ディズニーアニメーション映画『アナと雪の女王2』が、11月22日より公開されました。社会現象を引き起こした大ヒット作の続編とあって、注目している人も多いのではないでしょうか。
この「アナ雪」の原案となったのが、アンデルセンの童話『雪の女王』。
原案といっても、お話の筋はまったくの別ものです。そこで今回は『雪の女王』について、関連作品を交えてご紹介します。
目次
幼馴染を取り戻す、少女の冒険譚 『雪の女王』の物語
童話『雪の女王』は広く知られていますが、子供のころに読んだきりで、どんな物語だったか忘れてしまったという人も多いでしょう。まずは『雪の女王』の内容をおさらいしておきましょう。
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『雪の女王』は、デンマークを代表する童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが1844年に発表した作品。今では多数の言語に翻訳され、世界中の子供たちに親しまれています。
『雪の女王』の主人公は、ゲルダという名の少女です。ゲルダはいなくなった幼馴染の少年を取り戻すため、大冒険の旅をすることになります。
物語は、悪魔が魔法の鏡を作り出したところから始まります。この魔法の鏡は人や物の美点を醜く映し出し、欠点を大きく見せるという能力を持っていました。この鏡の破片が目に入ると人間は物事の悪い面ばかりを見るようになり、心臓に入ると氷のように冷たくしてしまうのです。
さて、少女ゲルダは、幼馴染の少年カイと仲良く街で暮らしていました。しかし屋根の上で一緒に絵本を読んでいるとき、カイの目と心臓に魔法の鏡の破片が入ってしまいます。するとカイは人や物事の粗探しばかりするようになり、ゲルダのことまでいじめるようになってしまいました。
そうしてある冬の日、カイは広場にやってきた真っ白なソリに遭遇します。真っ白なソリに乗っていたのが、雪の女王。カイは雪の女王に魅入られ、連れ去られてしまいます。
残されたゲルダは、カイが死んでしまったものと思って悲しみました。しかし春の太陽やツバメたちに励まされ、カイを探す旅に出ます。
途中で魔女に捕まったり、賢い王女夫婦と家来のカラスに援助されたり、山賊に捕まってその娘に助けられたりしながら、ゲルダは北の果てのラップランドに辿り着きます。
ラップランドでも現地の女性やトナカイの助けを得たゲルダ。やがてゲルダは雪の女王の尖兵と遭遇しますが、祈りによってこれを退け、ついに雪の女王の宮殿に至るのです。
そのとき、ちょうど女王は不在でした。雪の女王の宮殿に滞在していたカイは、女王の口づけによって寒さを感じなくなり、心身がすっかり凍りついて、氷の板で「永遠」という言葉を表すという遊びに集中していました。
しかしゲルダがカイを抱きしめて泣くと、ゲルダの涙がカイの胸に落ち、心臓の氷と鏡の破片を溶かすのです。
こうして元通りになったカイを連れ、ゲルダは街へ戻るのでした。
『雪の女王』を元にした大ヒット作『アナと雪の女王』
『雪の女王』は、映像をはじめ多くの関連作品があります。その中でも最大のヒットといって過言ではないのが、アニメ映画『アナと雪の女王』(原題:Frozen/ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ)。
『アナと雪の女王』の物語はアンデルセンの『雪の女王』から大きく変更され、現代的で複雑なものとなっていますが、引き継いでいるモチーフもあります。最大の共通点は、何といっても「大切な人を取り戻すため、少女が冒険する」というテーマそのものでしょう。
『雪の女王』の主人公ゲルダは、心身が凍りついてしまった幼馴染の少年カイを雪の女王の手から取り戻そうとしますが、『アナと雪の女王』のアナが取り戻そうとするのは、自分自身の魔法の力を恐れて自ら氷の城に閉じこもってしまった姉のエルサ。恐ろしい雪の女王が、主人公の助けたい大切な人でもある……という設定が、物語を予想のつかないものにしています。
山男のクリストフやトナカイのスヴェン、雪だるまのオラフなど、多彩な仲間たちがアナを援助する点も、ツバメやカラス、トナカイたちに助けられた『雪の女王』のゲルダと共通するところ。
『アナと雪の女王』はすでに観た人も多いと思いますが、『雪の女王』を踏まえた上で観直してみると、新たな発見があるかもしれません。
アナ雪だけじゃない! 『雪の女王』の映像化作品
もちろん『雪の女王』を原作とした映像作品は『アナと雪の女王』だけではありません。世界中でさまざまな『雪の女王』が制作されています。
1957年に旧ソビエト連邦で制作されたレフ・アタマーノフ監督のアニメ映画『雪の女王』は、宮崎駿監督にアニメの世界で生きていく決意をさせたという伝説的作品。宮崎監督の支持もあって現代でも評価が高く、2008年には新訳版が日本で公開されました。その際にDVDも発売されています。
ソ連アニメの『雪の女王』の物語はアンデルセンの原作に比較的忠実ですが、宗教を禁じていたソ連らしく賛美歌や祈りなどの要素は廃され、少女ゲルダの思いの強さや、彼女を助ける者たちに重きが置かれています。
その他のアニメ作品では、2005年のアンデルセン生誕200年を記念して制作された『雪の女王 〜THE SNOW QUEEN〜』など、日本国内で作られた作品も多数あります。
実写でも、ブリジット・フォンダが雪の女王を演じた2002年制作の『スノー・クイーン~雪の女王~(The Snow Queen)』をはじめ、ロシア版やフィンランド版など、国も年代もさまざまな『雪の女王』映像作品が制作されています。見比べてみるのも面白いでしょう。
ゲームやコミックにも! 広がる『雪の女王』の世界
『雪の女王』は、ゲームにもよく登場しています。童話モチーフのゲームはもちろんですが、学園を舞台とした『女神異聞録ペルソナ』(アトラス:当時)でも、シナリオルートのうちひとつが『雪の女王』をモチーフとしています。
漫画化作品も多くあります。中には、ゲルダを助ける山賊の娘を主人公として少女同士の結びつきを描いた『雪の女王』(藤田貴美 著)など、アンデルセンの原作をベースにしつつ独自の視点やオリジナルの物語を展開する作品も。
さまざまな分野に影響を与えている『雪の女王』。大切な人を取り戻すため少女が冒険するという題材や、北を目指す旅の風景、氷の宮殿のイメージ、少女を助ける幻想的で多彩な面々などが、時代を超えて人を惹きつけるのでしょうか。
この機会に、気になった『雪の女王』関連作品に触れてみてもいいかもしれませんね。
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