ジンはイスラム教徒?! イスラム教と精霊ジンの関係

「アラジンと魔法のランプ」でランプをこすると現れ、願い事を叶えてくれる不思議な精霊・ジン。おとぎ話やディズニー映画のイメージが強いですが、イスラム世界で信じられている本来のジンは少し違った姿をしているようです。

今回はイスラム教の世界でジンがどのような存在なのか、ご紹介しましょう。

ジンって何者？

まず、そもそも「ジン」とは何者なのでしょう？

• イスラム世界でひろく信じられている精霊。
• 体は蒸気や火炎でできている。
• 変幻自在。いつでもどこにでも現れる。
• 力が強く、いたずら好きで意地が悪い。

ジンはイスラム世界でひろく信じられている精霊です。アーダム(アダム)が土から作られるよりも2千年以上前に「煙なき炎」からつくられました。

ジンの体は蒸気や火炎でできています。普段は人の目には見えませんが、変幻自在で、人間の前に現れる時はロバやラクダなどの動物、人間、巨人、砂の竜巻など、実に多様な姿に変身することができます。

また、彼らは人間と同じように理性や意思を持っています。人間と違うのは、変身できることと、腕力や魔力に優れ、人間に憑りついたり、人を猿や犬に変えてしまう能力を持っているという点です。

ジンは本来、この世の果てである「カーフの山なみ」に住んでいますが、人間に興味があり、いたずらをしようと度々人間界にやって来ます。人間界では公衆浴場(ハンマーム)や雨の中、かまど、市場や井戸など、水や火、物と物の境界にあたる場所によく現れます。時にはモスクに現れたこともありました。


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イスラム教徒のジン

イスラム教では、ジンの中にはイスラム教徒のものと、そうでないものがいるといいます。一体どういうことでしょう？

その昔、イスラム教が成立する前の古代アラビアでは、ジンはそれぞれの土地と結びついた精霊としてアラブ人たちに崇められていました。
やがてムハンマドの時代になると、ジンは土地とは関係なく、どこにでも現れるものだと考えられるようになります。また、ムハンマドがジンの存在を否定せず、コーランにも「ジン」という表題の章があるため、イスラム教の中でジンの存在は確かなものだとみなされるようになりました。

コーランには、ジンの一群がイスラム教徒となった様子が描かれています。その内容を簡単にご紹介しましょう。

ジンの中には、ムハンマドの読むコーランを聞いてイスラム教徒となったものがいる一方、ムハンマドの教えや最後の審判の話などデタラメだと考えるものたちもいました。そこで彼らは天使たちが行う天上の御前会議を盗み聞きすることにします。もし会議の場で天使たちが最後の審判の話をしていれば、ムハンマドの話は信じるに値するというわけです。

ところが天は恐ろしい天使とぎらぎら光る星でいっぱいだったため、ジンは主のみこころがわからないまま引き返さざるを得ませんでした。こうして、ジンには人間と同様にイスラム教徒とそうでないものがいるようになったのです。

このような一節があることから、イスラムの人々は、ジンの中にも自分たちと同じようにイスラム教徒のものがいるのだと信じるようになります。最後の審判の時には、ジンも人間と同様に天国へ行くものと地獄へ落ちるものがいるといわれています。

悪性のジンに出会ったら？

人間に悪事を働く者とそうでない者がいるように、ジンにも善良なジンと悪性なジンがいるといいます。悪性のジンは次のような5段階に分類できます。






ひとくちに悪性のジンといってもその性質は様々です。人間を道に迷わせて沙漠に置き去りにするもの、人間に憑りついてうわ言を喋らせるもの、船を難破させて船乗りを食ってしまうものなど、数えればきりがありません。

では、悪性のジンに出会ってしまったらどうすればよいのでしょう？
悪性のジンはコーランを恐れるといわれています。見せるだけでも効果がある他、コーランの朗唱を聞くと逃げてしまうというのです。
また、ジンは塩、鉄、シトロン、タール、火薬、ザクロ(天国に生えている木)などを嫌うといいます。悪性のジンに出くわしてしまったら、こうしたものを使えば追い払うことができるかもしれません。


おとぎ話や映画のキャラクターとはまた少し違った姿をした、イスラム教のジン。イスラムの国々を訪れる時は、もしかするとジンに出会うことがあるかもしれませんね。


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