テレビでも取り上げられるなど、最近話題のバナナジュース。誰でも知っている身近な食材ですが、バナナには意外と知られていないエピソードがたくさんあります。
今回はバナナジュースを飲む時に知っておきたい、バナナにまつわるウンチクをご紹介しましょう。
目次
バナナジュースを飲む前に知りたい! バナナの基本情報
まずは案外知られていないバナナについての基本情報をまとめましょう。
*知っているようで案外知らない?! バナナ基本情報*
・バショウ科の常緑多年草
・原産地:マレー半島、フィリピン
・栽培品種:生食用、料理用など
・花言葉:なし
・誕生花:なし
・原産地:マレー半島、フィリピン
・栽培品種:生食用、料理用など
・花言葉:なし
・誕生花:なし
バナナというと木の上に緑や黄色の房がたくさんついているイメージですが、実はバナナは樹木ではなく、多年草です。樹木のようにそびえている部分は高く伸びた茎で、「仮茎(偽茎)」と呼ばれています。
ひとくちにバナナといっても、生食に適した品種、料理に向く品種など様々なタイプがあります。代表的なものをご紹介しましょう。
①生食用:ジャイアントキャベンディッシュ、セニョリータ(モンキーバナナ)、モラード、ラツンダン
→熟すと甘味が出るので、生食や菓子作りに向いている。
②料理用:ツンドク、カルダバ、リンキッド
→料理用はでんぷんが豊富で芋に近い品種。
→熟すと甘味が出るので、生食や菓子作りに向いている。
②料理用:ツンドク、カルダバ、リンキッド
→料理用はでんぷんが豊富で芋に近い品種。
ちなみに、上記のような食用のバナナには種がありませんが、どうやって増えるかご存じですか? 株の下の方に出てくる「吸芽」と呼ばれる新芽を切り取り土に埋めると、新しくバナナの苗が育つのです。
では、バナナはどこからどうやって広まったのでしょう?
バナナの原産地はマレー半島やフィリピン一帯で、そこからインド、アフリカ大陸、マダガスカル島へと広まった後、15世紀前半には西アフリカまで到達しました。その後、移民によってブラジルやメキシコなどにももたらされます。
ヨーロッパへと伝えられたのが比較的近年だったため、バナナに花言葉は無く、誕生花にもバナナは含まれていません(花言葉や誕生花はヨーロッパの神話やキリスト教などに基づく風習です)。
バナナジュースはリンゴジュース?! バナナの語源
その昔、バナナは「バナナ」ではなく、「リンゴ」や「イチジク」と呼ばれていた――そんな、頭が混乱しそうな話があります。
「バナナ(Banana)」という名前は元々、西アフリカ近辺で呼ばれていた呼び名です。
1534年頃、ポルトガル人の医師は現地でこの植物を発見し、さらにインドでも同じ種類の植物を見つけました。医師は帰国後、自身が発見したこの植物を「バナナ」と名付け、書物で発表します。こうしてバナナという名前が広まることとなりました。
ではそれ以前までバナナは何という名だったかというと、ヨーロッパでは「楽園のリンゴ」「アダムのイチジク」などと呼んでいたといいます。
また、バナナの学名”Musa x Paradisiaca”または”Musa x sapientu”は「楽園の実」「知恵の実」という意味です。18世紀中頃、植物学者リンネによって名付けられたこの学名は、『旧約聖書』の「創世記」に由来します。イヴを誘惑した蛇がバナナの陰に隠れていたという伝説があるのです。
バナナジュースのお供に読みたい「石とバナナ」
東南アジアなどの熱帯地域には、人間とバナナが登場する神話があります。その中から、インドネシアからニューギニアにかけて伝わる「石とバナナ」のお話をご紹介しましょう。
太古の昔、天と地の距離が今よりもずっと近かった頃のお話です。
神によって作られた1組の夫婦が、神が天から縄にくくって下ろす贈り物を頼りに暮らしていました。
ある日、神は石を縄でくくって地上に下ろします。夫婦は困って、
「神様、せっかく石をくださいましたが、私たちには食べることができません。何か他のものはありませんか?」
と尋ねました。そこで神が石を引き上げ、代わりにバナナを下ろすと、夫婦は大喜びでバナナを食べました。
すると、天から神のこんな声が聞こえてくるではありませんか。
「これからお前たちの命は、子どもができるとすぐに親の木が死んでしまうバナナのように短く儚いものとなるだろう。石を受け取っていれば、今まで通り何も変わらず永遠に命が続いていたというのに」
こうして人間は永遠の命を失ってしまったということです。
バナナジュースのお供に読みたい『古事記』の話
バナナが登場する伝承は熱帯地域だけのものではありません。日本にも、バナナではないかと推測できる果実が登場するお話があります。
『古事記』第11代垂仁天皇の伝記によると、垂仁天皇はタヂマモリ(多遅真毛里)という人物を海の向こうの常世の国に遣わして、「非時香菓(ときじくのかくのこのみ)」を探し求めさせたといいます。常世の国はこの世の魂全てが集まる豊かな場所で、そこに実る非時香菓は不老長寿の霊薬だと信じられていたのです。
タヂマモリは海を越えはるかな旅の果てに、非時香菓を見つけることに成功し、葉を付けたものとつけていないものを8つずつ持ち帰ります。しかし、彼が旅に出ている間に垂仁天皇は崩御してしまっていました。
タヂマモリはたいそう悲しみ、持ち帰った実の半分を皇后に献上すると、残りの半分を天皇の御陵の前に供えて激しく泣き叫んだといいます。そうして少しした後に亡くなったということです。
この伝承でタヂマモリが持ち帰った「非時香菓」は、一般には橘の実だとされています。しかしそうだとすると、次のような点が疑問として残ります。
『古事記』では非時香菓を「縵八縵、矛八矛(かずらが8つ、矛が8つ)」「縵四縵、矛四矛(かずらが4つ、矛が4つ)」と描写しています。かずらや矛のように細長く、房がいくつも枝分かれして上や下を向いている果実といえば、橘よりもバナナがぴったりではないでしょうか。
「非時香菓」は夏に実り、秋冬になっても香味が変わらないとされています。
ところが橘は晩秋から初冬にかけて熟れる果実です。これではつじつまが合いません。
こうした点から、「非時香菓」は橘ではなく、実はバナナだったのではないかと推測できます。『古事記』に書かれた遥かな昔に日本にバナナが持ち込まれていたとすると、何とも夢のあるお話ではありませんか。
バナナにまつわる様々なウンチクをご紹介しました。バナナジュースのお供にお楽しみいただけたら幸いです。
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◇参考書籍
樹木の伝説
著者:秦 寛博