フリーメイソンとは?
「秘密結社」とも噂されるフリーメイソンは、その実態が掴みにくいために様々な憶測が囁かれている。例えば「人類史を裏で操っている」とか「財政界を裏で牛耳っている」とか「悪魔崇拝を行っている」とか……。そんな都市伝説的なオカルト話が囁かれているのは、フリーメイソンの歴史が古く、様々な秘密のしきたりがあり、日本人にも馴染みがない団体だからだろう。
フリーメイソンのシンボルは、真理を表すコンパスと、「自由・平等・友愛」を示す直角定規が組み合わされており、中央に「G」と書かれている。
「G」は神や栄光、知識などの言葉の頭文字だと言われている。
そんな謎の組織の「グッズ」があるというのも驚きだ。お台場の商業施設ヴィーナスフォートにある「M」は日本唯一のフリーメイソン専門ショップであり、コレクション数で言うと世界一と言ってもいいらしい。
今回は許可をいただき、店内の見学と撮影、そしてオーナーの廣瀬さんからお話を伺ってきた。
(正確には「フリーメイソン」は会員のことを差し、団体としては「フリーメイソンリー」と言う。詳しい公式見解を読みたい方は、日本のグランドロッジのホームページを参照しよう)
⇒The Official Website of Grand Lodge of Japan
店内に導かれて……「ストレンジラブ」と「M」をレポート
お台場にフリーメイソンのショップがあることは、見かけたことがあったので知っていた。けれどなんだか怪しい雰囲気だし、入り口が見当たらず、積極的には近づいていなかったのだ。そんなおり、パンタポルタのぱん太くんから、フリーメイソンショップの取材へゆけ! という司令が飛んできた。
やってきたのはりんかい線の東京テレポート駅を出てすぐにある、ヴィーナスフォートだ。
以前はスルーしてしまっていた店頭を見ると、何やら張り紙が。なんとここに、しっかりと店への入り方が書いてあったのだ。
私は正規の入り方で店内へと導かれた。
(気になる方は実際に店頭を覗いてみよう)
導いてくれたのは、ゴシックスタイルをした店員さん。彼の雰囲気も相まって、扉をくぐっただけで不可思議な世界に迷い込んでしまったかのように感じた。
入ってすぐにあるのは、会員の中でもVIPだけが入れる立ち入り禁止ゾーン。こちらにはフリーメイソングッズだけではなく、怪しげなヴィンテージ、アンティーク品が並んでいる。
やはりフリーメイソンはオカルティックで怪しい団体なのか……?
と思ったら、これらの品々はオーナーが趣味で集めている海外のオカルト的なヴィンテージグッズで、フリーメイソンとは関係ないものだという。
実はこのショップは、アメリカ、ヨーロッパのヴィンテージ・アンティークを扱う「ストレンジラブ」と、フリーメイソンのグッズを扱う「M」という二つの領域に分かれている。
入ってきた扉を出て、通路の向かい側が「ストレンジラブ」だ。
今年の3月にショップが拡張され、店舗が大きくなっているのだ。
怪しげなお面や謎の標本、よくわからないおもちゃの銃や磔刑にされたイエスの十字架、謎の解剖図などが書かれた絵。
金ピカの台車には「SOLD」の文字が。それ以外にもいろいろと買い手が付いているようだ。
そしてオーナーが書いたイラストを使ったオリジナルグッズ。
奥の席に座っている腐敗死体は、映画『プリズナーズ』で実際に使われたものだそうだ。なぜここに……。
こんな小さな店内なのに、中に入っただけで不可思議な世界に迷い込んだような気分にさせられてしまう。
通路を渡り、今度は店内の左手に進んでいくと、「33」と書かれた入り口がある。こちらが、フリーメイソンショップ「M」の入り口になっている。
ここを潜るとオカルト的な雰囲気が薄れ、何やら厳粛な雰囲気すら感じさせる。
フリーメイソンのグッズは、まず目につくのがシンボルマークだ。これがあしらわれたとんでもない数のアクセサリーが、ガラスケースの中に飾られている。数多くの指輪やペンダント、食器や衣服などもある。
実は我々が取材に入ろうとしたところ、別のお客さんが店内にいた。「M」のルールとして、店内にM会員かフリーメイソンの方がいる場合、入店できないのだ。
M会員になるためには店内で36,663円以上の買い物をする必要がある。そうするとスチールM会員となり、優先して入店できるようになる。
店の奥に進むと「BALTIMORE CITY HOSPITAL」と書かれた鉄格子が。「DANGER」「KEEP OUT」と書かれていて近寄りがたいここは、「M」の会員とフリーメイソンだけが入れるエリアなのだ。
「はいっていいよー」というオーナーの言葉に甘えて、中を見学させていただいた。まず目に映るのは、ジョージ・ワシントンが描かれた巨大な絵画。これが店内にあるものの中ではもっとも高い値段がついているらしい。
ガラスケースの中に入っているものは、希少価値が高く、販売はしていない品々だ。
奥の方には湯呑など、日本風のフリーメイソングッズもあった。
オーナー・廣瀬剛さんへのインタビュー
世界各地からフリーメイソングッズやヴィンテージグッズを集めてくるオーナーの廣瀬剛さんにもお話を伺った。
――このショップはどのように生まれたのでしょう。廣瀬さんとフリーメイソンとの出会いは?
廣瀬:31年前、古着のショップを始めようとアメリカへ行ったのですが、そこでフリーメイソンのリングや時計を初めてみて「このマークかっこいいな」と思ったのが最初でした。話を聞いてみるとフリーメイソンの団体が秘密結社だということを聞いて、興味を持っていきました。古着屋と並行して、フリーメイソンのグッズを集めるようになっていって……最終的にこうなった、ってところですね。
――最初は個人的なコレクションだったんですね。
廣瀬:まぁそうですね。個人的にはフリーメイソンのリングを400個ほど持っているんですが、たぶん世界一の数だと思います。リング以外にもペンダントだとか時計だとか、他のものもありますので。
――海外ではフリーメイソンのグッズは普通に売っているものなんでしょうか。
廣瀬:普通には売ってないですね。フリーメイソンが使用していたものがヴィンテージ・アンティークとして流通していることはありますが、稀です。アンティークグッズのディーラーと繋がりがあるので、そういった人たちが集めたものを買い付ける、という感じです。
――実際にフリーメイソンの方ともお話すると思いますが、彼らの活動内容については知っているのでしょうか。
廣瀬:知っていますよ。このお店にもフリーメイソンの方が来ますしね。活動自体は慈善事業が主ですし、メイソンのホームページにも載っていることです。言ってはいけないのは、儀式だったり内部的な事情ですよね。
――一部ではフリーメイソンをオカルト的な存在として都市伝説化していますが、それらはどう捉えられているのでしょう。
廣瀬:いちいち気にしてないんじゃないですかね。指摘していってもきりがないですし。実際はオカルト的な部分はなくて……ただ古くから続いている儀式には“濃い”部分があって口外は禁じられていますけど、都市伝説的な噂は嘘だと思います。
――フリーメイソンのグッズは、誰が何のために作っているのでしょう。
廣瀬:フリーメイソンはアメリカだけで約200万人います。彼らが自分の所属団体のアクセサリーを付けるのはごく自然なことで、それらのグッズを作る会社もあります。これが会員の証にもなっています。ただアンティークグッズとしても流通しているので、会員以外でも購入は可能、ということですね。
――奥のエリアにあった稀少品は、どのようなものなのでしょう。
廣瀬:元々売り物でなく、記念品が多いですね。ロッジで配るために少数を作ったというものですね。
――このショップで一番高価なものはジョージ・ワシントンが描かれた絵画だと聞いています。
廣瀬:この絵は800万円ということで値をつけていたんですが、買い手が付きそうになったので、非売品にしました。この他に高いものとなると……壁にあるバナー(旗印)で、100万は超えますけど……「欲しい」って言われても「売らない」って言うと思います(笑)。
――「M」にはどんな人が訪れるのでしょう。
廣瀬:いろいろですよ。下は中学一年生から、上はだいたい60代くらいまで。会員もゴールド、シルバー、ブロンズ、スチールときて、1700人くらいがいますね。
――会員はそんなにいるんですね! 1日に何人くらいが訪れるのでしょう。
廣瀬:1日に2~3人のこともあるし、20人以上来ることもあります。まちまちですね。基本的に人が入りにくいようにしているので、ぶっちゃけ経営はなりたっていないですね。
――フリーメイソンのグッズが、開運グッズにもなる、とも言われていますね。
廣瀬:確かに、グッズを付けたらメジャーデビューできたとかいろいろ聞きますが、フリーメイソンのグッズは“開運”を売りにしているわけではないです。ただ、「ここに来るとパワーが貰える」と言う人は多いので、パワースポットと捉えられているのかもしれません。普段見られないものが多いですし、伝統と歴史あるものが揃っていますから、気持ちが高ぶるのではないでしょうか。海外からもお客さんが訪れるくらいになっています。
――フリーメイソンは宗教なのでしょうか。
廣瀬:そんなことはありませんよ。秘密を守ることは求められますが、団体自体は宗教ではありません。慈善事業を行うための信念は求められると思いますが。フリーメイソンは兄弟で、みんな「ブラザー」と呼び合っています。フリーメイソンになれば世界中に400万人の兄弟ができる、ということになります。「良い人間」が「より良い人間」になるのが、フリーメイソンなんです。
フリーメイソンについては、多くのオカルト的な誤解が生まれているようだが、その実態は「秘密の約束事があり、儀式を行っている」という側面も持つが、「社会をより良くするための慈善活動を行っている」ということが主たるものだと言える。
日本人で言えば高須クリニックの高須院長がフリーメイソンであることを明かしており、ロッジの代表者として活動し、掃除ボランティアや災害支援などを行っていることが明らかになっている。
謎の多い団体だが、私たちも知らないうちにフリーメイソンの恩恵を受けているのかもしれない。
オーナー・廣瀬剛氏のInstagram
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