【夏のホラー企画!ディオダディ荘の怪奇談義】
これは虎走かけるさんから寄せられた、遺品整理バイトの話です。
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便利屋のバイトをしてた時の話。
子供部屋の遺品整理を頼まれて、俺は憂鬱な気持ちで作業を始めた。
家全体にのしかかる、なんともいえない暗くて重たい空気が嫌で、とにかく早く終わらせようと、必死だった。
けどベッドから布団をはぎ取り、骨組みだけにしたところで、俺は「うわ!」っと悲鳴を上げてベッドから飛びのいた。
がりがりにやせた子供が、ベッドの下に這いつくばっていた。
体は汚れ、髪は伸び放題で、予想外の出来事に固まってる俺を警戒するように、じっと俺を睨んでる。
俺は完全にパニックになった。
とりあえず、女の子に「どうしたの?」なんて平気な振りして話かけてみると、答えがある。
「おかあさん、わたしのことむしするの」
「え……ひどいね」
「ごはんもつくってくれなくなっちゃった」
警察に通報すべきだろうかと悩んでいると、最悪なことに依頼主――つまり母親だ――が部屋に駆け込んできた。
刺されるかもしれない。
思わず警戒した俺に、母親は聞いた。
「あの子、見えるんですか?」
「は?」
「見えるんですか? やっぱりいるんですね? いるんですよね!」
母親は興奮し、俺にとびかかってきた。
痩せた子供はベッドから這い出し、俺の手を握る。
冷たくて、乾いた感触がした。
「あなたのおうちに行っていい?」
喉が詰まったように、声が出ない。
俺はすべてを振り払って、その家から逃げ出した。
その後事務所で聞いた話では、母親は娘の死後も気配を感じ、料理を用意したり、話しかけたりしていたのだという。
しかし父親は妻がノイローゼになったと判断し、娘の物をすべて処分することを決め、今回の依頼が入ったそうだ。
けれど、俺には確かに、がりがりに痩せた子供の姿が見えたし、声も聞いた。カサカサに乾いた小さな手の感触も残っている。
あの子は本当に死んでいたんだろうか。
母親は本当にノイローゼだったのだろうか。
母親には見えない子供。俺にだけ見えた子供。
真実を確かめるすべはない。