自分にそっくりな人に出会ったことはありますか? ちょっと似ているどころではなく、髪型や顔つき、服装まで瓜ふたつの人が現れたとしたら、それはドッペルゲンガーかもしれません。
実は歴史に名を残す有名作家の中にも、ドッペルゲンガーに出会ったことがあるという人がいます。今回はそんなドッペルゲンガーについてお話しましょう。
目次
アリストテレスの書物にも残るドッペルゲンガー
「ドッペルゲンガー」とは、自分と全く同じ姿をした人を見る現象、またはその人物のことです。ドイツ語で「二重に歩く人」という意味で、英語では「ダブル」、日本語では「二重体」といいます。
多くの場合、ドッペルゲンガーは自分にしか見えません。動かないことがほとんどですが、時には自分の動作と同じ動きをすることもあります。近づこうとすると逃げられてしまうことも特徴です。
ドッペルゲンガーはいつ頃から存在するのでしょう?
なんと2000年以上も前の時代にすでにドッペルゲンガーを見たという話があります。紀元前4世紀頃の古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、散歩中にいつも生き写しの分身が歩いてきたという男の話や、夜霧の中を馬で旅している途中に自分の分身を見たという旅人の話を書き残しました。これがドッペルゲンガーについての最古の記述です。
ドッペルゲンガーは「死の予兆」?
ドッペルゲンガーはどうして現れるのでしょう?
ドッペルゲンガーは「死の予兆」として現れる場合と、「本人の意識が体外離脱した結果」である場合とに分けられます。
まずは「死の予兆」についてお話しましょう。
日本や中国の「離魂病」、スコットランドの「共歩き」など、世界各地に残る伝承には「ドッペルゲンガーに出会った者は不幸になり、最悪の場合には死んでしまう」と共通点があります。
たとえば江戸時代の女流文学者・只野真葛が記した『奥州波奈志』には、こんな話が載っています。
北勇治という男はある日、自分の家の前で自分とよく似た人物を目撃しました。その後、男は病死してしまいます。
なんと北勇治の家では、祖父の代から3代続けて自分そっくりの人物を目撃し、その後病死してしまっているということです。
ドッペルゲンガーに出会うことが「死の予兆」だという話は、18~19世紀の文学作品でもモチーフとして何度も用いられています。代表的な作品をご紹介しましょう。
・芥川龍之介『二つの手紙』
・泉鏡花『星あかり』
・エドガー・アラン・ポー『ウィリアム・ウィルソン』
・オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの象徴』
・フョードル・ドフトエフスキー『二重人格』
・泉鏡花『星あかり』
・エドガー・アラン・ポー『ウィリアム・ウィルソン』
・オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの象徴』
・フョードル・ドフトエフスキー『二重人格』
ドッペルゲンガーは「体外離脱」した意識の投影?
続いて、もうひとつのケース「体外離脱」についてお話しましょう。
ドッペルゲンガーに出会っても、不幸になったり死んでしまったりしないケースがあります。この場合、ドッペルゲンガーは体外離脱した本人の意識が投影された現象だと考えられます。
先程ご紹介した、アリストテレスが書き残した話もこのパターンです。こうした現象は、スコットランドの高原地方では「生者の精霊」、ノルウェーでは「先触れ」などとよばれています。
長編小説『女の一生』で有名なギ・ド・モーパッサンも、ドッペルゲンガーに出会ったことのあるひとりです。彼はドッペルゲンガーが述べた内容を書き留め、『われらの心』という作品にして発表しました。
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世界の文豪が出会ったドッペルゲンガー
モーパッサン以外にも、歴史に名を残す有名作家の中にはドッペルゲンガーに会ったことがあるという者がいます。
(ドイツ・1749年~1832年。代表作は『ファウスト』『若きウェルテルの悩み』など)
ゲーテは21歳の時、馬に乗っているドッペルゲンガーを見たといいます。
その8年後、彼は同じ場所で同じ服装をして馬に乗っていました。彼が見たドッペルゲンガーは、未来の自分の姿だったのです。
(アメリカ・1835年~1910年。代表作は『トム・ソーヤの冒険』など)
マーク・トゥエインはパーティーの席でドッペルゲンガーに出会いました。パーティー会場で彼は旧知の夫人を見かけますが、実はドッペルゲンガーで、本物の夫人はまだ汽車に乗っており到着していなかったということです。
ドッペルゲンガーとオートスコピー
では、ドッペルゲンガーはただの心霊現象なのでしょうか?
精神医学の世界では、ドッペルゲンガーは“オートスコピー(自己像幻視)”という現象として研究が進められています。
オートスコピーとは、自分の姿を外界に幻覚として見るということです。藤繩昭の『自己像幻視とドッペルゲンガー』には、オートスコピーの特徴が次のようにまとめられています。
・数十cm~数mの眼前または横にはっきりとした自分の像が見える。
・その像は動かないことが多いが、時には歩行や身振りに合わせて動くこともある。
・顔や上半身など部分だけの像が多く、全体像を見ることは少ない。
・ほとんどのケースで、色は灰色、黒色、白色といった色のついていない状態。背景が透き通って見えることもある。
・本来の自分と年齢が違ったり、表情や衣服が異なることもあるが、自分自身の像だと直感的に確信できる。
・本人が近づくと後退し、消えてしまう。
・その像は動かないことが多いが、時には歩行や身振りに合わせて動くこともある。
・顔や上半身など部分だけの像が多く、全体像を見ることは少ない。
・ほとんどのケースで、色は灰色、黒色、白色といった色のついていない状態。背景が透き通って見えることもある。
・本来の自分と年齢が違ったり、表情や衣服が異なることもあるが、自分自身の像だと直感的に確信できる。
・本人が近づくと後退し、消えてしまう。
こうした特徴には、先ほどご紹介した民間伝承のドッペルゲンガーと一致する部分もありますが、全てがあてはまるというわけでもありません。現時点では、科学でドッペルゲンガーの謎を全て解明できたわけではなさそうです。
とはいえ研究によって、どんな状態の時にオートスコピーを体験するかは判明しつつあります。
・肉体的、または心的疲労時
・夢を見ている時
・LSDなどの幻覚剤を使用している時
・二硫化炭素中毒状態
・てんかん、脳腫瘍、精神分裂病、離人症に伴うもの
オートスコピーの症状によっては精神が衰弱してしまい、自傷などを行ってしまう者もいます。こうした症状は、ドッペルゲンガーを見ると不幸になったり死んでしまうこともあるという伝承を裏付けることができそうです。
文豪も見たというドッペルゲンガー。あなたは会ってみたいと思いますか?
◇参考書籍
アンデッド
著者:久保田悠羅&F.E.A.R.
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