【怪奇談義】なれのはて

【夏のホラー企画！ディオダディ荘の怪奇談義】
これは大澤めぐみさんから寄せられた、廊下の幽霊の話です。

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夜中に起きてトイレに行こうと廊下に出るとワンルームの廊下に女のお化けが立っていて驚く。

あわててドアを閉める。

なにをどう考えたところでお化けだ。
長い黒髪を前に垂らした白い服の女で、だいたい貞子(※1)。めっちゃ背が高い。2メートルくらいある。

必死でドアを押さえガタガタ震えるが、別になにも起こらない。

あれ？ ひょっとして見間違いか？ と思う。
そりゃそうだ。お化けなんて現実に存在しない。寝ぼけてたのだ。

ドアを開ける。
やっぱりいる。
ドアを閉める。

お化けは廊下に立っているだけで動かないが、やっぱりいる。

俺はトイレを諦めベッドにもどり、頭から布団を被ってガタガタと震える。

いつの間にか眠っていたらしく、次に起きたら朝だ。
あれ？ やっぱり夢かな？ と思うが、次の日も夜中に起きてドアを開けたらお化けがいる。

慌ててドアを閉める。

お化けは動きはしないらしい。けど、夜中に起きると毎回同じ場所にいる。
いるだけで実害はない。その場から動かない。

だんだん俺も慣れてきて驚かなくなってくる。というか、俺はトイレに行きたくて起きたわけで、膀胱は破裂寸前なのだ。
トイレを我慢するのもアホらしいので、俺はお化けの横を通り抜けて行く。
人間、何にでも慣れてしまう。
俺はお化けがいても横を通り抜けトイレを済ませ、ベッドに戻りぐーすかぴーと眠る。

気にしなければいいだけだ。


お化けにすっかり慣れた頃、寝ぼけたフラフラとした足取りでお化けの横を通り抜けようとして、ドンッとぶつかってしまう。

俺は反射的に「あ、すいません」と、お化けの顔を見上げる。
長い黒髪に隠れていたお化けの目が見える。

目が、あう。

ああ、やっぱりこいつは悪いお化けなんだと俺はやっと気づくが、もう遅い。
俺の身体からは急速に熱が失われ、その場で崩れ落ちる。

安普請のアパートの木目調のビニールの床材が見える。

お化けがいることなんかに慣れてしまうべきではなかったのだ。

寒い。すごく寒い。