前回まで、本格的にD&Dを遊び始める際のアドベンチャー・シナリオの選択について紹介してきましたが、今回は最近利用が急増したプレイ手段をご紹介しましょう。
というのも2020年発生した新型コロナウイルス感染症のため、テーブルトークRPGの参加者が集まりテーブルを囲んで行うゲームプレイは、「3つの密を避けましょう」もとで「3.間近で会話や発生をする密接場面」に該当してしまいます。簡単には遊べない、という状況もあり得ます。
その中で利用されるのが、パソコンのウェブ・ブラウザーで、インターネットを介したオンライン・セッションです。以前よりツールとなるソフトウェアやオンライン・サービスは存在し、進歩してきました。有志の作成・運用によるフリーなもの、海外タイトルでは公式なサービスなものもあります。
これらのセッション・ツールは "Virtual Table Top" と呼ばれ、現在、D&Dのライセンスを受けて公式データをツール内で使えるサービスの代表的なタイトルには、Roll20(https://roll20.net/)、Foundry Virtual Tabletop(https://foundryvtt.com/)、D20PRO(https://d20pro.com/)などがあります。
セッション・ツールではありませんが、"An official digital toolset for Fifth Edition (5e) Dungeons & Dragons" として D&D Beyond (https://www.dndbeyond.com/)があり、データを購入することにより、「Player's Handbook」をはじめとする製品の内容を閲覧し、サプリメントを含め横断的にデータを使用してプレイヤー・キャラクターやモンスターを作成したり、デジタル・キャラクター・シートとして機能するサービスが利用できます。
日本のD&Dユーザーに注目されているのは、ダンジョンズ&ドラゴンズ 公式プレイ『ただ者じゃない人たちがスターター・セットをやりこむ配信』でも使用しているユドナリウム/Udonarium (https://udonarium.app/)です。(*1)
ユドナリウムは、Webブラウザーで「マップ、立方体の"地形"、ミニチュアなどを共有する」ツールです。
ルールについては、選択したタイトルに応じたダイス・ロールが可能ですが、判定や効果を動的に処理する機能はありません。参加者全員が分かるように1d20を振って、結果を出すことはできますが、それが目標のAC以上か、以上でヒットならどうなるか、は手動で数値を更新したりする必要があります。
それでも、カスタマイズ可能な"キャラクター・シート"と、マウス・クリックで固定の文面をテキスト・チャットに送信する"チャット・パレット"をカスタマイズすることで、キャラクターの行動の多くをマウス・クリックで、参加者で共有して進めていくことができます。
大規模な実物の立体物(テレイン)を用意せずとも、立体地形でのタクティカル・バトルを用意し、プレイできることもユドナリウムの大きなアドバンテージです。
また、汎用的にマップ、トランプとして機能するカード・デッキに、ダイスについて外部機能としてダイス・ボット"BCDice"を導入し、多数のタイトルのダイス・ロールが可能となっています。そのためD&D以外のテーブルトークRPGのプレイはもちろん、マーダー・ミステリーの遠隔プレイを行ったり、オリジナルのカードゲームの試作という利用もされています。特定のルールを再現するための縛りなく、アナログ・ゲームの仮想コンポーネントのプラットフォームとしても使用できるわけです。
D&D日本語版公式サイトのサポート(http://hobbyjapan.co.jp/dd/support/)でも、ユドナリウム向けのダウンロード・データを公開しています。ほかにも公式にユドナリウムを利用する支援となるデータを提供しているTRPGタイトル(*2) もあります。
ユドナリウムは参加者間でのやりとりにはテキスト・チャット機能が備わっていて、ダイス・ロールの結果もそこに表示します。それにとどまらず、ボイス・チャットやビデオ・チャットのソフトやサービスを併用し、会話ができる環境で遊ぶことが多いです。日本では、TRPG、ボードゲームのユーザーの間では、Discord(Discord)の利用者が多いようです。ほかに Skype(Microsoft)、Google Meet(Google)、Messenger(Facebook)、zoom(zoom)などもあります。これらのソフト、サービスは、パソコンに接続して使うWebカメラがあれば、すぐにビデオ・チャット、つまりTV会議になりますから、より集まってテーブルを囲むセッションにプレイ環境を近づけることもできます。
D&Dのセッションでもタクティカル・バトルをしないのであれば、ほかにも和製オンライン・セッション・ツールはいくつもあります(*3) が、「D&Dをプレイしたくて、オンライン・セッションを行う」熱意からか、マップ、ミニチュアの使用感を備えたユドナリウムが目立つように思われます。
次回は、公式ライセンスを取っているオンライン・ツールの魅力を紹介します。
(*1) 4Gamer.net『2020年は“オンライン”で「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を遊ぼう。「ユドナリウム」で始める,快適オンラインセッションガイド』
(https://www.4gamer.net/games/319/G031949/20191225001/)を参照。
(*2)『トーキョー・ナイトメア』(F.E.A.R)、『パラノイア【リブーテッド】』(Mongoose Publishing、ニューゲームズオーダー)
(*3) TRPGスタジオ(https://trpg-studio.com/)、ココフォリア(https://ccfolia.com/)等。
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次回は6月13日(土)に公開予定!
ダンジョンズ&ドラゴンズ 日本公式サイト
http://hobbyjapan.co.jp/dd/
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