【夏のホラー企画!ディオダディ荘の怪奇談義】
これは右中桂示さんから寄せられた、夜道で出会ったモノの話です。
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すっかり遅くなってしまった深夜の帰り道。
暗い路地の先、街灯をスポットライトのようにして、それはいた。
「……っ!?」
血塗れの女だった。
顔、体、手足、至るところに傷があり赤い。乱れた髪の奥に見える目は暗く虚ろ。生きている人間とは思えないようなその姿に、全身の震えが止められなかった。
「あぁ……ああぁ……」
更には俺に気づいたのか。かすれた呻き声を出しながら、執念を感じる目をぎらぎらと輝かせて近付いてくる。
これままでは死ぬ。
そう悟った俺は震える足を無理矢理動かし、情けなくも全速力で逃げ出したのだった。
全く眠れずに迎えた朝。
体調が優れないまま家を出て、ビクビクしながらいつも通る道を進むと、丁度昨日見てしまった辺りに人だかりができていた。
嫌な予感がする。しかし無視も出来ない。
意を決して近くにいた女性に尋ねてみる。
「何かあったんですか?」
「今朝ここで若い女の人の死体が見つかったみたいですよ。刃物で何ヵ所も刺されてて、通り魔でも出たんじゃないかって……」
話を理解した瞬間、背筋がゾクッと冷えた。
この場所。若い女。何ヵ所も刺された。
特徴が合ってしまう。
となれば。
昨日見たアレは、見間違いや夢などではなく、ここで死んでいたというその女の、正真正銘本物の幽霊ーー
「まだ分からないの? その時の私はまだ生きてたのに」
反射的に顔を上げると、さっきまで話していたはずの人が消えていた。
硬直して息すら出来なくなる。そこに次の声が、すぐ耳元から聞こえてくる。
「私が死んだのは、アンタのせいだから」