素敵なレストラン情報や美味しいレシピ、食にまつわる楽しいエッセイ。現代社会にはグルメな情報があふれていますが、実は中世~近代ヨーロッパでもグルメな書物がいくつか著されています。
そうはいってもなかなか全てを読むのは大変です。そこで今回は料理にまつわる書物を「読んだつもりで」レビューします。
目次
中世~近代の有名料理書3選!
ヨーロッパでは、王侯貴族お抱えの料理人たちが主君の命令を受け料理書を残しています。こうした料理書は主君の権威向上に役立ちました。しかし材料をどのくらい使うのかなどの書き方はあいまいで、当時の料理を再現するための手がかりにはあまり向きません。
一方、他の地域では、学者や医者、役人などの美食家が料理書を著しています。こちらは正確な材料の分量が記載されており、どんな料理だったのか推測する時にも役立ちます。
タイユヴァン/著・1390年頃
【内容紹介】
著者は14歳で宮廷厨房に入り、フィリップ6世など3代のフランス王に仕えた伝説的な料理人。本書は中世フランス料理を知る手がかりとなる一冊だ。
【妄想レビュー】
この本を読めば中世フランスの宮廷料理が再現できる――と言いたいところだが、材料の分量や手順などの書き方が大ざっぱで、お世辞にもわかりやすいとはいえない。味より見た目のインパクト重視、スパイスを大量に使い、肉は塊のまま提供されるといった当時の料理の傾向を知ることはできる。
この本を読めば中世フランスの宮廷料理が再現できる――と言いたいところだが、材料の分量や手順などの書き方が大ざっぱで、お世辞にもわかりやすいとはいえない。味より見た目のインパクト重視、スパイスを大量に使い、肉は塊のまま提供されるといった当時の料理の傾向を知ることはできる。
アントナン・カレーム/著・1833~34年
【内容紹介】
「国王のシェフかつシェフの帝王」と呼ばれた天才シェフが記した、フランス料理レシピの百科事典。著者はフランス料理の基本となる4種のソースやコック帽を発明したことでも知られている。
【妄想レビュー】
著者は貧しい家に生まれ、厳しい修業を経てウィーン会議など政治の重要局面を彩る料理を任されるまでに出世した努力と才能の人。だがこの本では、自身の研究したレシピをもったいぶって隠したりせず丁寧にまとめあげており、フランス料理に対する並々ならぬ情熱が伝わってくる。
著者は貧しい家に生まれ、厳しい修業を経てウィーン会議など政治の重要局面を彩る料理を任されるまでに出世した努力と才能の人。だがこの本では、自身の研究したレシピをもったいぶって隠したりせず丁寧にまとめあげており、フランス料理に対する並々ならぬ情熱が伝わってくる。
イザベラ・ビートン/著・1861年
【内容紹介】
雑誌『英国夫人の家庭雑誌』での連載をまとめたもので、食材ごとの説明やレシピ、マナー、家庭の医学から法律にいたるまで、中流階級の婦人に向けた家庭生活に役立つ内容が掲載されている。
【妄想レビュー】
現代の主婦向け雑誌と比べるととてもお硬い内容だ。だが売れ行き好調だったということは、当時としては画期的だったのだろう。
ちなみに、日本でも明治9年に『家内心得草:一名保家法および附録』という題で翻訳されているので、気になる方は読んでみてもいいかも。
現代の主婦向け雑誌と比べるととてもお硬い内容だ。だが売れ行き好調だったということは、当時としては画期的だったのだろう。
ちなみに、日本でも明治9年に『家内心得草:一名保家法および附録』という題で翻訳されているので、気になる方は読んでみてもいいかも。
◎関連記事
メイドの職種③厳しかった料理の世界 料理人と台所女中
食のエッセイ・レストランガイド
続いてレビューするのは、食に関するエッセイやガイドブックです。当時も大変人気があり、中にはベストセラーになったものもありました。
バルトロメオ・サッキ/著・1475年
【内容紹介】
ルネサンス期の美食家がさまざまな美食の伝承をまとめた本。古典文学研究書、マナー、医学書などの要素も含まれている。
【妄想レビュー】
当時の教会は粗食や節制といったキリスト教の教義に合わないとして美食本を好まなかったが、この本は美食だけでなく健康や医学などの内容も含まれるため、教会の批判を免れベストセラーになったという。グルメだけでなく、マナーなど当時の人々の価値観を知りたい時におすすめだ。
当時の教会は粗食や節制といったキリスト教の教義に合わないとして美食本を好まなかったが、この本は美食だけでなく健康や医学などの内容も含まれるため、教会の批判を免れベストセラーになったという。グルメだけでなく、マナーなど当時の人々の価値観を知りたい時におすすめだ。
サヴァラン/著・1825年
【内容紹介】
フランスの美食家が食をテーマに記したエッセイで、当時のさまざまな文化に触れることができる。死の2ヶ月前に出版された。
【妄想レビュー】
世界的に評価が高いだけあり、単なるエッセイではなく、食を通して人生を見つめることができる哲学書のような一冊だ。邦訳も出ているのでグルメ好きな方はぜひ。
世界的に評価が高いだけあり、単なるエッセイではなく、食を通して人生を見つめることができる哲学書のような一冊だ。邦訳も出ているのでグルメ好きな方はぜひ。
アレクサンドル・グリモ・ドゥ・ラ・レニエール/著
【内容紹介】
著者率いる美食サークル「味覚鑑定委員会」が発表したガイドブックで、レストランや食材の生産者が紹介されている。
【妄想レビュー】
現代のいわゆる「レストラン」はフランス革命後のフランスで誕生した。その時流に乗り、本書ではレストランの評価がまとめられている。さらに食材など食事に関連する周辺情報も取り扱っているので、読み物としても興味深い。
ちなみに、現代の『ミシュランガイド』のようなレストランガイド本には『ゴー&ミヨー』『食通のためのアトラス』などがある。あれこれ読み比べてみるのも面白そうだ。
現代のいわゆる「レストラン」はフランス革命後のフランスで誕生した。その時流に乗り、本書ではレストランの評価がまとめられている。さらに食材など食事に関連する周辺情報も取り扱っているので、読み物としても興味深い。
ちなみに、現代の『ミシュランガイド』のようなレストランガイド本には『ゴー&ミヨー』『食通のためのアトラス』などがある。あれこれ読み比べてみるのも面白そうだ。
読んでみたい本はありましたか?
グルメに関する書物は他にも様々あり、とても全てはご紹介できないほどです。中には翻訳されているものもありますので、気になる本があればぜひ手に取ってみてください。
◎参考書籍
『図解 食の歴史』
著:高平鳴海