冬の寒さを乗り切りたい! そんな時は、なまらしばれる(とても寒い)北海道のアイヌの暮らしを参考にしてみませんか? 今回は衣服や住居、娯楽など、アイヌに学ぶ防寒対策をご紹介します。
目次
アイヌに学ぶ寒さ対策①しっかり用意! 冬の衣服
アイヌの民族衣装といえば、オヒョウダモやシナノキの樹皮の繊維を織って作る「アットゥシ」(アツシ織り)が有名です。和服のような形をしていて、アイヌ文様と呼ばれる幾何学模様が描かれています。文様は地方ごとに伝統的なパターンが伝承されており、和人など他民族との交易で手に入れた綿布を細長く切ってアップリケにし、幾何学模様を描き、さらに刺繍でアレンジを加えて作ります。
アットゥシは頑丈で水に強く、仕事着として便利な他、交易品としても使われました。
寒さの厳しい北海道では、アットゥシ以外にもさまざまな材料で衣料を製作しています。たとえば次のようなものです。
・ウル(毛皮)……防寒具として使用。
・ラプウル……海鳥の皮を羽根ごと剥ぎ、つづり合わせたもの。
・チェプウル……大型の魚の皮を縫い合わせたもの。
・チェプケリ……鮭の皮で作った靴。滑りやすく火に弱い。
・ラプウル……海鳥の皮を羽根ごと剥ぎ、つづり合わせたもの。
・チェプウル……大型の魚の皮を縫い合わせたもの。
・チェプケリ……鮭の皮で作った靴。滑りやすく火に弱い。
アイヌの人々の間では、狩りや漁は男性の仕事、農業は女性の仕事とされています。いずれも外仕事であり、寒さ対策としてアットゥシ以外にもさまざまな衣料を身に付けていました。
・コンチ(頭巾)
・ユクウル(鹿の毛皮)……アットゥシの上から羽織る。
・テパ(ふんどし)……男性用。
・モウル(襦袢)……女性用。
・マイダリ(前掛け)……女性用。
・ホシ(脚絆)……脛に巻く。冬は木綿製、夏は通気性に優れた樹皮製を使用。
・ユクケリ(鹿皮の靴)
・テシマ、チンル(かんじき)……足が雪の中に埋まってしまうのを防ぐ。新雪用はテシマ、堅雪用はチンルと呼ぶ。
・テクンペ(手甲)・テッカシ(手袋)
・ユクウル(鹿の毛皮)……アットゥシの上から羽織る。
・テパ(ふんどし)……男性用。
・モウル(襦袢)……女性用。
・マイダリ(前掛け)……女性用。
・ホシ(脚絆)……脛に巻く。冬は木綿製、夏は通気性に優れた樹皮製を使用。
・ユクケリ(鹿皮の靴)
・テシマ、チンル(かんじき)……足が雪の中に埋まってしまうのを防ぐ。新雪用はテシマ、堅雪用はチンルと呼ぶ。
・テクンペ(手甲)・テッカシ(手袋)
男性はテパ(ふんどし)を締めてアットゥシを着けます。
女性はラウンクッ(お守り)を締めてモウル(襦袢)をTシャツのように被って着用し、外出時はその上からアットゥシを羽織って帯を締めていました。さらにアットゥシがはだけてしまわぬよう、マイダリ(前掛け)をして着崩れを防いでいました。
防寒対策には、アットゥシの上から羽織るユクウル(鹿の毛皮)、脛に巻くホシ(脚絆)、靴やかんじき、手甲や手袋がありました。
頭の先から足の先までしっかり対策をして冬に備えていたアイヌの暮らし。獣皮や毛皮でできた彼らの衣装をそのまま真似るのは難しいですが、機能的な服装で防寒対策を怠らない姿勢は私たちの日常生活にも取り入れられそうです。
アイヌに学ぶ寒さ対策②囲炉裏でぬくぬく 伝統住居
アイヌの伝統的な家にも、冬の寒さに備える工夫がたくさんみられます。
アイヌの伝統住居は「チセ」と呼ばれ、日本の古民家のような外見をしています。屋根や壁は茅や笹、エゾマツなどの樹皮で葺かれていて、構造材にはハシドイや栗、柏、トドマツなどの固くて腐りにくい樹木が使われていました。
基本的にチセにはひとつの部屋しかありません。床には枯れ草やゴザが敷かれ、アペオイ(囲炉裏)が設置されていて、炉の熱が地面に蓄積されるため、寒さの厳しい冬でも暖かく過ごすことができました。壁にはイトムンプヤラ(明かり取りの窓)などの窓がいくつかあり、太陽の光が入るようになっています。
また寒さが厳しい樺太では、アイヌの人々は冬の間、「トイチセ」という竪穴式住居に住んでいたといいます。地面を掘って半地下にし、保温効果を得るため屋根全体を土で覆っています。家の中にはかまどと煙突、炉が設けられ、温かく過ごすことができました。
アイヌに学ぶ寒さ対策③炉を活用した酒造り
アイヌの人々は炉の周りでどんなことをして過ごしていたのでしょう?
ひとつは酒造りです。酒はアイヌ語で「サケ」「トノト」「アシコロ」などといい、次のような方法で醸造されました。
①粟や稗などの雑穀、ジャガイモ、菱の実、ウバユリの球根などをサケスゥ(専用の大鍋)で粥状に炊き上げる。
②人肌ぐらいの温度まで冷まし、カムタチ(糀)を混ぜてサケカラシントコ(酒造り用の桶)に仕込む。
③魔神が悪戯しないよう、桶の上に守り刀を置く。
④温度管理に気を付けつつ、炉のそばで1週間ほど発酵させ、イチャリ(ザル)で濾して完成!
②人肌ぐらいの温度まで冷まし、カムタチ(糀)を混ぜてサケカラシントコ(酒造り用の桶)に仕込む。
③魔神が悪戯しないよう、桶の上に守り刀を置く。
④温度管理に気を付けつつ、炉のそばで1週間ほど発酵させ、イチャリ(ザル)で濾して完成!
神事のための酒を醸す時は、貞淑な女性のみが取り仕切るのが習わしです。酒造りの間には、場面ごとに「酒濾しの歌」などのウポポ(歌)が唄われました。
アイヌに学ぶ寒さ対策④みんなで歌や叙事詩を楽しむ
酒造り以外でも、アイヌの女性たちは日常生活をたくさんの歌とともに過ごしています。
・ロック・ウポポ(座り歌)……床にシントコ(漆塗りの桶)の蓋を置き、その周りに車座になって拳で蓋を叩いて調子を取りながら斉唱・輪唱する。
・イフンケ(子守唄)……喉の奥で「ルルル」と音を振るわせて子をあやす。
・イウタウポポ(杵つき唄)……「ヘッサ オー ホイ」の掛け声と杵音でリズムを取る。
・シノッチャ……個人的な想いを即興で詠ったもの。個々人に「持ち歌」「持ち旋律」があり、勝手に他人の持ち歌を歌うのは失礼とされた。
・イフンケ(子守唄)……喉の奥で「ルルル」と音を振るわせて子をあやす。
・イウタウポポ(杵つき唄)……「ヘッサ オー ホイ」の掛け声と杵音でリズムを取る。
・シノッチャ……個人的な想いを即興で詠ったもの。個々人に「持ち歌」「持ち旋律」があり、勝手に他人の持ち歌を歌うのは失礼とされた。
酒造りや歌の他、人々は温かな囲炉裏を囲んで物語も楽しんでいました。
文字を持たぬアイヌの人々は、囲炉裏の周りで「ユカラ」と呼ばれる叙事詩を語り、祖先の記憶や知恵を家族や仲間、子孫へと語り継ぎました。ユカラには英雄神アイヌラックルの活躍物語、動物神が自らの体験を語るもの、人間の英雄が活躍する物語などがあります。
演者は囲炉裏の前に座り、レプニと呼ばれる棒で囲炉裏の縁を打って一拍子のリズムを刻みつつ、「雅語」と呼ばれる特別な言葉で謡います。聴衆はレプニで床を打ったり、「ヘィ!」「ホゥ!」「ハプ!」などとヘッチェ(合いの手)を入れて盛り上げます。演者の歌唱力・記憶力が重要なのはもちろん、変なタイミングで合いの手を入れると場がシラケてしまうため、聴衆も経験と技量が必要でした。
長く厳しい冬に備えてたくさんの寒さ対策をしていたアイヌの人々。温かな服装をし、囲炉裏を囲んでみんなで楽しく過ごしていた様子は現代の私たちも参考にできそうです。
寒さに負けず、素敵な冬を過ごせますように!
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