作者:井戸正善
パンタポルタ連載小説『よろず道場のお師匠さん』(著:井戸正善)に登場するエルフの少女ルリによる、聞きかじり防具コラムが連載スタート!
師匠から聞きかじった武器の知識を丁寧にわかりやすく教えてくれます。
隔週木曜日更新、全10回予定!
頭部を守る重要性は、今も昔も変わらない。
――防具の歴史の中で、兜は鎧と同じく旧石器時代にはすでに登場しています。
弓矢の登場に合わせて、前方だけでなく上方からの攻撃に耐える必要が出てきたためと考えられています。
古代は頭に毛皮などを被り、相手を威嚇したり、狩りにおいて動物に擬態したりといったことが目的でしたが、やがて防御を主目的として青銅など金属が使われるようになります。
――人間の目は通常、左右180度以上が見えるようになっています。
真横や上方などは普段意識していませんが、何かが動いていたり、違和感のある色が見えるなどした場合には気付けるようになっているのです。
耳をふさいでしまう点も加えると、視力聴力共にやや不便となります。
――もちろん、防御力向上の為です。
隙間が大きければ大きい程、全体の強度は下がってしまいます。可能な限り単純で数が少ない材料で組み合わせる構造の方が頑丈だと考えられていたのです。
バレルヘルムという、円柱型をしたバケツに隙間を空けてそのまま被ったようなデザインの兜もありましたが、基本的には頭頂部が丸いドーム型か、尖ったデザインのものが長く主流の座にありました。
――そして全身を覆う金属鎧の技術が進歩すると、バシネットという兜が登場します。
顔面を覆う部分が可動式になっていて、上に跳ね上げることで顔を露出することができます。
一般的に西洋の金属鎧に付属する兜でイメージされるものはこれではないでしょうか。
――戦場で相手が何者かを確認することは容易ではありません。
特徴的な鎧を着ていたり、何かしらのバナー(旗印)を身に着けていたり、盾に紋章があるなど、見てわかるようになっていれば別ですが、混乱している時にはすぐに顔を見せて味方であるとアピールする必要がありました。
――兜飾りが特徴的だったのは、戦国時代の日本です。
“立物(たてもの)”と呼ばれる飾りは時に兜本体の数倍の大きさになり、家名や個人を示すための重要なアイコンとなったのです。
立物は衝撃を受けると簡単に外れるようになっており、戦闘中の障害にならないような工夫もされていました。
――盾の項でも述べましたが、前面に盾を構えた状態では前が見えません。のぞき穴があるものもありますが、防御力の面で劣ってしまいます。
盾を構えた状態であっても、相手がどこにいるかを確認しながら攻撃するのが一般的で、当然その時には頭を出して覗き見ることになるわけです。
これは現代戦でも同じで、射撃においてはなるべく頭を出している時間を減らしつつも、顔を出して狙いを定める必要があります。
――現代においても、顔面を守るための装備はあります。
つるりとしたマスクで、目の部分だけを空けたデザインのものや、ゴーグル(アイウェアとも)と同時に使うフェイスガードなどです。
中でもゴーグルは近代になって初めて登場するもので、戦場での土埃や水などを避けて視界を確保する重要な装備になりました。
透明で頑丈な素材が開発されたからこその装備です。
――頭の大きさに合わせる必要がある兜は、プレートメイルと同様に特注品でした。
目や耳の位置、戦場で使うのか馬上試合で使うのか、はたまた飾りかパレード用か。目的に合わせたデザインもあり、仕様は多岐にわたります。
騎士達が自分の財力や地位を誇示する道具であったのも、鎧と同じですね。
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「ルリちゃんの聞きかじり武器講座」 |
◇キャラクター紹介
【ルリ】
道場主である斎舟の一番弟子を自負するエルフの少女。
斎舟が居ない間は道場の留守を任されている。
生活のほとんどを稽古と研究に費やしているという努力家な一面も。
道場主である斎舟の一番弟子を自負するエルフの少女。
斎舟が居ない間は道場の留守を任されている。
生活のほとんどを稽古と研究に費やしているという努力家な一面も。
【熊公】
本名はイービルベアードといい、熊獣人に魔族の血が混じった大男。
“モノ溜まり”と呼ばれる場所に流れ着く、異世界からの漂流物を回収
して売買することを生業としている。
本名はイービルベアードといい、熊獣人に魔族の血が混じった大男。
“モノ溜まり”と呼ばれる場所に流れ着く、異世界からの漂流物を回収
して売買することを生業としている。
◇参考書籍
『図解 防具の歴史』
著者:高平鳴海
イラスト:福地貴子
>書籍はこちら
*作者紹介*
井戸正善(いどまさよし)。HJノベルスより『呼び出された殺戮者』が1~9巻まで発売中! コミックウォーカー及びニコニコ静画にて、コミカライズ版も掲載。また、Kラノベブックスより『王族に転生したから暴力を使ってでも専制政治を守り抜く! 』が発売中。佐賀市のエアガン飲み屋『NEST』の店主さんでもある。
井戸正善(いどまさよし)。HJノベルスより『呼び出された殺戮者』が1~9巻まで発売中! コミックウォーカー及びニコニコ静画にて、コミカライズ版も掲載。また、Kラノベブックスより『王族に転生したから暴力を使ってでも専制政治を守り抜く! 』が発売中。佐賀市のエアガン飲み屋『NEST』の店主さんでもある。