ラノベ好きVtuberとして活躍する本山らのさんによる、ファンタジー小説おすすめコラム「本山らのとファンタジー小説を読みませんか?」
小さい頃から本が好きだという本山らのさんが、テーマに沿ったお気に入りのファンタジー小説を紹介してくれます。第6回のテーマは「ファンタジー世界を舞台にした医療もの」です。
書き手:本山らの
ファンタジー世界での回復手段といえば、ド○クエなどの影響で、呪文を唱えれば即回復! といった回復魔法や、「やくそう」でなんでも治るといった印象が強いのではないでしょうか。
しかし、そんなファンタジー世界での病気やお医者さんにフォーカスしたライトノベル作品もあるのです。そのような作品は、現実世界を舞台にした医療ものと異なり、魔法や異種族の存在する世界だからこその手段を用いて奮闘するお医者さんの姿を描いている点が面白いのです。本山らのと、ファンタジー世界を舞台にした医療ものを読みませんか?
『おことばですが、魔法医さま。 ~異世界の医療は問題が多すぎて、メスを入れざるを得ませんでした~』
まずは、現代日本からファンタジー世界へ転移した主人公が、現代医療知識を広めたり、その知識を魔法と組み合わせたりして、人々を治療していくこの作品、『おことばですが、魔法医さま。』シリーズをおすすめします!
おことばですが、魔法医さま。 ~異世界の医療は問題が多すぎて、メスを入れざるを得ませんでした~ (電撃文庫) |
医学生・伊坂練次郎が突然召喚されてしまったのは、回復魔法のみが正式な医療行為として認められた異世界でした。風邪などの内科的な病気に対してはあまり効き目が無い魔法医療を目の当たりにした伊坂は、現代医療知識を用いて患者さんを救おうとします。しかし、それを是としないのが本作のヒロイン、魔法医コーディ。魔法医療以外を認めないコーディと伊坂は対立します。しかし、二人とも「すべては患者様のために!」という想いは同じであることを認め合い、病に苦しむ人々を救うために共闘することになるのです。
勇者や王様の病気を特定し、インフルエンザワクチンをはじめとする医薬品や治療器具をなんとかファンタジー世界で再現しようと試みたり、現代世界には存在しない呪いを外科手術で治療しようとしたりと、ファンタジックな世界観と現代医療知識が交差するポイントが面白いです。
そして何より! ヒロインのコーディが可愛い! 真面目で、がんばりやさんで、人を助けることを第一に考えているとっても良いお医者さん。ちょっとポンコツなところも大好き! 主人公の伊坂も人助けを第一に考える良い人で、主要キャラみんな性根が良く、気持ち良く読むことができるのです。また、最初は方向性の違いによって対立していた伊坂とコーディですが、患者さんを助ける実績を残していく中で、互いに信頼を勝ち取っていくという関係性の変化も素敵です。波乱万丈で最終的にはハッピーエンドな展開にも惹きつけられますし、たびたび挟まれる伊坂の医療知識もためになりますよ!私も喉を痛めてしまった時に、伊坂くんアドバイスに基づいて実際にはちみつ大根を作ってみたのですが、効果がありました!
ファンタジー世界に現代医療を持ち込んだらどうなるのか? という発想からスタートしたこの作品。ファンタジーがお好きな方も、お仕事ものがお好きな方も、そして、メガネっ娘がお好きな方も、楽しめると思います!
モンスター娘のお医者さん
続いて、ラミアやケンタウロスなど、様々な異種族と人間が共生する街で診療所を営むお医者さんが主人公の作品、『モンスター娘のお医者さん』もおすすめしたいと思います!
モンスター娘のお医者さん (ダッシュエックス文庫) |
多種多様な生態をもつモンスター娘たちならではの病気に対処する主人公グレン。時にはマーメイドのエラに手を挿入して触診したり、ゴーレムの手足を縫合する手術をしたりと、多岐にわたる治療シーンが見ものです。患者さんの症状や環境などについて情報を集め、病気を特定していくプロセスがしっかりと描写されており……そして、ヒロインは非常に魅力的かつ扇情的に描かれます。でも、医療行為なので健全です!!
また、一つ一つ病気を治療していく連作短編のようでいて、大きな流れとしての物語も1冊できちんとまとまっている構成も巧みで、面白いのです。
そして特筆すべきは、登場する種族の数の多さ。下半身が蛇のラミアに人馬のケンタウロス、ドラゴンの少女やマーメイド。蜘蛛の体のアラクネ、死体を継ぎ接ぎにして作られたフレッシュゴーレム、翼を持つハーピー、人間の十倍もの身長のギガス、下半身がタコのスキュラに一つ目サイクロプス、ドッペルゲンガー、アルラウネ、鬼の子などなど……この他にもたくさんの種族が登場します。もちろん全員かわいい! そんなモンスター娘たちの生態に関する設定は作者さんのモンスター娘愛に裏打ちされ、実に丁寧に考証されています。人外娘に萌える趣味が無かった人でも、個性的な彼女たちに次第に惹かれていってしまうくらいのパワーを持つ作品なのです!
☆☆☆
ということで、ファンタジー世界での医療をテーマにした作品を2作ご紹介しました。「医療もの」という題材はドラマなどの媒体でも人気ですが、それがファンタジックな世界観設定と交わった時の化学反応が面白いのです! 「医療」は私たちの暮らしと切っても切り離せないものだからこそ、ライトノベルという媒体で楽しく接してみるのも良いのではないでしょうか。どちらもヒロインがとっても可愛い作品ですし! ではでは、さよならの~!
追伸:ラノベの王女様もパンタポルタにて記事を掲載なさるとお聞きしました。パンタポルタの編集さんもまた非常にニッチでユニークなところに目をつけられましたね!? 王女様がこの媒体でどんなことを書かれるのか、ものすごく気になります……! パンタポルタの風紀は守られるのでしょうか!? 読むのを楽しみに待っております。
本山らの(@Motoyama_Rano)
◎本山らのとファンタジー小説を読みませんか?
第1回『本山らのと魔法学校へ思いを巡らせませんか?』
第2回「本山らのと、女性作家さんが綴るファンタジーを読みませんか?」
第3回「本山らのと、剣で戦うだけじゃない! 個性派ファンタジーを読みませんか?」
第4回「 本山らのと、小説の中で吸血鬼と出会ってみませんか?」
第5回「 本山らのと、上下巻構成のライトノベルを読みませんか?」