ファンタジー世界にも応用できる?!　中世ヨーロッパの経済

ファンタジーRPGで宿屋に泊まったり新しい武器や防具を購入する時、冒険者たちは革袋から金貨や銀貨を取り出して支払いを済ませますよね。
では、そうしたRPGの世界観の元となった実際の中世ヨーロッパでは、どんな貨幣が使われ、どのような交易が行われていたのでしょう？ 今回は中世の経済の様子をご紹介します。

金貨や銀貨　中世ヨーロッパの貨幣制度とは？

まずは中世ヨーロッパの貨幣制度をご紹介しましょう。

【ざっくりまとめる！ 貨幣制度の歴史】



かつて、古代ローマ社会では貨幣を使った商取引が行われていましたが、中世になりゲルマン人たちが中心の社会になると、商取引の形態も変わり、物々交換が主流となります。

そんな中、フランク王国のカール大帝(742～814年)は貨幣制度改革を行い、「デナリウス銀貨」を基準に物の価値を定めることになりました。

ところがデナリウス銀貨の品質は年々劣化し、時代とともに信用を失ってしまいます。
商人たちは安心して使える貨幣を求め、また農民たちも日常生活の中で使える少額貨幣がほしいと思うようになりました。

そうした時代背景を受け、12世紀半ば以降、金融・商取引が盛んな都市で高品質な貨幣が鋳造され始めます。当時使われていた貨幣には次のようなものがありました。



貨幣を使った商取引には問題点もありました。貨幣は重く、持ち運びに不便で、盗賊などに襲われ奪われてしまう危険性もあったのです。また各地で独自の通貨が鋳造されたため、それらを両替する仕組みも必要でした。

そこで発展したのが、銀行業です。特にイタリアでは為替手形を用いた信用取引が発展し、商人たちは安心して大規模取引を行えるようになりました。


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陸路から海路へ　中世ヨーロッパの流通経路

中世の時代は貨幣制度が変化しただけでなく、商品の流通経路も大きく変動した時代です。

【ざっくりまとめる！ 流通経路の変化】



中世ヨーロッパでの流通・交易は、当初、陸路が中心でした。しかし当時の道路状態は良好ではなく、また馬車やロバ、人力では移動速度も運搬できる荷物の量も限られてしまいます。
そのため、大規模な輸送には河川などが使われていました。

こうした状況から、12～14世紀にかけて、ヨーロッパ北部のフランドル地方(毛織物の産地)と北イタリア諸都市(商業が盛ん)とを結ぶ交易の中間拠点として、シャンパーニュ地方が発展します。
シャンパーニュは陸路と河川で結ばれた場所にあり、またシャンパーニュ伯の尽力もあって多くの商人を集めました。しかし政治体制が変化すると、シャンパーニュ地方は急速に力を失ってしまいます。

そんな中、14世紀になるとイタリア商人がジブラルタル海峡を越え、フランドル地方まで到達する航路を開拓します。フランドル地方の港町ブルッヘを中心に、海路による大量輸送が行われるようになりました。
一方、内陸部にもシャンパーニュの後を継ぎ、陸路交易の中心地となった都市がありました。


当時栄えた都市には次のような場所があります。

・貿易・金融の中心地：フランドル地方・ブルッヘ、ハンザ同盟・リューベック、ハンブルク、北イタリア諸都市(ヴェネチア、ジェノバなど)
・陸路での交易中心地：ドイツ・フランクフルト、フランス・パリ、リヨン

主な交易品と産出都市

最後に、中世ヨーロッパの主な交易品とその産出都市をご紹介しましょう。




このように、中世は貨幣制度や流通経路などが大きく変化していった時代でした。小説などでオリジナルの世界を考える時も、こうした経済の仕組みや変化を取り入れられたらリアリティが増しそうです。


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