普段、どんなところで買い物をしますか? スーパーやコンビニといった実店舗のほか、最近ではネット通販を利用する方も多いかもしれませんね。
ではもしあなたがある日突然中世や近世のヨーロッパに転生してしまったら、どこで買い物をすればよいのでしょう? デパートや通販はあるのでしょうか? どんなものが買えるのでしょう。今回は中世~近世ヨーロッパのお買い物事情をご紹介します。
目次
中世ヨーロッパで買い物するなら「市場」がおすすめ
転生先が中世ヨーロッパだった場合、買い物は近くの市場をおすすめします。
*中世ヨーロッパの「市場」で買い物をしよう!*
・いつ?:市場ごとに定められた日程(市場の旗が目印)。
・どこで?:農村・都市の教会、城砦近くの広場や空き地。
・どんな店があるの?:職人・商人の固定式の店舗(食料品店、パン屋、肉屋、鍛冶屋、靴屋など多種多様)、移動式の屋台、露天(食材・食品から日用雑貨まで)。
・その他のおすすめポイント:両替商や金貸しもいるし、旅芸人の公演も楽しめる。
市場は年市なら年に数回、週市なら毎週の定められた日程で定期的に開催されます。市場が開かれる日は旗が掲げられますので、目印になりそうです。
都市だけでなく、農村でも市場は開かれます。教会、城砦近くの広場や周辺の空き地などが会場となり、職人や商人の固定式店舗から移動式の屋台、露天まで様々な店が建ち並びました。パンや肉、ワインといった食料品や食材から靴や雑貨、織物まで、目当ての品物を見つけやすいよう、店は商品の種類ごとに固まっています。
買い物をしすぎてお金が足りなくなっても大丈夫。市場には両替商や金貸しなどの金融業者も揃っています。市場の旗が立っている間は外部の旅人も商売を許されたため、他の町から様々な業者が集まってくるのです。
買い物に疲れたら、旅芸人たちの公演を覗いてみましょう。さらに、市場が開催される時は格闘技やダンス、フットボール、アーチェリー、闘鶏、鎖で繋いだ熊に犬をけしかける「熊イジメ」など様々な遊びも行われ、一種のお祭り騒ぎを楽しむこともできました。
ちなみに、大市と呼ばれる大規模な定期市には次のようなものがあります。
・シャンパーニュの大市
・サン・ドニの大市
・ランドックの大市
このうちシャンパーニュの大市は、ラニー、バール・シュル・オーブ、プロヴァン、トロワの4都市で順繰りに開催されるもので、1回につき6~7週間もの間続く大規模な定期市です。
この大市ではフランス王、シャンパーニュ伯の保護を受け、次のような便宜が図られています。
・市場の近くに専門の宿屋が設けられる。
・街道・市場には武装した護衛が付く。
・通行税などは減税。
・公正な取引が行われるよう、監視官が取引や契約に立ち会い、公証人が記録を行う。
・支払いは手形で行う。清算は債務返済の形で行われ、周辺国家の貨幣が集まるため両替商の取引技術向上に繋がった。
もし転生先の近くにシャンパーニュなどの大市があれば、一度覗いてみるのも面白そうですね。
ヴィクトリア朝時代の都会では「街頭商人」が便利
転生先が近世ヨーロッパだった場合、市場だけでなく様々な場所で買い物を楽しむことができそうです。
例えばヴィクトリア朝時代のイギリス都市部では、人々は街頭商人を中心に個人商店やアーケード街、百貨店などで買い物をしています。それぞれどんな場所なのか、簡単にご紹介しましょう。
……口上香具師(ゴシップ誌など)、呼び売り商人(魚、野菜、果物など)、牛乳売り(牛乳)、街頭職人(職工品)、街頭芸人(人形劇、曲芸)などのこと。
○日常の買い物なら大抵のものは何でも揃う。
○安い!
×信用できない商品も多い。
……街中に点在する専門店。
○本格的な専門商品がある。
×必要なものを買い揃えるには各店を回らなければならず、時間と手間がかかる。
……ひとつの屋根の下に複数の店舗が集まっている。大都市にある。
○アーケード街に行くだけで様々な品物を買い揃えられる。
○ウィンドウショッピングも楽しめる。
×大都市にしかない。
……19世紀中頃に誕生。上流~中流階級向け。
○取り扱い商品が多い。
×値段が高い。
どんなお店に行くにせよ、1830年代以前は値札が存在しなかったため、口頭で値段交渉しなければいけません。決められた値札に応じた値段を支払うことに慣れている私たちには、少しハードルが高いかもしれません。
なお、上流階級の人々については少々事情が異なっています。彼らは専門店か出入りの商人による訪問販売を利用することが多く、支払いも請求書を使った後払い方式で行われていました。
ヴィクトリア朝時代の田舎には通販があった!
同じヴィクトリア朝時代でも田舎はどうだったのでしょう? 都会に比べて買えるものが限られていそうだと思いますか? いえいえ、そんな時のために、(お金があればですが)通信販売を利用することもできました。
通販も含め、田舎でおすすめの買い物方法には次のようなものがあります。
○いつでも馴染みの店で品物を購入できる。
×割高な商品もある。
○地元では手に入りにくいものが買える。
×行商なので常に手に入るとは限らない。
……19世紀初頭には月に数回開催されていたが、時代が下ると少しずつ人気がなくなった。
○様々なものを購入でき、娯楽も楽しめる。
○特に年に1度、収穫祭の時に開催されるフェアは一種のお祭りだった。
×開催日時が決まっており、いつでも好きな時に買い物できるわけではない。
……お金持ち向け。宿屋の主人が副業で行っており、宿への荷物を運ぶ荷馬車に便乗して品物が届く。1880年代になると大型店舗が通販専門部門を設けるようになった。
○好きなものを届けてもらえるので便利。
×高い。誰でも気軽に利用できる値段ではない。
ここまで読めばもう大丈夫。中世~近世ヨーロッパにいつ転生しても、買い物に困ることはなさそうです。健闘を祈ります!
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◎参考文献
図解 メイド
著者:池上良太
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