【夏のホラー企画!ディオダディ荘の怪奇談義】
これは右中桂示さんから寄せられた、いわくつき物件の話です。
※「怖い!」と思ったら、最後にある「怖かった!」ボタンで投票をお願いします!
※投票期間は終了しました。
◆
新居に引っ越したその日の夜、男は金縛りにあっていた。
身動きが封じられた中で、更にはガタガタという物音や「シネ」といった声を延々と聞かされる。そこはいわくつき物件だった。
この部屋ではかつて入居者が自殺し、その後の入居者は次々と怪奇現象に遭遇して出ていった。男は全て承知の上で契約していた。
だから彼は驚きもせず、怖がりもしなかった。それどころか笑みさえ浮かべて、虚空へと語りかける。
「ねえ……君は、そこにいるの……?」
返答は無い。
しかし男はそこにいる不可視の存在への確信を持って、問いかける。
「死ねば、逃げられると思った?」
男は全てを承知していた。
かつてこの部屋で自殺したのは彼の愛し続ける女性であり、彼を愛してくれなかった女性である事も。
「今度はもう、離さないからね……」