『ギルガメシュ叙事詩』で知られるシュメールの王ギルガメシュや、「ハンムラビ法典」で有名なハンムラビ王。古代メソポタミアでは魅力的な王たちが多数活躍していましたが、彼らがどんな装飾品を身に着けていたかご存じの方は多くないのではないでしょうか。
今回は古代メソポタミアの装飾品の特徴や歴史を分かりやすくご紹介します。
目次
繊細で華麗なシュメールの装飾品
古代メソポタミアの装飾品は、シュメール、バビロニア、アッシリアの各時代によって特徴に違いがみられます。まずはシュメールの装飾品からご紹介しましょう。
シュメールは紀元前3500年頃、南メソポタミアに誕生します。シュメールの人々はインダスやエジプトなどと交易を行い、富や資源を得て様々な装飾品を発展させていきました。
シュメールの装飾品の特徴
・素材:金を中心に、銀、銅、ヒ素青銅(ヒ素と銅の合金)など。
・技法:打ち出し、彫金など。
・特徴:繊細で華麗。
・モチーフ:植物が多い。その他に動物、天体、幾何学模様など。
シュメールの遺跡から発掘された装飾品は、金などでできたものが多く、繊細で華麗な作りが特徴です。植物を中心に、動物や天体、幾何学模様などがモチーフに使われています。動物のモチーフの中には、双獣文(そうじゅうもん。向かい合った動物のこと)や有翼獣などがありました。
大型で重厚なアッシリアの装飾品
シュメールはその後、異民族の侵攻により崩壊してしまいます。南メソポタミアの地にはアムル人によってバビロニアが打ち建てられましたが、シュメールの文化が受け継がれたため、装飾品に大きな変化はみられません。
やがて時代はバビロニアからアッシリアへと変化します。アッシリアはメソポタミア全土を支配し、支配した民族の技術や文化を吸収しますが、シュメールの頃とは少し違う装飾品が好まれるようになりました。
アッシリアの装飾品の特徴
・素材:金属の他、貴石・半貴石といった宝石類。
・技法:粒金細工などの技術も登場。
・特徴:シュメールの頃よりも大型で重厚。
・モチーフ:図案化された記号的な模様、幾何学模様、動物のモチーフ。
アッシリアでは、金属の他に貴石や半貴石といった宝石類が多く使われはじめます。また作りも大型化し、重厚なものが好まれるようになりました。
シュメールの頃から引き続き動物がモチーフとして使われている他、記号的な模様や幾何学模様も用いられるようになります。たとえば、花を円形にディフォルメした「
頭飾りと耳飾り
ここからは具体的に、古代メソポタミアでどんな装飾品が使われていたのかご紹介しましょう。
シュメール時代のメスカラムサ王と妃プ・アビの墓所からは、王とその殉死者たちが身に着けていた装飾品が多数見つかっています。たとえば男性用の金の額当てや金のチェーンといった品々です。
この他、シュメール時代の男性は縁が広く頭頂部が丸い帽子を、アッシリア時代には布や革でできた冠を被っていました。
一方、女性はかつらを金のリボンや金銀の輪で固定し、金の装飾板のついた頭飾りを巻き、後頭部にはかんざしをつけています。かんざしの先端には花や星があしらわれていました。
シュメールの時代、男性の耳飾りは金の針金を螺旋状に巻いた単純なものでした。しかしバビロニアやアッシリアの時代になると大型化し、権威の象徴として身に着けられるようになります。
首飾り、腕輪、指輪
続いて首飾り、腕輪、指輪もみていきましょう。
首飾りにも金や宝石類がふんだんにあしらわれています。バビロニアやアッシリアの時代になると、粒金細工などの新しい技法も盛んに用いられるようになりました。
腕輪は当初、ビーズを連ねたり、金の針金を巻いただけといった単純なものが中心でしたが、時代が下ると凝った作りのものが増えていきます。アッシリア時代の王や神々の神像には、円花文のついたブレスレット等を見ることができます。
シュメール時代から、指輪は凝ったデザインのものが作られていたようです。さらにアッシリアの頃になると、指輪にも円花文が描かれるようになりました。
古代メソポタミアの人々が身に着けていたという様々な装飾品。ギルガメシュをはじめとする歴史上の人物がどのような色・形の装飾品を好んだのか想像するのも楽しそうですね。
◎関連記事
古代ギリシア、古代ローマの装飾品の違いに迫る!
◎参考書籍(Kindle)
『図解 装飾品』著者:池上 良太