伊勢神宮などに祀られ、「天岩屋」の伝説などで知られる天照大御神(アマテラスオオミカミ)。名前は知っているけれど、どんな神様だったか詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。
今回は天照大御神の伝説をサクッとまとめてご紹介します。
目次
そもそも天照大御神ってどんな神様なの?
伝説の内容をご紹介する前に、まずはそもそも天照大御神がどんな神様なのかまとめてみましょう。
*天照大御神ってこんな神様*
・日本神話に登場する最高神格。
・現皇室の祖先神とされる太陽神で、女神。
・伊勢神宮などに祀られている。
・「天岩屋」のエピソードが有名。
天照大御神(アマテラスオオミカミ・天照大神)は日本神話に登場する神々の中でも最高神格とされる女神です。太陽神であり、現皇室の祖先神とされ、三重県の伊勢神宮などに祀られています。
天照大御神は本来、太陽神そのものではなく、太陽神に仕える高貴な巫女だったのではないかという説があります。民俗学者で歌人の折口信夫などの研究によると、本来の太陽神は別におり(タカミムスビノカミ(高御産巣日神)という神ではないかとされています)、天照大御神はその霊巫でしたが、後に両者が混合・融合し、天照大御神=太陽女神となったというのです。
いずれにせよ、天照大御神の伝説は『古事記』『日本書紀』などに登場します。中でも有名な「天照大御神の誕生にまつわる伝説」と「天岩屋伝説」について、次項からご紹介していきましょう。
ひとつじゃなかった! 天照大御神の誕生伝説
まずご紹介するのは天照大御神の誕生にまつわる伝説ですが、実は『日本書紀』と『古事記』では内容が少々異なっています。一体どんな違いがあるのでしょう?
①『日本書紀』(720年)の本文
・イザナミとイザナミの夫婦神が日本列島と山川草木を生んだ後、以下の4人の子どもを生んだ。
・最初に生んだのは「大日孁貴(おほひるめのむち=天照大御神)」という太陽神で、天上世界(高天原)で仕事をさせることにした。
・次いで月の神も生み、天上世界へ送った。
・3番目に蛭児(ひるこ)を生むが、3年経っても立ち上がらなかったので、葦船に乗せて流した。
・4番目に生んだスサノオノミコトは荒々しく残虐無道だったので、根の国(死者の世界)へ行かせた。
『日本書紀』での天照大御神は、イザナギとイザナミの間に生まれたこと、正式な名前は天照大御神ではなく大日孁貴であることが特徴です。
続いて、『古事記』の内容をみていきましょう。
②『古事記』(712年)の本文
・イザナギが黄泉国(地下にある死者の国)から逃げ帰る。
・穢れを落とすため禊をしたところ、左目を洗うと天照大御神が、右目を洗うとツクヨミノミコト(月読命・月弓尊)が、鼻を洗うとスサノオノミコトが生まれた。
・天照大御神には高天原の統治を、ツクヨミノミコトには夜の国の支配を任せ、スサノオのミコトには海を治めさせることにした。
『日本書紀』とは違い、『古事記』では天照大御神はイザナギの左目から誕生したとされています。また、天照大御神が正式には大日孁貴という名前だとは記されていません。
細かく言えば、『日本書紀』でも本文と注釈文で内容が少し異なるなど、天照大御神の誕生伝説には様々なバリエーションが存在します。神話は決してひとつではないのです。
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3分でサクッと! 天照大御神の「天岩屋」伝説
天照大御神といえば、「天岩屋」の伝説も有名です。どんな伝説なのか、かいつまんでご紹介しましょう。
天照大御神の弟・スサノオノミコトは乱暴者で、神聖な布を織る機織り小屋に皮を剥いだ馬を投げ込んだため、機織をしていたアメノハタオリメは驚き死んでしまいます。これに怒った天照大御神は、天の岩屋に入り戸を閉ざしてしまいました。
太陽神である天照大御神が隠れたため、世界は闇に包まれてしまいます。地上では無数の悪霊がうごめき、天変地異が続くようになりました。
困った神々は何とかして天照大御神に出て来てもらおうと話し合います。その中でオモイカネ(思金神)という神が、天岩屋の前でお祭り騒ぎをし、天照大御神が何事かと外を覗いた隙に引っ張り出そうと提案しました。
そこで神々は天の岩屋の前に祭壇を築き、供え物をすると、お祭り騒ぎを始めます。アメノコヤネノミコト(天児屋命)が祝詞を唱え、女神アメノウズメノミコト(天宇受売命)が踊り出すと、激しいダンスに神々は歓声を上げて大盛り上がりです。
騒ぎを不審に思った天照大御神は、岩屋の戸を少しだけ開けると、アメノウズメノミコトに何事かと問いかけました。
「あなたさまよりも尊い神がいらっしゃったので、お祝いをしているのです」
この返答に興味を持った天照大御神は、岩屋の戸をさらに開けました。その瞬間、岩屋の陰に隠れていた力持ちのアメノタジカラオノミコト(天手力男神)が天照大御神を外に引っ張り出しました。
こうして世界には光が戻り、地上にうごめいていた悪霊も消え、天変地異も収まったということです。
天照大御神の誕生にまつわる伝説も、天岩屋伝説も、どちらもユーラシア大陸北東部や東南アジアの神話がルーツだといわれています。日本神話との共通点や相違点を調べてみるのも面白そうです。
◎参考書籍
太陽と月の伝説
著者:森村宗冬
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