【夏のホラー企画!ディオダディ荘の怪奇談義】
これは鳥羽ささみさんから寄せられた、話しかけてくる男性の話です。
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子どもの頃、よく後ろにオッサンがいた。
不意に耳許で「おい」と不機嫌そうな低い声で話しかけてくるから驚いて後ろを振り返るのだが、姿は見えない。
家で話しかけられることは無く、声をかけてくるのは必ず外。そして親や友人が傍にいない、一人でいる時だった。
「おい」から先は聞いたことが無い。何度も話しかける癖に肝心の内容は言わないし、不機嫌な声だし、怖いというより感じの悪いオッサンだなと思っていた。
そんな後ろのオッサンが最後に話しかけてきたのは小学5年の夏休み。川で小魚をとって遊んでいた時のことだ。
一緒に遊んでいた友達はバケツを取りに行くだかで家に戻っていて、一人だった。川辺でしゃがんでいたら、「おい」とオッサンの声。振り返っても誰もいないのは解っているのに、毎度振り向かずにはいられなくてその時も反射的に後ろを振り向いた。
すると逆光で顔は見えなかったが、知らないオッサンがそこにいた。
声が出なかった。そして気がつけば暴れる暇もなくオッサンに頭を川の中に突っ込まれていた。
後頭部を鷲掴みにされて大人の体重をかけられていたのか、いくら抵抗しても全然頭を上げられなくて焦ったのを覚えている。
しかし急に後頭部を鷲掴みにしていた厚ぼったい掌の感覚と重みが消えて、勢いよく顔を上げた。
後ろを振り返ればぼやけた視界に家に戻っていた友達が慌てて堤防を駆け降りてくる姿がうつった。
オッサンらしき影はどこにもない。
友達いわく、私の後ろに知らない大人がいて、しかも私を川に突き落としたように見えたから大声をあげたらしい。
するとそいつはどこかへ行ってしまったと。焦った風もなく歩いていった上に周りは隠れるような場所もないのに、何故か見失ってしまったと友達は首を傾げていた。
私も私で逆光ではっきりしなかった顔はともかく、服装や体格を全く覚えていない。
ただ、40から50代の感じの悪いオッサンという印象だけは今も強く覚えている。