作者:井戸正善
パンタポルタ連載小説『よろず道場のお師匠さん』(著:井戸正善)に登場するエルフの少女ルリによる、聞きかじり防具コラムが連載スタート!
師匠から聞きかじった武器の知識を丁寧にわかりやすく教えてくれます。
隔週木曜日更新、全10回予定!
欧州以外の変わった防具たち
――北米大陸の先住民族たちは、しなやかな柳の木板を動物の革で覆ったものや、動物の生皮や樹皮を重ね合わせたものを防具の材料としていました。
軽く柔軟な盾や鎧は矢を防ぐのに充分で、打撃や斬撃に対しても信頼できました。
また細い木をずらりと並べて編み上げた鎧や盾もあります。
そういった盾の中でも特徴的なのが、背負い盾です。
革帯とかで身体にしっかり固定するから、頻繁に着け外しするようにはなってないのよ。
西洋だと盾と剣をまとめて背負うことで移動の際に両手を空けることはあるみたいだけれど、同じ背負うにしても目的が違うのね。
西洋だと盾と剣をまとめて背負うことで移動の際に両手を空けることはあるみたいだけれど、同じ背負うにしても目的が違うのね。
――北米大陸にも、手に持って使う盾が無かったわけではありません。
動物の革や木を使った盾は、背負い盾とは違い小型の丸盾に飾りを付けた形状になっています。
アパッチ族の折り畳み式丸盾や羽根飾りが付いたメディスンシールドなど、様々な特徴を持った盾が存在します。
――鎧にも地域の特色として、セイウチの牙を使ったラメラータイプのボディアーマーがあります。
冶金技術が発達していないからこその防具の進化が、北米や中南米、インドや中東などで顕著に見られます。
それらは防具として非常によく考えられたものであったり、彼らの信仰が強く表れたものであったりします。
――飾りによって身体を大きく見せるのは動物の世界でも威嚇行動としてよく見るのですが、人間同士の戦場でもそれは洋の東西を問わずに表現されていました。
ローマ兵の兜には飾りのためだけの突起がありましたし、武士の兜には所属を示す立て物が輝いています。
北米の先住民だけでなく、中南米アステカの戦士や、南アフリカでも頭部には羽根飾りやそれに類した装飾がみられます。
――動物の力を借りるという思想は古代から存在し、アステカ帝国でも上級の戦士は全身をジャガーの毛皮に身を包む防具を使用しました。
他にも鷲の羽毛を使うことで、動物に扮してその力を操る強靭な戦士として振る舞ったのです。
――北米の先住民族たちの中には、冶金技術が入って来ても頑なに木と革による防具の作成に拘っている部族もありました。
金属には呪術がかからず、動物の加護を得ることができないと思われていたからです。
ラメラーのように骨や牙などを使った防具なども同様の理由で、侵略者から銃による侵略を受けるまで使用され続けました。
――オセアニアではフグの一種であるハリセンボンを乾燥させて兜に加工したり、ココナッツの荒縄で全身を覆う防具を作るなど、他では見られない素材が使用されました。
サメの革で防具を、歯で武器を作っていました。
また、南アフリカのズールー族に至っては上半身裸で腰巻と膝に羽根飾り、頭部に羽根飾りがついた鉢巻のような防具、そして楕円形の盾のみという軽装でした。
――スカリフィケーションとは刺青に比べて深く皮膚を傷つけることでケロイド状に変質させる方法です。
刃物で傷をつけて刺激物によって皮膚を盛り上げるか、火傷を作ることでデザインを身体に直接刻み付けるのです。
現在ではファッションとして施術されていますが、元は所属する部族や役割、地位などを示したり、精霊の加護を求める呪術的な印を彫り込んでいました。
次回「防具のまとめ」は9月19日公開予定!
◇おすすめ記事
|
「ルリちゃんの聞きかじり武器講座」 |
◇キャラクター紹介
【ルリ】
道場主である斎舟の一番弟子を自負するエルフの少女。
斎舟が居ない間は道場の留守を任されている。
生活のほとんどを稽古と研究に費やしているという努力家な一面も。
道場主である斎舟の一番弟子を自負するエルフの少女。
斎舟が居ない間は道場の留守を任されている。
生活のほとんどを稽古と研究に費やしているという努力家な一面も。
【熊公】
本名はイービルベアードといい、熊獣人に魔族の血が混じった大男。
“モノ溜まり”と呼ばれる場所に流れ着く、異世界からの漂流物を回収
して売買することを生業としている。
本名はイービルベアードといい、熊獣人に魔族の血が混じった大男。
“モノ溜まり”と呼ばれる場所に流れ着く、異世界からの漂流物を回収
して売買することを生業としている。
◇参考書籍
『図解 防具の歴史』
著者:高平鳴海
イラスト:福地貴子
>書籍はこちら
*作者紹介*
井戸正善(いどまさよし)。HJノベルスより『呼び出された殺戮者』が1~9巻まで発売中! コミックウォーカー及びニコニコ静画にて、コミカライズ版も掲載。また、Kラノベブックスより『王族に転生したから暴力を使ってでも専制政治を守り抜く! 』が発売中。佐賀市のエアガン飲み屋『NEST』の店主さんでもある。
井戸正善(いどまさよし)。HJノベルスより『呼び出された殺戮者』が1~9巻まで発売中! コミックウォーカー及びニコニコ静画にて、コミカライズ版も掲載。また、Kラノベブックスより『王族に転生したから暴力を使ってでも専制政治を守り抜く! 』が発売中。佐賀市のエアガン飲み屋『NEST』の店主さんでもある。