ボードゲームを題材にしたアニメ『放課後さいころ倶楽部』が放送されるなど、ますます盛り上がりを見せるアナログゲーム業界。
遊ぶだけじゃなく「つくる」ことにも関心が高まっており、アマチュアだけでも、毎年たくさんのボードゲームが生み出されています。そんな中でパンタポルタが注目したのは、“パンダ”をモチーフにしたゲーム「パンダニズム」を作っているサークル、ノン・プロダクト・プロダクションです。
2019年秋のゲームマーケットでは、新作の「へんなかんじ」が開場わずか1時間で完売! いま大注目のサークルに、ボードゲームづくりの魅力を語っていただきました。
ボドゲ制作サークル「ノン・プロダクト・プロダクション」とは?
僕たちは3人チームでボードゲームを作っているサークルです。
代表作には日本卓上開発さんから商業リリースされている「パンダニズム」があります。
そして、ゲームマーケット2019秋で頒布した新作「へんなかんじ」が開場1時間で完売したことを受けて、再生産と全国流通を予定しています(2019年12月25日現在)。
▷パンダニズム
▷へんなかんじ
へんなかんじ……お題として与えられる漢字が存在しない単語(例えば「オムライス」「レントゲン」など)を漢字一文字で表現して、他のプレイヤーにお題の単語を当ててもらうボードゲーム。プレイヤーによる品評会システムがあり、漢字として美しい作品は追加点がもらえる。
<へんなかんじの詳しい説明はこちら>
僕たちはそれぞれの役割を「営業・渉外(印刷所への入稿など)」「アートデザイン」「ゲームデザイン(ボードゲームのルールを考える)」で分けています。
営業・渉外……げこいもたろう。「M-1」1回戦突破経験がある会社員。
アートデザイン……ちなみにまさお。木工職人だったことがある会社員。
ゲームデザイン……武野光。漫画原作や小説などの作家業もしている会社員。
アートデザイン……ちなみにまさお。木工職人だったことがある会社員。
ゲームデザイン……武野光。漫画原作や小説などの作家業もしている会社員。
ボードゲーム制作とは?
ボードゲーム制作サークルは無数にありますが、年に数回開催されるアナログゲームイベント「ゲームマーケット」での頒布を目指して制作している方々が多いと思います。その後、通販や一般店舗に流通させます。
制作方法はさまざまですが、我々はメンバーで役割分担をしているので、①「ゲームデザインの基になるものを考えて」、②「テストプレイをしたりしてルールを調整し」、③「アートデザインを制作し」、④「印刷所を探して入稿し」、⑤「各所で販売する」という工程をとっています。
これらを一人で完結する方もいますが、アートデザインは外部発注する方も多いと思います。
簡単でないことはたしかですが、僕たち3人は単純にボードゲームが好きだったので「作ってみるか」という軽いノリで始めました。
制作を決めてからは他サークルや印刷所の方に作り方を聞きつつ、模索しながら少しずつ進めていきました。
作者さんによってさまざまだと思うのですが、僕たちは「おもしろそうなこと」をイメージして、そのおもしろそうなことを何とかゲームに落とし込む、というような考え方で作っています。
……というくらいアバウトなのは、それだけゲームデザインが自由だからです。日本産のゲーム、特にゲームマーケットで頒布されるような作品は独創的なものがとても多いです。
僕たちの新作「へんなかんじ」でいえば、「昔、適当な漢字作って遊んだよね」「漢字って部首だけでも意味わかるよね」など、メンバー内の他愛ない会話から生まれています。
ボードゲームには数字を扱うゲームが多いですが、それらも「プレイヤーにこうさせたら勝負が白熱するんじゃない?」とか「こう迷わせたらおもしろいんじゃない?」とか、着想はそれくらいではないでしょうか。
そして、アイデアが一つ浮かんだら、それをゲームシステムに落とし込みます。ゲームであるからには、ルールに基づいてプレイヤーに何かをさせる必要があります。
キーワードになるのは「選択」「迷い」「驚き」などです。
プレイヤーが主体的に行動を選び、その中に迷いなどの思考が生じるポイントがあって、その結果を見て驚いたり、笑ったり、次の手を考えたり……。
そういった【プレイしたときの流れや場の盛り上がりを想像していく】ことでゲームシステムは生まれると思います。
と言いながら、作者さんによって大事にすることは異なります。そんな、いわば『好み』の違いが、多種多様なゲームが生まれるゆえんです。
ですから、基本的には「自分がやってみたいゲームってなんだろう?」と考えることが第一歩だと思います!
アートデザインは、その作品にプレイヤーを没入させるための入口です。普通のデジタルゲームでも棒人間がぴこぴこ動いているだけではおもしろくするのは難しいのと同じだと思います。
「へんなかんじ」でいえば、パッケージには版画タッチで描かれたタキシードを着た鶏がいます。これはゲーム自体が「変な漢字を作るゲーム」なので、「変」を表現しつつ、知的で紳士的な雰囲気を作りたかったからです。
「へんなかんじ」においてアートデザインは直接ゲームには関係しませんが、一見して「なんか気になるぞ」と思ってもらえたので、これだけたくさんの方に触れてもらえたのだと思います。
余談を挟みますが、アートデザインの他に世界観に入ってもらう仕掛けも重要です。
ボードゲームではカード以外にもチップやコマなどを使用することがあります。「へんなかんじ」ではペンと漢字を書くためのボードを用意していますが、それ以外にもポイントのやり取りにキラキラした石を使用します。
実際に触れられるのがボードゲームの良さなので、さらに世界観に入ってもらうためにこだわったポイントです。
ここ数年でボードゲームの市場が大きくなっているので、一時期は制作する方も急増したように思いますが、今ではピークからは減った気もします。
あくまで想像ですが、一度制作したボードゲームを頒布したら満足してしまった方が多いからかもしれません。それくらいボドゲ制作が大変であることは、僕たちもすごく共感するところです(笑)。
でも、だからこそ自分の作ったゲームを楽しんでくれている人をたくさん目にすると、かけがえのない満足感が得られます。もしボドゲ制作に興味があれば、この気持ちはぜひ一度体験していただきたいです。もちろん売れなくてショックを受けることもありますが……やることなすことすべて成功するサークルさんなんて滅多にいないので!(笑)
「へんなかんじ」の魅力
ここで「へんなかんじ」をもう少し紹介させてください。
「へんなかんじ」を初めてサークル外の方に遊んでもらったのはWWGF(ワールドワードゲームフェスティバル)というイベントでした。
そこでたくさんの人に遊んでもらっているなかで不思議に思ったのは、同じ言葉(例えばインフルエンザ↓)
でも人によって「変な漢字の作り方」がまったく異なり、さらに、そのいずれも何を書きたかったのか分かる、ということです。
日本語話者は誰もがそれくらい漢字に馴染みと知識があるという事実に、本当に驚かされました。
だから、もし「へんなかんじ」を持っている方には、ぜひいろんな人とたくさんプレイして欲しいです。必ず「うわ! その発想は自分からは出ないわ~」という驚きが得られると思います。
「へんなかんじ」では「自分が書いた変な漢字が表す単語を他プレイヤーに当ててもらえたとき」と「自分が他プレイヤーの変な漢字が表す単語を当てたとき」の両方で点数がもらえます。
ですが、ゲームシステムを検討して、その後に行われる『品評会』で得票の多い作品は追加点がたくさんもらえるように設定しました。つまり「分かりやすいだけの漢字より、工夫を凝らした漢字を生み出す」ほうが勝利に近くなります。
これは、このゲームを単純な「当てる」「当てさせる」ではなく、プレイヤーが「よりおもしろい漢字を書こう」と意識するようにしたかったからです。
「もっと皆を驚かせよう」とか「これで伝わったら嬉しいな~」とか、勝ち負けを超越した部分でプレイヤーが楽しめるのは、ボードゲームならではの良さではないかと思います。
「へんなかんじ」を販売した各イベントでは、小学生や中学生、お年寄りの方々まで、たくさんの人に「へんなかんじ」を楽しんでもらえました。印象的だったことが2つあります。
一つは小学校の先生だという方が「子供たちに遊ばせたい」と買ってくれたことです。「へんなかんじ」は言ってしまえば間違っている漢字を書くゲームですが、それよりも「部首の意味を理解すること」「相手が自分の作品を見たときのことを想像すること」「創意工夫すること」などを重視してくださったからだと思います。これは本当に嬉しかったです。
もう一つは、小学生グループと中学生グループの子供たちが遊びに来てくれて、笑い合いながら楽しんでもらえたことです。なにより子供たちの生み出す漢字が独創的で、余計な情報に縛られずに自由に作品を書いているのは感激でした。しかも大人が見てもその変な漢字が何を表しているのかちゃんと当てられることに「へんなかんじ」のゲームとしてのハードルの低さを感じました。
大人同士や子供同士で遊んでも、大人と子供で遊んでも、同じ視線、同じ感覚で楽しめるゲームにできたのではないかと思います。
「へんなかんじ」は再生産を予定しており、その後は通販や実店舗でご購入いただけるように調整中です!
購入を希望される方には再生産完了後にお知らせを送ります。下記フォームよりぜひご登録ください!!
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