牛や馬、犬、狐など、日本には古来より動物を守護神として祀る文化があります。動物は人間の生活に欠かせない存在であり、精神的な部分でも大きな影響力を持っていました。そのため人々は動物たちを神の使いとして祀り、崇拝するようになったのです。
そんな動物の神さまの中から、今回は「
目次
馬の守護神「蒼前様」
【「蒼前様」ってどんな神さま?】
- 主に東北から北関東地方で祀られる馬の神。
- ご利益:豊作、馬の守護神、厄除け、家内安全。
- 祭日:農作業や季節の折り目。
「
「蒼前」とは葦毛の白馬のことです。葦毛馬は年齢とともに白くなり、8歳で白馬になると霊威が生じると考えられていました。
南部馬の産地である岩手県を中心に、農民たちは古くから馬を家族のように大切な存在として扱っていました。そのため馬が死ぬと蒼前様として祀り、馬の霊力で人間の生活や馬を守ってもらおうと考えるようになったのです。
岩手県滝沢市には、蒼前神社という蒼前様をお祀りする神社があります。毎年6月に行われる岩手県の伝統行事「チャグチャグ馬っこ」では、色とりどりの装束を纏った馬たちがこの蒼前神社を出発し、真鍮の「鳴り輪」をチャグチャグと響かせながら行進する姿を見ることができます。
蒼前神社にはこんな言い伝えも残されています。
昔、村には5月5日に田のしろかきをしてはいけないという決まりがありました。ところがある時、村人がその決まりを破ってしまったところ、突然馬が暴れ出し、鬼越し峠で立ったまま死んでしまいます。そこで村の人々は馬を峠から少し下ったところに葬り、蒼前様として祀ったということです。
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神さまのお使い「ミサキ神」
続いては、神さまのお使いである「ミサキ神」をご紹介しましょう。
【「ミサキ神」の持つ3つの性格】
- 神格の高い神さまのお使いをする、位の低い神さま。
- 祖霊信仰では、危難に遭遇した子孫を守り、救いの道を指し示す神さま。
- 人に祟りをなす変死者の亡霊。
「ミサキ
たとえば稲荷のキツネ、日枝山王のサル、熊野の八咫烏などがこのミサキ神にあたります。そのご利益は仕える主神と同じです。
ミサキ神は位の低い神さまなのでフットワークが軽く、とても頼りになる存在です。霊力も高いのですが、人間が頼り過ぎて慎みを忘れると、祟られてしまうこともあるといいます。
ミサキ神には祖霊信仰としての側面もあります。ピンチに陥った子孫の前に現れ、子孫を守護し救いの道を指し示すというありがたい力を持っているのです。
この他、人に祟りをなす変死者の亡霊のことも「ミサキ」といいます。こちらは神さまではなく妖怪や憑き物の部類で、接触した人は病気になったり死んでしまうこともありました。
このミサキも、元はミサキ神と同じく、高位の神さまに仕える存在でした。ところが次第に主神との繋がりをなくしてしまい、妖怪や憑き物になったと考えられています。
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牛と農業を守る「牛神」
最後に、農作業を助ける「牛神」をご紹介しましょう。
【「牛神」ってどんな神さま?】
- 農業神、牛の安全や健康を守る神。
- ご利益:牛の安全、子牛の生育、豊作、無病息災、安産、家内安全など。
- 祭日:旧暦7月7日など。
「
農耕が機械化されるまで、牛は農業を支える重要な労働力でした。そのため人々は自分の飼っている牛が死ぬと、野辺に石碑や小祠を建てて牛の霊を丁重に祀るようになったと考えられています。
牛神の祭日は旧暦の7月7日です。この日は「牛の盆」「牛の節供」などと呼ばれ、牛にごちそうを食べさせて牛神にお参りをしたり、麦ワラで作った牛の人形を牛神に供えるなどします。
近畿地方では「
「牛神」は元々、この野神の一機能でしたが、次第に独立して祀られるようになったとも考えられています。
動物の神さまの中から、今回は3柱の神さまをご紹介しました。もしお気に入りの神さまがいたら、祀られている場所を訪ねてみるのもいいですね。