(写真:高田馬場経済新聞)
こんにちは、ぱん太だよ。
2019年12月7日(土)――今年2回目となる「中世ヨーロッパ食事会」が開催されたよ!
前回のイベントについては、こちらの記事を読んでね。→「パンタポルタ祭 中世ヨーロッパ食事会」が開催されるまでの話
前と同じく芳林堂書店高田馬場店のイベントスペースをお借りして、講師にコストマリー事務局の繻鳳花さん、ゲストにグループSNEのベーテ・有理・黒崎さんをお迎えしたんだ。
今回のテーマは……ずばり、クリスマス! お料理もクリスマスバージョンにアップグレードされて、前よりもっと豪華になった「中世ヨーロッパ食事会」。
お手伝いで参加していたぱん太が、当日のようすを
もっと詳しく知りたい人は、IGN Japanさんや高田馬場経済新聞さんが素敵な記事を書いてくれたから、ぜひ読んでみてね。
(記事の一部写真は、高田馬場経済新聞さんからご提供いただきました)
IGN Japan
https://jp.ign.com/entertainment/40419/feature/
高田馬場経済新聞
https://takadanobaba.keizai.biz/headline/315/
講師、ゲストプロフィール
● 講師 繻鳳花(しゅ ほうか/コストマリー事務局主宰)
主に中世ヨーロッパ時代にあった料理・舞踏(民衆ダンス)の再現、アレンジを施した料理レシピ研究を中心に活動。新紀元社より研究成果をまとめた『中世ヨーロッパのレシピ』を上梓。
コストマリー事務局HP http://woodruff.press.ne.jp/
● ゲスト ベーテ・有理・黒崎(ベーて・ゆーり・くろさき)
グループSNEに所属する日米ハーフのライター。
作中の料理描写に定評があり、その探求のために中世欧州の料理を調べたり、再現したりすることも。
「グループSNE」ホームページ http://www.groupsne.co.jp/
Twitterアカウント @YKBethe
①豚の頭とフィンガーボール! 中世ならではの食卓風景
現代ではクリスマスを特別な日としてお祝いしているけど、中世ヨーロッパでもそれは同じ。1年のうちでも最大のイベントとして、いつもの2倍の料理を作るのが習わしだったとか。すごいね。
よく食べられていたのはイノシシの肉、鳥肉に卵黄をまぶしたもの、果実入りのパイ、牛のレバーなどなど、よだれが出てきちゃいそうな豪華なメニューばかり! もちろん庶民はそこまで豪華なものは食べられないから、牛の足とか豚の鼻とか……ようするに、富裕層の余った食材を食べていたんだ。それでも普段の味気ないスープよりは贅沢で、クリスマスは誰にとっても嬉しい祝日だったみたいだよ。
イベントには、イノシシの代わりに豚の頭がご来場! 繻さんの使っているオーブンには収まり切らなくて、耳をそぎ落として無理やり入れたそう。黄色い果物っぽいものは今の時期に採れる花梨(かりん)だよ。昔は花梨と見た目がウリふたつの「マルメロ」が料理に使われていたこともあったんだって。
各テーブルには、手を洗うためのフィンガーボールが用意してあるよ。なんせ中世ヨーロッパでは貴族であっても食事は手づかみが基本だから、指はベタベタのギトギト。汚れた手はフィンガーボールで洗い、テーブルクロスで拭っていたんだ。
ちなみに、小指にスパイスをつけて香りを楽しみながら食事をするのが正しいお作法らしい。
フィンガーボールに花を浮かべているのは、インスタ映えのためだけじゃなくて、香りづけの意味もあるんだ。衛生的とは言えなかった中世では、匂いを誤魔化すための香水や香辛料が重宝された時代でもあったんだって!
5000回イイネを押したい(壊)。— 繻 鳳花 (@shuhohka) December 19, 2019
当時の生活慣習を再現しようものならヤホーイな結末しか見えないので、その辺りはあくまでも参考になさった上で、ステキな創作作品を作るのが吉かと思います。匂いに関しては、衛生的な事情もあって香水や香りの強い香辛料が後に重宝されたというのもあります( ・∇・)。 https://t.co/jTCDBRr6NQ
②中世料理の贅沢コース! の、裏方レポート
さて、いよいよお食事のご紹介! ……と言いたいところなんだけど、裏方に回っていたボクは写真を撮る余裕がなかったんだ。だからここでは、高田馬場経済新聞さんからご提供いただいた写真とともに、裏方のようすをお届けするよ。
ヒポクラテスの袖
最初にお味見いただいたのは、「ヒポクラテスの袖」と呼ばれるスパイスの効いたワイン。といっても、今回はノンアルコールのぶどうジュース版を用意しているよ。
大きなジャーポットから直接ワイングラスに注いでご提供! ボクも味見させてもらったけど、体が内側からあったまる冬にぴったりのドリンクだったよ。
ホロホロ鳥の蒸し煮
白状すると、ボクはこの日この時までホロホロ鳥の存在を知らなかった。鶏肉をほろほろにほぐしたものを「ホロホロ鳥」と呼んでいるんだと思っていたんだ。ホロホロ鳥は主にアフリカ大陸などに生息していて、鳴き声がホロホロと聞こえることに由来して名づけられたんだって。学んだ~。
さて、「冬だから温かいものを」をスローガンに、裏方は戦場のようなありさまになっていた。個包装された料理をドバーっと熱湯に沈めて温めるという、なんとも原始的な方法で再加熱。大人の事情で調理方法に制限があるから、あの手この手と工夫をして料理を提供していたんだよ。「あつっ!!」と叫びながら、熱湯から取り出したホロホロ鳥を盛り付けていた。
アスパラガスのサラダ、牛肉のシチュー
お次はメインの料理となる「アスパラガスのサラダ」と「牛肉のシチュー」。ここでボクの1日のハイライトがやってくる。ずばり、“アスパラガスにドレッシングをかける係”に任命されたんだ! でもその話をここで詳しく書いてもみんな退屈しちゃうから、別の話をするね。
羨ましいことに、中世では野菜には税金が掛からなかったんだ。だから農民はたくさん野菜を食べていたそうだよ。そもそも野菜と雑草の境界があいまいで、野菜泥棒をしても罪に問われなかった時代さえあったとか(『図解 中世の生活』より)。すごいや!
リンゴのタルト
最後は「祝福のリンゴのタルト」。タルト生地の上にスパイスで味付けされたリンゴとイチジク、レーズンなどをのせたスイーツなんだって。現代のタルトみたいにクリームや中間生地が入っているわけじゃないから、運ぶときに中身がポロポロこぼれて大変だったよ!
当時はあんまり食べやすさを気にしなかったのかなぁ。こぼれた中身は手づかみで食べてみたら、中世気分を味わえるかも?
お料理のお味が気になる人は、IGN Japanさんに丁寧なレポートが載っているから、ぜひ読んでみてね(2回目)。
https://jp.ign.com/entertainment/40419/feature/
今よりずっと食材の少なかった中世の時代だけど、クリスマスには特別な料理を用意して、ハッピーに過ごしていたんだね。
久しぶりにツィムトシュテルネを焼きました! 16世記から伝わるドイツ伝統のクリスマスクッキー。曾祖母から伝わるレシピで。ただ、今年は母がいないから独りで……ちょっと不安w 形もちょっと不揃いになっちゃたなあ(苦笑) pic.twitter.com/N9DoXRajsm— ベーテ・有理・黒崎/Yuli K Bethe (@YKBethe) December 4, 2019
ちなみに食事の後に行われたミニゲームで上位になった人には、ベーテさんお手製のクッキーがプレゼントされたよ! ボクも味見した(という名目で5枚くらい食べた)けど、シナモンがしっかり効いたふしぎな食感のクッキーだったよ。
アーモンドを粉々にしてアーモンドプードルを作るところから始めたというから、まさにお手製だね!
③国宝級(!?)の羊皮紙の展示や特別ゲストも!
ここで、イベントを手伝ってくれたメンバーや展示のご紹介するよ!
*音食紀行/遠藤さん
前回に引き続き、特別ゲストとして音食紀行の遠藤さんもイベントに駆けつけてくれたよ。11月に発売されたばかりの著書『宮廷楽長サリエーリのお菓子な食卓』(春秋社)はもう読んだかな?
会場では遠藤さんの研究をまとめた同人誌やサリエーリの委託グッズも販売していて、ボクもブックマーカーをひとつ買っちゃった!
*漫画家/マミーさん
飛び入りゲストとして参加してくれたのは、古代アッシリアにタイムスリップした女子高生の冒険を描いた漫画『ネオ・エヌマ・エリシュ』(マッグガーデン)の作者マミーさん。
歴史好きには絶対ささる漫画だから、気になる人はぜひ読んでみてね! パンタポルタでも、マミーさんによる歴史の裏話マンガを公開しているよ。
⇒マンガで読む歴史のウラ側! ナポレオンが負けたのは妻を離縁したから?
*騎士と聖女も参戦!
西欧中世実践研究会アヴァロンの方々が甲冑で登場! 甲冑を間近で見たり触ったりできるのも、イベントならではだね。
中世風の衣装を身にまとった参加者の姿もあって、会場はさながら中世の宴会場に。魔法使いみたいなとんがり帽子は、中世貴婦人がかぶっていた「エナン」という帽子をイメージして手作りしたそう。15世紀の宮廷女性の間では基本的なファッションだったんだよ。
*国宝の原型!? 16世紀の羊皮紙
なんと会場には、16世紀につくられたホンモノの羊皮紙も展示されていたんだ。これは羊皮紙工房さんからお借りした大変貴重なもので、日本の国宝に指定されている羊皮紙の原型ともいえる代物なんだって! なんでこんなイベントに持ってきたの!
何でもアリな中世ヨーロッパクリスマス食事会。特別な日をきっかけに、国も時代も飛び越えて、未知の文化を体験してみるのも素敵な過ごし方だと思うな。
オマケ:イベント後に……いろいろなジンジャーブレッド詰め合わせ
イベントは無事に幕を閉じたけど、ぱん太のクリスマスはまだ終わっていなかった。コストマリー事務局の繻さんから、ジンジャーブレッド詰め合わせが送られてきたんだ! せっかくの機会だから、ぱん太が味のレポートをお届けするよ。
〇イギリス伝統のジンジャーブレッドケーキ(ケーキっぽいの)
和菓子の茶饅頭に似た食感で、なめらかでしっとり! ジンジャーといってもスパイシーさは感じなくて、栗みたいな味だったよ。甘味もちょうどよくて、ほっと一息つけるお菓子。
〇14-15世紀イングランドのジンジャーブレッド(餅っぽいの)
なにこれ!! どう見てもお餅にしか見えないけど、ブレッドなんだって。粘り気があって、はちみつの中にしょうがを入れましたって感じのお菓子だ。食感はざらざらしていて、おはぎにも似ている。ちなみに刺さってるクローブは香りづけ用だから食べないよ。
〇「ルーカスファームカフェ」さんコラボメニュー・中世のブリータルト
12/26まで行われていたコラボカフェで提供されていたメニュー。甘すぎなくて、濃厚なチーズがとっても美味しい! 意外と食感がしっかりとしていて食べ応えがあったよ。
以上、ぱん太の雑レポでした~。
◎おすすめ記事
私たちの知っている"フランス料理"はいつからあるの?
通販も?! 中世~近世ヨーロッパで買い物するならココ!