ラノベ好きVtuberとして活躍する本山らのさんによる、ファンタジー小説おすすめコラム「本山らのとファンタジー小説を読みませんか?」
小さい頃から本が好きだという本山らのさんが、テーマに沿ったお気に入りのファンタジー小説を紹介してくれます。第5回のテーマは「上下巻構成」です。
書き手:本山らの
皆さんは、上下巻構成のライトノベルを読んだことはありますか?
ことライトノベルにおいては、シリーズ化が前提だったり、単巻で完結したりする作品が主流であるように見受けられます。
しかし、時たま刊行される上下巻完結の作品に見られる構成の妙! その魅力をお伝えしたく、今回はそこにフォーカスして作品紹介をして参りたいと思います! もちろん、このコラムでご紹介するわけですので、ジャンルはファンタジー限定ですよ?
『滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた』『死にゆく騎士と、 ただしい世界の壊しかた』
まずは1作目。『滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた』『死にゆく騎士と、 ただしい世界の壊しかた』の2冊です。
上下構成と言いつつ、ナンバリングがないじゃないか! と思われる方もいらっしゃるかと思います。鋭い。この2冊は同時に発売され、世界観や登場人物を共有しつつも、どちらの巻から読んでも良い、という特殊な構成をしているのです。
これは、滅びが運命づけられた惑星を救う天命を背負わされた《神子》の少女たちと、彼女らを救いたいと足掻く騎士の物語。「絶望」と「希望」をそれぞれ描き、対になる2冊で語られた作品です。
滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた (Novel 0) |
『滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた』は時系列で言うと過去のお話。
主人公ラミと幼馴染のエイネ。神子に選ばれたエイネは、天命を達成するため、ラミと共に試練の旅に出ます。
しかし、天命の達成は神子の命と引き替えに成されるものであるというのが通例。
それでも、なんとか生きて天命を達成しようと試みますが……エイネの運命は……。
これは、彼女が命を燃やし、世界と大切な人を守るお話です。
死にゆく騎士と、ただしい世界の壊しかた (Novel 0) |
そして、『死にゆく騎士と、 ただしい世界の壊しかた』は、最も大切な少女を喪った世界で、エイネの意志を継いで世界を救わんとするラミの姿が描かれます。元気で明るく、技術より力押しで戦う神子の少女キトリーはラミに弟子入りを志願し、師弟の2人旅と相成ります。こちらは、新たな神子とともに、世界を救うために歩み出す物語です。
文字通り命を燃やした炎を用いて術式を操るファンタジー設定も、巧みに描かれています。
『滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた』のヒロイン・エイネの最期の微笑みには、心を揺さぶられました。『死にゆく騎士と、 ただしい世界の壊しかた』のヒロイン・キトリーの決意には、胸が熱くなりました。
希望から読むか、絶望から読むか。対になった2冊のどちらから読み始めるか迷うのもまた一興です。
個人的にはストーリー順である『死にゆく騎士と、 ただしい世界の壊しかた』→『滅びゆく世界と、間違えた彼女の救いかた』の順で読むのが良いかも……? いや、時系列順も……迷いますね。
世界と大切な人のどちらを取るか? という問いの答えを描く愛の物語。特殊な2巻構成の妙も光る作品です。
『滅びの季節に《花》と《獣》は』
続いては、上下巻のナンバリングがされたこの作品、『滅びの季節に《花》と《獣》は』も外せません。
滅びの季節に《花》と《獣》は 〈上〉 (電撃文庫) |
滅びゆく街で紡がれる幻想的な恋愛譚。
ヒロイン・クロアは植物を創る奇蹟を操る奴隷の少女。奇蹟を使うことが出来る代わりに、体の成長が止まってしまったものの、家族とともに街外れでひっそりと暮らす天真爛漫でピュアなかわいい女の子です。
万能の奇蹟を操り外敵から街を守る《大獣》という種族のうち、《貪食の君》と呼ばれる男に召し抱えられたクロアは、彼と共同生活を送り、絆を育んでいくのですが……。
外敵の襲撃によって滅亡に瀕する街を救うため、命がけで戦う2人の運命やいかに……!
日常生活から宗教・戦まで、緻密に構築されたファンタジックな世界観設定と丁寧に描写された淡い初恋や種族の壁を超えた愛が素晴らしい作品。詩的な文章とそれにマッチした清廉なイラストも良いのですよね。
滅びの季節に《花》と《獣》は 〈下〉 (電撃文庫) |
児童文学のようなあたたかさと、少女漫画のような胸のときめきも感じられる一作で、私のお気に入りです。普段ライトノベルにはあまり手を出さないような女性の方にもおすすめできる読み味の作品です。
☆☆☆
今回のご紹介作はどちらも、2巻完結だからこそ描ける対比構造の美しさが感じられる作品です。ファンタジージャンル以外にも、上下巻構成のライトノベルには多くの名作がありますよね。そもそも上下巻完結のライトノベルがあるなんて知らなかった! という方はぜひ、この機会に触れてみるのも良いのではないでしょうか?
巻数が少なく、綺麗に完結しているということで、気軽に手に取ることができますし!
それでは、今回はこの辺で。さよならの~!
本山らの(@Motoyama_Rano)
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第2回「本山らのと、女性作家さんが綴るファンタジーを読みませんか?」
第3回「本山らのと、剣で戦うだけじゃない! 個性派ファンタジーを読みませんか?」
第4回「 本山らのと、小説の中で吸血鬼と出会ってみませんか?」