近年、TRPGをきっかけに爆発的ブームとなっている「クトゥルフ神話」。
クトゥルフ神話とは、約100年前に、アメリカの作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが創造した架空の神話体系のことです。ラヴクラフト先生を中心とした文筆仲間たちは、この神話をベースにしてたくさんの物語を書きました。
しかし、ラヴクラフト先生の文章に癖があるためか、実際に作品を読んでいる人は意外と少ないようです(個人調べ)。そこでパンタポルタでは、「とりあえずどんな話か知っておきたい」「難しそうだから30秒で把握したい」という方のために、有名すぎるクトゥルフ神話作品のあらすじを1ページの漫画にまとめました!
「ダンウィッチの怪」H.P.ラヴクラフト
漫画:よもすがら(@deae_gratia)
ご覧のとおり、大変無茶のある企画ですので、1ページで「完全に理解した」なんてことにはなりませんね。よもすがらさんの素敵な漫画とともに、作品の雰囲気をなんとなく感じていただけたら幸いです。
とはいえ、もう少し詳しく内容を知りたい方に向けて《ざっくりあらすじ》もご用意しました! あわせてお楽しみください。
《ざっくりあらすじ》
これは、1928年にダンウィッチで起こった「ダンウィッチの怪事件」に至るまでの物語です。
1913年2月2日、ダンウィッチにウィルバー・ウェイトリーが生まれ落ちました。
母親はラヴィニア・ウェイトリー。ウィルバーは母親に似ておらず、浅黒い肌をした男の子でした。父親は不明です。家にはラヴィニアの父親も一緒に住んでおり、3人の生活がはじまります。
ウィルバーが生まれてからというもの、老人(ラヴィニアのパパ)は大量の牛を仕入れはじめ、村の人たちからは「何かおかしなことをしている」と噂されるようになります。
当のウィルバーはというと、異常なほど成長が早く、生後7ヶ月になると一人歩きをはじめ、11ヶ月経つ頃には流暢にしゃべり出したといいます。
ここらで話が10年後まで飛びます。その間なにをしていたのかは不明ですが、10歳のウィルバーはすっかり大人の容貌になりました。
1924年、ついに老人が倒れます。彼は死ぬ間際、ウィルバーに向かってこう告げました。
「あいつはもっと大きくなる。ヨグ=ソトースのために門を開けるんじゃ。呪文は完全版の751ページに出ておる……」
ちょっと待って、「あいつ」とか「完全版」って何のこと? と思いますよね。ここで補足です。あいつとは、家族がこっそり育てていたウィルバーの弟(怪物)のことです。この情報は後々しか出てこないため、いまの時点ではぼかされています。
また「完全版」というのは、魔導書『ネクロノミコン』のことで、これも後ほど出てきます。
つづく1926年、母のラヴィニアが姿を消しました。どこに行ったのかも、何故消えたのかも作中では語られません。
さて、ウィルバーは老人の遺言に従って、完全版の『ネクロノミコン』を探し求め各地の図書館をめぐります。そして行き着いたのが、あの有名なミスカトニック大学です。
ウィルバーはミスカトニック大学付属の図書館で『ネクロノミコン』を借りようとするも、「貸したらアカン」と察したアーミテッジ博士に断られます。
しかし、ある夜……アーミテッジ博士は、狂ったような犬の唸り声で目を覚ましました。ミスカトニック大学に侵入者が入ったのです。
2人の仲間(ライス教授、モーガン博士)と一緒に現場に駆けつけた博士が見たものは、タール状の粘液の中にくの字になって倒れている怪物の姿。ウィルバーらしき面影を残すその怪物は、犬によって衣服と皮膚を引き裂かれていました。魔導書を盗もうとして失敗したのですね。
それから数週間にわたり、アーミテッジ博士はウィルバーが遺した日記の解読を試みます。なんとそこには、ウェイトリー家が怪物(弟)を育てていることや、怪物の正体(宇宙からきた怪物であること)と倒し方が載っていました。
「これで勝てる」と思ったアーミテッジ博士は、例によってライス教授とモーガン博士を引き連れてダンウィッチを訪れます。
そこで披露したのが、ひみつ道具の噴霧器です。怪物は人の目には見えませんが、噴霧器に入っている特殊な粉末を吹きかければ、一瞬だけ怪物の姿が見えるというのです。
意気揚々と噴霧器を持って、化物がいそうなところ……すなわち、山の頂上にある祭壇へ向かった3人組。あれやこれやして呪文を唱えると、虚空から叫び声が聞こえてきます。
「助けて! 助けて! パパ! ヨグ=ソトース!」
その後、山を引き裂くような轟音がして、祭壇の石に雷光が落ちてきました。怪物退治が完了したのです。
後日、アーミテッジ博士は語りました。「あいつはウィルバーの双子の兄弟だったんだよ。ただ、ちょっとばかしパパ似だったのさ」
《完》
パンタポルタでは、ゆるるふ神話でおなじみ海野なまこ先生の『クトゥルフ様がめっちゃ雑に教えてくれる クトゥルフ神話用語辞典』の中身をチラ見せしたり、クトゥルー神話アンソロジー『ラヴクラフトの怪物たち 上』の翻訳者インタビューを掲載したりしています。
また、召喚されずに終わったヨグ=ソトースの解説記事もありますので、ぜひ読んでみてくださいね。
》宇宙の門を開く鍵にして守護者ヨグ=ソトース
◉参考書籍
インスマスの影(新潮文庫) |