先日公開された実写のディズニー映画『アラジン』、もう見に行きましたか? 今ではすっかりディズニーのイメージが強いアラジンですが、実は原作の『アラジンと魔法のランプ』とは内容が一部異なっています。
そこで今回は原作の内容を簡単に振り返りつつ、魔法のランプやランプの精とは何者なのか考察します。
目次
『アラジンと魔法のランプ』の物語
まずは『アラジンと魔法のランプ』がどんな物語なのか、簡単にご紹介しましょう。
【ざっくりまとめる!『アラジンと魔法のランプ』】
- ①何でも願いを叶えてくれる魔法のランプと指輪を手に入れたアラジン、大金持ちになり姫と結婚する。
- ②元々ランプを狙っていた魔術師に、ランプと姫を宮殿ごと奪われてしまう。
- ③アラジン、指輪の魔神の力を借りて姫とランプを取り戻す。
主人公のアラジンは15歳の不良少年。中国のとある街に母とふたりで暮らしています。
ある時、アラジンはひとりのマグリブ人(モロッコ人)魔術師にだまされ、洞窟に誘い出されてしまいます。
だまされたと気付いた時にはあとの祭り。万が一の時のために魔術師の指輪を渡されると、魔術師のために究極の魔力を秘めた「魔法のランプ」を取りに洞窟の奥へと行かされてしまいます。
アラジンは無事にランプを見つけますが、魔術師に素直に渡そうとしなかったため、洞窟に閉じ込められてしまいます。アラジンが困っていると、魔術師の指輪から魔神が現れ、彼を家まで連れ帰ってくれました。
アラジンの母は、息子が持ち帰った古ぼけた銅のランプを売ろうと、ランプを灰で磨きます。すると今度はランプから恐ろしい魔神が現れ、なんでも願いを叶えてくれるというではありませんか。
ランプの魔神の強力な力で、アラジンはたちまち大金持ちになりました。そればかりか、スルタン(帝王)のひとり娘・ブドゥール姫と結婚することになったのです。
一方、この話を聞きつけた魔術師は面白くありません。彼はランプを売る行商人に変装すると、アラジンが留守の隙に宮殿を訪れ、ブドゥール姫をだまして魔法のランプを奪い取ってしまいました。
魔術師はランプの力で姫を宮殿ごとアフリカに運び去ってしまいます。アラジンは姫を探す旅に出ると、指輪の魔神の力を借りてアフリカにたどり着き、魔術師を薬で眠らせてランプを取り戻すことに成功しました。
こうしてアラジンは再び姫と幸せに暮らし始めます。一方、捕らえられた魔術師はスルタンに処刑されてしまったということです。
魔法のランプや指輪とは?
『アラジンと魔法のランプ』に登場するランプや指輪はどんな形状をしているのでしょう? そしてそこから登場する魔神は一体何者でしょうか?
まず魔法のランプについて、物語の中では「古ぼけた銅のランプ」とだけ記されています。他に描写がないということは、この魔法のランプはごくありふれた、どこにでもあるような形のランプだといえそうです。
次に指輪ですが、作中にはどんな指輪かという明確な描写はありません。それどころかアラジンはしばしば、自分が指輪をはめていることを忘れてすらいます。ということは、こちらもとりたてて特徴のない指輪なのでしょう。
ランプと指輪を比べると、指輪の魔神はアラジン自身に関わる願いしか叶えられないのに対し、ランプの魔神にはそうした制限はなく、願いをなんでも叶えてくれています。このことから、指輪よりもランプの方が格上だということが推測できます。
だからこそ、物語の中の魔術師はランプを手に入れようと躍起になったのでしょう。
ランプの魔神の正体を探る
最後に、指輪とランプから出てきた魔神について考察します。
物語の中で指輪やランプから出てきた魔神の正体は、「イフリート」と呼ばれる一種の精霊です。
アラビアではイスラム教が広まる以前から、「ジン」と呼ばれる炎から作られた精霊の存在が信じられていました。
イフリートはジンの中でも特に人間に害をなす凶悪なものを指す称号で、さらに狂暴なものは「マリード」と呼ばれます。ランプから出てきた魔神は強力な魔力を備えていましたので、もしかするとマリード級だったのかもしれません(ジンやイフリートについてもっと詳しく知りたい方は「ジンはイスラム教徒?! イスラム教と精霊ジンの関係」をご参照ください)。
でもなぜ人間に害をなすはずのイフリートが、アラジンの願いを叶えていたのでしょう?
イフリートは神に反抗する悪しき存在のため、罰として指輪やランプに封じられ、所有者に奉仕するよう命じられていた可能性が考えられます。
実際、物語に登場するランプは銅製ですが、アラビアでは銅(青銅、真鍮)には悪しきジンを支配する力があると信じられていました。イフリートはランプの銅の力で閉じ込められ、支配されてしまっていたというわけです。
あれこれ考察すればするほど奥が深い『アラジンと魔法のランプ』。映画を楽しんだ後は、ぜひ原作も手に取ってみてください。面白いですよ!
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