自分の隠された性格や将来、好きな人との相性などを占ってみたことはありませんか? 西洋占星術やタロット占いなどと並ぶ占術のひとつに、「カバラ数秘術」があります。西暦の生年月日などを足し上げて占うというものです。
このカバラ数秘術、実は古くから存在した歴史ある占術だといわれています。今回はカバラ数秘術の壮大な成り立ちをご紹介しましょう。
目次
カバラ数秘術ってどんな占い?
まずはそもそも、カバラ数秘術とはどんな占術なのでしょう?
【「カバラ数秘術」とは?】
- 「カバラ」=ユダヤ教の神秘的側面を司る教えのこと。
- 「数秘術」=数を研究することで世界の神秘を明らかにしようという学問。
- →「カバラ数秘術」=1~9、11、22の計11種類の数字から、人がよりよく生きるためのヒントを導き出す占い。
カバラ数秘術の「カバラ」とは、ヘブライ語で「伝承」を意味する言葉で、ユダヤ教の神秘的側面を司る教えのことをいいます。
一方、「数秘術」は数に関する学問です。数秘術では1、2、3……のような数そのものに世界の神秘が隠されていると考え、数を研究することで世界の神秘を明らかにしようという試みが行われていました。
カバラ数秘術は、このカバラの思想と数秘術とが結びついて生まれた占いです。
この占いではまず、西暦の生年月日を定められた手順で足し上げ、1~9までの一桁の数字、または特別に強い数である11、22に置き換えます。さらに名前も数字に変換したり、生まれた日の曜日を参考にしたりして、その人がどうすればよりよく生きられるのかを明らかにしようとするのです。
でも、カバラの思想とは具体的にどんな内容なのでしょう?
また、名前を数字に変換するとは、どういうことでしょうか?
次項からもう少し詳しくご紹介しましょう。
カバラ思想ってどんな思想?
カバラとは、ユダヤ教の神秘的側面を司る教えであり、その思想は3~5世紀頃に書かれた『セーフェル・イェーツィラー』(『創造の書』)にまとめられています。
それによると、カバラ信者たちは神の意識に近づくことを目標に、「生命の樹」(セフィロトの樹)という思想を用いて修行に励んだといいます。
カバラの奥義でもある「生命の樹」とは、唯一の神が創造した宇宙の形成過程や構成要素を表す象徴のようなものです。
生命の樹は1~10の数字を割り振られた10個の球体のセフィラー(セフィロトの単数形)と、それらを結ぶ22本の小径でできています。カバラ信者たちは10(最下位)の「マルクト」(王国)というセフィラーから出発し、22本の小径を使って各セフィラーの神の属性を会得し、霊的に自己を高め、1(最高位)の「ケテル」(王冠)への到達を目指して修行を行いました。
その後12~13世紀になると、南フランスやスペインでユダヤ神秘主義者たちの集団が活躍し、自分たちの思想を「カバラ」と呼ぶようになります。中でも13世紀スペインのモーゼス・デ・レオンによって書かれた『ゾハール』(『光輝の書』)は、カバラの文献の中で最も重要なものとされました。
さらに時代が下ると、カバラの思想は近代の西洋魔術にもほとんどそのまま取り入れられ、魔術師たちにも大きな影響を与えるようになります。たとえば19世紀末に誕生した魔術結社「黄金の夜明け団」では、生命の樹を正しく理解し、瞑想することが、魔術の実践に欠かせないことだと考えられていました。
暗号解読法・ゲマトリア
続いて、カバラ数秘術に用いられている、「名前を数字に変換する」という方法についてみていきましょう。
カバラ信者たちは『旧約聖書』やその他のカバラの大教典とされる書物の中に、暗号を使ってカバラの秘儀を組み込んだといわれています。
この暗号を解読する方法のひとつが数秘術の一種「ゲマトリア」です。
聖書が書かれたヘブライ語は、全部で22の文字からできています。ゲマトリアではまず、この22種類の文字をA=1、B=2……というように数値に置き換えます。次に文字の数値を単語ごとにそれぞれプラスし、単語全体の数値を求めます。このようにして書物の中に同じ数値を持つ単語を見つけると、それらは関連があるものみなされ、元の単語とは違う隠された意味を持つと解釈されました。
例えば唯一神を指す「エホヴァ」という単語の数値は「10、5、6、5」の合計26です。もし『旧約聖書』などの書物のどこかに合計が26になる単語が見つかれば、それは神を表している可能性があるというわけです。
このゲマトリア、実は古くからある暗号解読法だったといわれています。たとえば紀元前8世紀の古代バビロニア王サルゴン2世は、長大な壁を建設する際に、その長さをゲマトリアで定めました。自身の名前を数値に置き換え、それを壁の長さとしたのです。
これらのことからもわかるように、ゲマトリアは本来、占いの手段ではありませんでした。しかし古代のユダヤ人たちによって占いにも用いられるようになり、徐々に発展すると、1200年頃にドイツのカバラ主義者エレアザールによって集大成されます。
こうしてカバラ思想とゲマトリアが結びつき、カバラ数秘術という占いとして使われるようになりました。現代では占星術やタロット占いなどと並び、悩める人々にヒントを与える手段として人気を集めています。機会があれば一度試してみるのもいいかもしれませんね。
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