【夏のホラー企画!ディオダディ荘の怪奇談義】
これは斯波さんから寄せられた、不思議なテディベアの話です。
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メイの両親は共働き。 だから家に帰っても誰もいない。
いつだってひとりぼっちだった。
けれどメイは両親を心配させないよう、無理に笑顔を作った。
そんな娘に両親は『クリスマスは一緒に過ごそう!』と約束をした。
クリスマスの日、彼らは大きなケーキとバスケットいっぱいのチキン。そしてクリスマスプレゼントを車に乗せ、愛する娘の待つ家へと向かった。
けれどその途中、事故にあった。
――即死だった。
幼いメイには2人の形見として、唯一無事だったテディベアが渡された。
彼女の身長と同じくらいの大きなテディベア。それは亡くなった両親の沢山の愛が詰め込まれた、最後のクリスマスプレゼント。
それからメイはどこへ行くにも『ティアー』と名付けたテディベアを持ち歩くようになった。
ずっとティアーとお話を続ける少女に、周りの大人達は誰もが憐れむような視線を向けた。
小さな声で何を話しているかは分からない。
けれどある日、彼女を心配した養父が尋ねたのだ。
「何を話しているんだい?」
すると彼女は答えた。
「次はだれを引き裂くの? って聞いているの」
「え?」
「だってティアーはそれがお仕事だから。裂かないとね、怒られちゃうんだって」
「それは、誰に?」
「……ひみつ、だって」
メイはティアーに顔を埋めて笑った。
その一か月後、メイはパタリとティアーに構わなくなった。
それどころかどこにやったのかと尋ねても知らないの一点張り。
両親の形見なのに……と眉を顰めた大人達だったが、やがてそのテディベアのことなんて忘れていった――メイが成人した冬の特番テレビに映るテディベアを見るまでは。
目の奥に花びらが埋め込まれているような瞳はティアーのものだ。
見覚えのあるそれに誰もがテレビに食いつき、そして絶句した。
「このテディベアが発見された現場では必ず人が引き裂かれているのです」
画面に映った事故現場はメイの両親の時と全く同じだったのだから。