SNSなどで、D&Dを遊んでいるという話や写真を見ると、四角の "グリッド" が描かれたバトル・マップに、ミニチュアやキャラクター・フィギュア、モンスターを並べていたり、さらに大掛かりに建物やダンジョンのストラクチャーを配置している様子を見かける事が多いはずです。これは参加者が楽しかったり、DMが誇らしく見せたくて公開しているものです。
とはいえD&D第5版では、マップやミニチュアは必須ではありません。PHB(および「プレイヤー用ベーシック・ルール」)「第9章 戦闘」において、グリッドを引いたマップを使用する戦闘は「選択ルール:グリッド・マップを使った戦闘」で補足されているオプションです。入門編である「スターター・セット」の "スターター・セット・ルールブック" では「グリッド・マップを使った戦闘」は記載されていません。そのため、第8回で紹介した、近接・遠隔を考慮した3エリアでの戦闘や、「第9章 戦闘」にある細かいルールを使わないプレイでも、参加者全員が命の危機であるバトルの緊迫感、勝利してのカタルシスを感じられれば、それはD&Dを十分に楽しんでいることに間違いありません。
それでも「本格的に遊んでいる」とマップとミニチュアの写真をネットに上げるプレイヤーが多いのでしょうか。それはグリッドを使ったプレイが、「誰がどこにいて、どのような行動が可能で、何をされる可能性があり、どのようなルールが適用できるのか」という、戦闘のルールと状況をわかりやすく参加者全員で共有、体感することができ、楽しさが大幅に増すからです。
PHB に書かれている戦闘のルール、特に移動速度や武器の間合い、呪文の射程や効果範囲といったデータは、ミニチュアを使用するシミュレーション・ゲームから派生したD&Dの40年以上の歴史を経て版を重ねるごと工夫されてきたものです。グリッドを使用して戦闘により、ゲーム・システムとしての面白さ、PCのクラス同士の連携、モンスターの特徴など、良点を最大限に発揮します。
グリッドをつかったタクティカル・バトルを未経験なら、D&D日本語版公式サイトのサポートに掲載されている「汎用チェック柄ボード用画像」の12×12マスとペーパー・ミニチュアを、プリントアウトしたりユドナリウムなどオンライン・セッション・ツールに取り込んで、1レベル向けアドベンチャー「腐敗の影」の戦闘をグリッドのボードの両角一方をPCパーティーの、反対の角をモンスターのスタート位置とし、戦闘をプレイしてみましょう。「この時はどうするのか」と思うことのほとんどが、PHB「第9章 戦闘」と「選択ルール:グリッド・マップを使った戦闘」に網羅されていることに気づくでしょう。グリッドがあったほうが、ルールもわかりやすいはずです。武器の間合いや呪文についての距離も同様です。さらに、DMG p.242からの「探検」、p.248からの「戦闘」にあるオプション・ルールの意味と意義にも関心できるかとおもいます。戦闘のオプション・ルールをどこまで使うか、セッションを遊ぶメンバーで相談して、DMGのさらに詳細な戦闘ルールを採用して遊ぶのも構いません。
ゲーム・システムの面で、グリッドを使った本格的な戦闘遭遇についてご紹介しました。次回は、それらの見た目や雰囲気を加え、臨場感を高めることをご紹介します。
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次回は7月11日(土)に公開予定!
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