人気アニメ『彼方のアストラ』など、宇宙での生活を描いた作品はたくさんありますが、実際のところ宇宙船での生活とはどのようなものなのでしょう?
今回は食事や運動、健康管理からトイレ事情まで、宇宙船での生活を体験できるツアーに皆様をご案内します。
目次
宇宙船生活体験ツアーその前に~健康管理~
宇宙船に乗り込む時は、必ず事前に健康チェックや研修を受けましょう。宇宙空間は地球とは全く環境が異なるため、健康な人でも次のような影響を受けることがあります。
- 血液や体液が頭部などに集まるため、顔がむくんだり頭が重く感じたりする。
- 宇宙酔い(乗り物酔いの時のような不快感や嘔吐)を起こす。
- 無重量・微小重力の影響で筋肉が衰える。骨のカルシウムも減る。
- 宇宙空間は真空なので、放射線を浴びる量が増える。
- 狭い宇宙船内での生活で精神的にストレスを感じる。
なかでも研修や宇宙船内での運動などでは対処できないのが「宇宙酔い」です。
乗り物酔いをしない人でも宇宙酔いに悩まされる可能性があり、厳しい訓練を受けた宇宙飛行士でも2人に1人は宇宙酔いになるといわれています。
宇宙酔いは三半規管が無重量状態に対応しきれないため起きるのではないかと考えられていますが、詳しいことはまだわかっていません。いずれにせよ、乗り物酔いの時のような気持ち悪さや吐き気が2~3日続き、その後回復することが多いとされています。
症状を軽減するための薬も開発されていますので、宇宙船に乗る時は用意しておくと安心ですね。
宇宙船生活体験ツアー①しっかり運動しよう
いよいよ宇宙船生活体験ツアーのはじまりです!
宇宙船に乗ったら、初めての無重量・微重力状態を存分に楽しみましょう! 地上にいる時とは違い、小さな力を加えただけでスーッと身体を移動させたり物を運んだりすることができます。
無重量状態の宇宙船の中では、足腰の筋肉や腹筋・背筋などを使って身体を支える必要がありません。そのため長く宇宙船で生活していると、筋肉は衰え、骨からカルシウムやミネラルが失われて骨粗しょう症になる可能性もあります。
こうした事態を防ぐには毎日運動することが重要です。1日約1~2時間、意識的に運動の時間をつくりましょう。
スペースシャトル・オービタ(スペースシャトル本体のこと。エンデバーやディスカバリーなどの機体があります)や国際宇宙ステーション(ISS)には、こんな運動用具が備えられています。
・トレッドミル:ランニングマシン。ベルトやゴムで身体を固定し走る。
・ローイングマシン:ボート漕ぎ。ゴムベルトなどで身体を固定して使う。
・エルゴメータ:自転車漕ぎ。身体を固定し使う。ペダルを調整すれば負荷を変えることもできる。
ちなみにダンベルや腕立て伏せ、スクワットといった運動は、無重量状態では筋肉に負荷をかけにくいため、地上にいる時よりも効果が少なくなってしまいます。
運動は嫌いという方も、宇宙船の中では健康のためにもマシンを使った運動にぜひチャレンジしてみてください。
宇宙船生活体験ツアー②どうやるの? トイレ事情
宇宙船内を見学するうちにトイレに行きたくなった方はいませんか。船内にトイレはあるのでしょうか? 身体がふわふわ浮いてしまうのに、どうやって用を足せばいいのでしょう。まさか我慢するしかないのでしょうか?
いえいえ、ご安心ください! 宇宙船にももちろんトイレは付いています。ただし、飛行機のトイレと同じように使える時間・使えない時間が決まっており、使用方法も地上と全く同じというわけではありません。
スペースシャトル・オービタのトイレは男女共用で、幅・奥行きが約1m程度のコンパクトなつくりになっています。今のところ目隠しはカーテンのみですが、今後宇宙船での観光がメジャーになる頃にはもう少しプライバシーに配慮した設計になるかもしれませんね。
トイレの中に入ってみましょう。便座には、腰掛ける時に身体が浮いてしまわないよう、太ももを固定するための部品が付いています。
宇宙船内は無重量状態なので、小便は自然に流れ落ちません。身体にまとわりついてしまうのを防ぐために、じょうごのようなアダプタを身体に押し当てて吸い取ります。アダプタからは掃除機のホースのような管が伸びていて、汚水タンクへとつながっています。大便も宙に漂わないよう、便座の中央付近にある小さな穴から汚水タンクに吸い込まれる仕組みになっています。
気をつけたいのは、トイレを使えない時間帯があるということです。宇宙船の打ち上げ時、大気圏への再突入時、船外活動をしている時はトイレを使えませんので、紙おむつを使用するか、男性の場合は尿収集用の袋(UCD)を取り付けましょう。
船内の見学が終わったら、本日最後のお楽しみの時間です!
宇宙船生活体験ツアー③食事は美味しいの?
楽しかったツアーも残りわずかとなりました。待ちに待った食事の時間です。宇宙船ではどんなグルメが食べられるのでしょう? 果たして美味しいものはあるのでしょうか?
現在の科学技術では、宇宙船の中で新鮮な肉や野菜を調理し出来立てを味わうことはまだ難しそうです。でもご安心ください。宇宙船でも温かい食事を摂ることは可能です。実際、国際宇宙ステーション(ISS)には電子レンジや冷蔵庫が備え付けられていて、適切な温度の食事を楽しむことができるのです。
ただし、豪華な食器や凝った盛り付けを求めるのはちょっと難しいでしょう。無重力状態では食器も食べ物も空中に浮いてしまうからです。
スペースシャトル・オービタでは、膝の上などに固定できるトレイを使って食事しています。トレイには切り込みが付いていて、缶やレトルト食品のパッケージなどをはめ込んで固定し、スプーンやフォークで中身を取り出して食べています。
気になる食事内容ですが、かつてはチューブに入ったペーストや一口サイズのスナック状のものなど、味気ないものばかりだったといいます。
しかし改良が進んだ結果、最近では私たちが普段食べている食事に近いものを楽しめるようになりました。例えば次のような内容です。
*レトルト(加熱殺菌)食品
・ステーキ、ソーセージなどの肉類
・野菜類
・デザート(プリンなど)
*フリーズドライ(凍結乾燥)食品
・スクランブルエッグ
・スープ
・果物
・飲料(コーヒー、ジュースなど)
*半乾燥食料品
・ドライフルーツ
*自然食料品
・パン
・野菜
・果物
・クッキー
・ステーキ、ソーセージなどの肉類
・野菜類
・デザート(プリンなど)
*フリーズドライ(凍結乾燥)食品
・スクランブルエッグ
・スープ
・果物
・飲料(コーヒー、ジュースなど)
*半乾燥食料品
・ドライフルーツ
*自然食料品
・パン
・野菜
・果物
・クッキー
宇宙船での食事(宇宙食)は、長期保存ができること、重量が軽いこと(宇宙船に積み込める荷物の量は限られているので)、栄養をしっかり摂れる内容であることなどを基準に選ばれます。
慣れ親しんだ日本の味が食べたい! という方もご安心ください。たとえば宇宙飛行士の野口聡一氏はディスカバリーでのミッションに、日清食品が開発した「スペース・ラム」という名のラーメンを持ち込んでいます。無重力状態でも飛散しないように粘度を高めたスープと球状にまとめられた麺が特徴で、しょうゆ、みそ、とんこつ、カレーの4種類の味が用意されていました。
こうした宇宙食は各地の博物館・科学館やネットショップなどで購入できます。気になる方は宇宙に行く前に味見してみるのもいいかもしれません。
本日の宇宙船体験ツアーはこれにて終了です。いつの日か本当に宇宙船で暮らせる日が楽しみですね!