吸血鬼を狩るヴァンパイアハンターは、フィクションで大人気のモチーフですね。今年新作映画の制作が発表された『ブレイド』も、ヴァンパイアハンターが主役の作品。
今回はアカデミー賞俳優マハーシャラ・アリを迎え期待高まる『ブレイド』、そして吸血鬼と戦う宿命を持つ「半吸血鬼(ダンピール)」について解説しましょう。
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半分人間、半分吸血鬼! 呪われた運命を背負う『ブレイド』
2019年7月、のMARVEL(マーベル)社の展開するMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)への『ブレイド』参戦が発表されました。MCUとはマーベル・コミックによって出版された作品を原作としてマーベル・スタジオが製作する映画シリーズの総称で、『アイアンマン』や『アベンジャーズ』など多くの人気シリーズが名を連ねます。
Just announced in Hall H at #SDCC, Marvel Studios’ BLADE with Mahershala Ali. pic.twitter.com/mtrDBy5OV0— Marvel Studios (@MarvelStudios) July 21, 2019
その新作『ブレイド』で主人公のブレイドを演じるのは、『ムーンライト』(2016年)と『グリーンブック』(2018年)で2度のアカデミー賞を受賞し、今最も旬な俳優の一人であるマハーシャラ・アリ。彼は以前から『ブレイド』のファンだったそうで、否が応でも期待が高まりますね。
『ブレイド』の主人公は、ヴァンパイアハンターの黒人青年。彼は半分人間で半分吸血鬼なのですが、片親が吸血鬼というわけではなく、母親の胎内にいるときに吸血鬼に襲われたことで吸血鬼の血に汚染されたという、呪われた出生の秘密を持っています。
彼は生まれてまもなく母親に置き去りにされ、吸血鬼の本能に従い、人の血をすすって生き延びていました。しかしヴァンパイアハンターのエイブラハム・ウィスラーと出会ったことで、運命が変わります。
吸血鬼との孤独な戦いを続けてきたウィスラーは、彼にニンニクのエキスを注射して吸血鬼化の進行を止め、父親のように接しながら吸血鬼退治の技を仕込みました。
やがて成長した彼は「ブレイド」と名乗り、強力な武器を使いこなす剣術の達人として、吸血鬼を狩るようになるのです。
この特殊な出生により、ブレイドは並の吸血鬼を上回る体力・反射神経・治癒能力を持つ上に、日中も自由に行動することができるため、敵対する吸血鬼たちからは「デイウォーカー」と呼ばれて恐れられています。
ヴァンパイアハンター・ブレイドが戦うのは、血の神マルガの復活をもくろんだ異端の吸血鬼ディーコン・フロスト、シリア砂漠のピラミッドから蘇った吸血鬼たちの始祖ドレイク、神にも等しいといわれるドレイクの力を利用しようとする女吸血鬼ダニカ・タロスなど、強力な吸血鬼たちです。
ブレイドと吸血鬼たちとの熾烈な戦いを描く作品『ブレイド』。新作映画ではどんな吸血鬼が敵として現れるのでしょうか? 続報を楽しみに待ちたいですね。
適職はヴァンパイアハンター? 半吸血鬼「ダンピール」
さて、ブレイドは特殊な事情により半吸血鬼として生まれましたが、吸血鬼と人間の混血は古くから存在しました。
ダンピール(グログ、ヴァンピリックとも)と呼ばれる吸血鬼と人間のハーフは、吸血鬼伝説の本場であるバルカン半島に伝承が多く残っており、さまざまな特殊能力を持つとされています。
彼らがなぜ生まれるのかというと、吸血鬼となって家族の元に戻ってきた者が、血を吸う代わりに元の妻や夫と交わるからです。
こうして生まれたダンピールは髪の色が暗く、影の色は薄く、身体が柔らかいなどの特徴がありますが、おおむね普通の人間と同じ外見です。
しかしダンピールは、彼らだけの特殊能力を備えています。
そのひとつが、見えない吸血鬼を見る能力。吸血鬼が鏡に映らないという伝説は有名ですが、中には人間の目に見えない者までいます。しかしダンピールなら、そんな吸血鬼も見ることができるのです。
なおダンピール以外には、双子が吸血鬼を見ることができるという伝承もあるようです。
そしてダンピールは、吸血鬼を殺すことができます。
銀の弾丸や心臓へ杭を打つなど通常の方法で殺すこともありますが、ダンピールだけの能力として、吸血鬼を殺す独自の儀式があります。ダンピールは笛を吹き、走り回り、透明な敵と戦う仕草をするなどの方法で象徴的に吸血鬼を殺します。この儀式により、本当に吸血鬼を殺してしまうのです。
力が足りず吸血鬼を殺せないときは、ダンピールは吸血鬼に命じて、その地を退去させることもあります。
これらの特殊能力は、ダンピールの子孫にも遺伝するとされます。
このように、人間にとって頼もしい存在であるはずのダンピールですが、死ぬと吸血鬼になるといわれ、恐れられてもいました。
ダンピールの家系は、ジプシーなどの放浪民の中にあることが多かったようです。放浪民ならいずれどこかへ行ってしまうので、ダンピールが近所で死んで新たな吸血鬼が生まれるという恐怖を、定住者たちは味わわなくて済むというわけです。
呪われた出生を背負い、生まれ持った特殊能力を使って吸血鬼と戦いながら、人知れずどこかへ放浪してゆく――そんなダンピールの有り様は、ブレイドのような現代のヴァンパイアハンターにも受け継がれているのかもしれません。
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