週刊少年ジャンプで連載中の人気漫画『鬼滅の刃』。不動の王者『ONE PIECE』のコミックス年間累計売上を超えたことが話題になりましたね。人間と鬼との哀しい物語や鬼狩りのアクションシーンなど見どころ満載です。
実は、昔から鬼と人間が戦う物語は人気があり、中には寺院の宝蔵に鬼の首が保存されているなどという話もあります。そこで今回は日本の有名な鬼「悪路王」「八面大王」「大嶽丸」をご紹介しましょう。
目次
荒武者のような鬼「悪路王」VS坂上田村麻呂
まずご紹介するのは東北地方にいたという恐ろしい鬼「悪路王」です。
*「悪路王」ってどんな鬼?*
・別名:
・ゆかりのある場所:東北地方(岩手県など)、茨城県など
・容姿:巨大な鬼で、討ち取られた荒武者のような顔をしている。
・原型:朝廷に抵抗していた蝦夷(北海道)の族長。
悪路王は山の岩窟に住み、付近の村を襲っては食糧や家畜、金銀財宝を奪うなど乱暴狼藉を働いた末、最後には
*鬼退治の英雄!「坂上田村麻呂」*
・史実では、朝廷の命令で東北地方を制圧した武将。日本初の征夷大将軍。
・立派な体格(身長5尺8寸、胸の厚さ1尺2寸)で若いうちから武将として才覚を表す。
・観音様を熱心に信じており、人柄も申し分なし。
時は桓武天皇の時代。田村丸は「東北で暴れている高丸を討伐せよ」という勅命を受け旅立ちます。神の力を借りた方が良いと考えた田村丸は、道中の諏訪大明神で深く祈願しました。
その後、信州(長野県)の伊奈郡と諏訪郡の境まで来た田村丸は、ひとりの騎兵を仲間に加え、目的地である奥州に到着しました。高丸の棲む城は、背後は岩壁、前面は海になっていて、左右は鉄石で堅く守られており、ガードが固すぎて手も足も出ません。困った田村丸が騎兵に相談すると、騎兵は自分に策があると言って単騎で敵城に向かいました。
騎兵は馬に乗ったまま海の上を進んだかと思うと、5騎に分身しました。さらに、どこからか黄色の衣を着た者が20人も現れ、手に的を掲げて海上のあちらこちらに散らばります。5騎の騎兵は弓矢でこれらの的を射落としはじめました。
この不思議な光景に、田村丸はもちろん、高丸の軍勢も大騒ぎで見物をはじめます。用心深い高丸は最初は見に来ませんでしたが、まずは鉄の門まで姿を現し、やがてもっとよく見ようと門から頭を出しました。
騎兵はこのチャンスを逃しませんでした。先端が二股になっている特殊な鏑矢を射かけると、矢は高丸の両眼に突き刺さり、高丸は真っ逆さまに海に落ちてしまいます。そこを黄色い衣を着た者たちが取り囲み、首を取ってしまいました。
悪路王(高丸)はこうして討ち取られてしまったのです。
神通力が使える鬼「八面大王」VS坂上田村麻呂
坂上田村麻呂と戦った鬼をもうひとり(一匹?)ご紹介しましょう。
*八面大王*
・別名:魏石鬼
・ゆかりのある場所:有明山(長野県)
・特徴:神通力で天候操作・変身・弓矢を無効化できる。血液には病毒が含まれている。
「
そこで派遣されたのが坂上田村麻呂です。しかし八面大王は討伐隊が来るのを事前に察知すると、神通力を使って自分に弓矢が当たらないようにしました。
困った田村麻呂がいったん退却して水沢観音に祈ると、「13節ある山鳥の尾で弓矢を作れば、一矢目で闇が晴れ、二矢目で悪鬼が退散し、三矢目で眷属も滅ぶだろう」というお告げを得ます。
さらに、有明山の麓に住む弥助という若者から山鳥の尾で作った矢を手に入れることができました。
田村麻呂が山鳥の矢を放ったところ、一矢目で八面大王は天候操作の力を失ってしまいます。さらに二矢目で神通力のバリアが解け、八面大王は胸に矢を受け退治されてしまいました。さらに三矢目で手下の鬼たちも退散したということです。
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首が封印されている鬼「大嶽丸」VS俊宗&鈴鹿御前
最後にご紹介する鬼「
*大嶽丸*
・ゆかりのある場所:鈴鹿山(三重県)、霧山(青森県)、平等院(京都)
・容姿:身長が10丈もある。らんらんと輝く眼をし、天地が響くほどの大声が出る。
・特徴:天候操作、変身ができる。3本の宝剣に護られており蘇生も可能。
大嶽丸は伊勢国(三重県)の鈴鹿山に棲み、旅人を襲ったり朝廷への貢ぎ物を略奪したりしていました。そこで征夷大将軍・
俊宗はさっそく3万もの大軍を率いて鈴鹿山に向かいますが、大嶽丸の天候操作の力で落雷や暴風に遭い、鬼のもとまでたどり着くことができません。困り果てて諸天に祈りを捧げると、鈴鹿御前という美しい天女の力を借りることができました。
鈴鹿御前は大嶽丸が自分に惚れていることを利用し、鬼を護る3本の宝剣を奪おうと計画します。求愛に訪れた大嶽丸に、誘いを受け入れる代わりに宝剣を貸してほしいという歌を返したのです。
こうして鈴鹿御前は鬼を護る宝剣のうち2本を奪うことに成功します。残る1本は大嶽丸の叔父が天竺に持って行ってしまっていました。とはいえ、宝剣を失った大嶽丸を護るものはありません。俊宗は大嶽丸に襲いかかると、激闘の末に神通の鏑矢で鬼の頭を射抜き、その首を刎ねてしまいました。
めでたしめでたし……というところですが、話はこれで終わりません。叔父が持ち去っていたという宝剣の力で大嶽丸が蘇生してしまったのです。
大嶽丸は今度は陸奥(青森県)の霧山に城を築きます。再び討伐の勅命を受けた俊宗は鈴鹿御前とともに霧山に向かいましたが、今度は大軍を率いて正面から挑むことはせず、留守の隙を狙って城に忍び込むことにしました。
こうして、大嶽丸は八面大王のもとを訪ねていた隙に城に侵入され、帰宅後準備も整わぬまま討伐されてしまいます。その首は二度と復活しないよう、宇治の平等院の宝蔵奥深くに厳重に封印されたというわけです。
大嶽丸の首の実物、機会があればぜひ見てみたいものですね。
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◉参考書籍
鬼
著者:高平 鳴海