前回から続く話題として、本格的にD&Dを遊び始める際のアドベンチャー・シナリオの選択についてお勧めしていきます。
「プレイヤーズ・ハンドブック」でPCを作成して、『スターター・セット』のアドベンチャーに挑戦する方法です。
この手で良いのは、アドベンチャーの記載も初心者ダンジョン・マスター向けに書かれていることです。他のアドベンチャーには無い、最初の場面で自己紹介をしてもらおう、といったような「セッション進行の手法」も書かれています。
DMは、第6回あたりから再読していただくと助けになると思います。また、パートごと(パート3はクエストごと)にDMを交代すると、全員がプレイヤー、DM両方として「D&Dとはどのような作品か」を体験し、知ることができるでしょう。
「ファンデルヴァーの失われた鉱山」は終了時にPCが5レベルになると紹介されていますが、大抵は4レベルです。5レベルになるだけの経験点(XP)は、解決しなくても問題ないサブ・クエストまで解決すると手に入ります。とはいえ魔法のアイテムなども手に入るため、新規にPCを作成して5レベル・アドベンチャーに挑むより優しくなります。
そのため、つなげて遊ぶには、
・『ウォーターディープ:狂える魔道士の迷宮』で20レベルまで
・『魂を食らう墓』で11レベルまで
がお勧めです。ウォーターディープを先に上げるのは、日本語版においてPC最大の20レベルまで遊べることに加え、ダンジョンの階層ごとのボリュームが十分で、別の層との独立性がありDMを階層ごとに持ち回りしやすいこと、必要に応じて地上へ引き返しウォーターディープへ帰ることができるなどの点があります。ダンジョンに潜りっぱなし、僻地へ遠征しっぱなしで人知れず悪を滅ぼすのではなく、PCたちは地下迷宮に挑んで生きて帰る実力がある英雄として迎えられ、人々と交流が持て、キャンペーンにメリハリがつきます(階層によっての仕組みや罠で戻れなかったり、探索途中での落命の危険はもちろんあります)。
『魂を食らう墓』は、第2章に多数のサブ・クエストとランダム遭遇が盛り込まれており、本筋以外にも幅広く楽しめます。英語であれば、Dungeon Masters Guild に続きとして遊ぶことのできる20レベルまで対応する、同じチャルト半島を舞台とする連作のアドベンチャーがダウンロード販売されています。
1レベルから5レベルまでを、PCを代えて4回遊ぶことができるアドベンチャーです。季節ごとに使う部分が異なるため、全体の大筋はあるものの各種遭遇や事件の背景は違いが出る作りになっています。これも季節ごとにDMを交代することにより、プレイグループの中でDMや使うクラスが固定化せず、PCの種族やクラス、その組み合わせを数多く経験することができます。
ただ、ウォーターディープ市中を舞台とするシティー・アドベンチャーであるため、すぐに戦闘遭遇を戦おうとする血の気の多いパーティーは向いていません。暴力沙汰、呪文のあからさまな発動があれば都市警備隊が駆けつけます。怪しい屋敷に潜入する必要があったのなら、最後まで「潜入」でなければ、PCたちこそ侵入の罪で投獄される羽目になる、といったことも起こりえます。剣も魔法も必要なのですが、切った張っただけではないプレイ・スタイルを楽しみましょう。
つなげて遊ぶには、もちろん『ウォーターディープ:狂える魔道士の迷宮』です。「ウォーターディープで大事件を解決した英雄が、ついにあの大迷宮に挑む」という背景は、長くキャンペーン・プレイを遊ぶ際の大きな楽しみです。
『大口亭奇譚』は、ウォーターディープにある有名宿屋の酒場で語られる物語として、7本を収録したアドベンチャー・シナリオ集です。過去のD&D用作品が第5版用にコンバートされています。どれもがダンジョン攻略タイプのアドベンチャーです。
過去の作品だからといって敵を倒すだけのお話ではありませんが、ウォーターディープ市中とは違い、必要に応じれば遠慮なく武器を抜き、呪文をぶっ放すようなスタイルでも遊べます。
2本目として収録されている「秘密の工房」は、もとから「地底の城塞」から続けて遊ぶ連作アドベンチャーの1話と2話という関係です。
さらに「タモアチャンの秘密の神殿」以後のアドベンチャーも『大口亭奇譚』に収録するにあたり、「地底の城塞」から続けて遊び続けられるよう変換されていて、「白羽山の迷宮」「死の国サーイ」「巨人族を討て」「恐怖の墓所」と続けて行くことができます。
ただ、「タモアチャンの秘密の神殿」からは、当時のそれぞれのアドベンチャーの傾向を再現しています。つまるところ殺意が高く、いまから見ると意地悪な作りと感じるかもしれません。「秘密の工房」を生還したPCで、『ウォーターディープ:狂える魔道士の迷宮』か『魂を食らう墓』に線路を切り替えるのもアリでしょう。
とはいえ、「白羽山の迷宮」は翻訳刊行されたD&D小説『ホワイトプルームマウンテン』が元としたシナリオで、遊んだうえで小説を読むと、とても楽しめます。(*1)
「恐怖の墓所」は『魂を食らう墓』のメイン・クエストと関連がある(知らなくても双方のクエスト達成には問題ありません)ので、両方を遊ぶ機会を得られればD&Dの懐の深さを知ることができるでしょう。
(*1)「ダンジョンズ&ドラゴンズ スーパーファンタジーシリーズ ホワイトプルームマウンテン」電子書籍で読むことができます。
〉D&Dのはじめかた一覧
次回は5月16日(土)に公開予定!
ダンジョンズ&ドラゴンズ 日本公式サイト
http://hobbyjapan.co.jp/dd/
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