Aはさらに一段階へらして、ゴブリン1体かウルフ1体にしましょう。ゴブリンなら見張り当番かもしれませんし、ウルフならばよそ者が入ってきたら吠える役かもしれません。
これで、プレイヤーがD&Dに慣れてないプレイヤー4、5名で、おっかなビックリと2回の戦闘をこなし、hpや呪文使用回数が減ったから小休憩して回復し、そしてラストバトルの強いボスに命懸けで挑戦する! という場所と敵が設定できました。
次回は、場所の描写や、PCをこの場所へいざない、セッションを運営するノウハウを紹介いたします。
〉D&Dのはじめかた一覧
次回は8月22日(土)に公開予定!
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