中世ヨーロッパといえば騎士の時代。騎士たちはどのような暮らしをし、何を見て何を考え、どんな人生を送っていたのでしょう?
このシリーズでは、1165年にフランスに誕生した架空の騎士ジェラールを案内人に、中世ヨーロッパと騎士の姿をわかりやすくご紹介していきます。
第8回目のテーマは、「修道院」です!
目次
修道院の設備
ジェラールの次兄は修道院に入り、修道士になるための教育を受けています。日本ではあまりなじみのない場所ですが、修道院とはどんな場所だったのでしょう?
私も領地にある修道院を何度も見学させてもらいました。まずはどんな設備があるのか、まとめてご説明しましょう。
修道院の中には聖堂や礼拝堂だけではなく、たくさんの建物が揃っています。
・聖堂(宗教儀式を行う場所。聖体、聖具、聖油を保管する部屋がある)
・礼拝堂(祈りを捧げる場所)
・修道院長の居室兼執務用の別棟
・修道参事会員(修道院長の補佐をする人)のための別棟
・一般修道士の共同寝室(個室の場合あり)
・食堂、台所、沐浴所、洗濯所、トイレ
・図書室、写本室
・畑、家畜小屋
・製粉小屋、パン焼き小屋、醸造所、葡萄酒などの貯蔵庫
・旅の修道士や巡礼者たちのための施設
・施療院、薬草園、入院施設
・修道院付属学校
・礼拝堂(祈りを捧げる場所)
・修道院長の居室兼執務用の別棟
・修道参事会員(修道院長の補佐をする人)のための別棟
・一般修道士の共同寝室(個室の場合あり)
・食堂、台所、沐浴所、洗濯所、トイレ
・図書室、写本室
・畑、家畜小屋
・製粉小屋、パン焼き小屋、醸造所、葡萄酒などの貯蔵庫
・旅の修道士や巡礼者たちのための施設
・施療院、薬草園、入院施設
・修道院付属学校
こうした施設を使い、修道士たちは共同生活をしながら農作業や写本づくり、葡萄酒づくり、領地経営などを分担して行っていました。彼らは祈るだけではなく、働いていたんですね。
修道院の役割とは?
様々な設備が設けられていた中世ヨーロッパの修道院。その役割は次の3つに分類できます。
①祈る場所
修道院は修道士(修道女)たちが厳しい禁欲生活を送り、神に祈りを捧げ、信仰の道を究める場所です。
彼らは「修道会会則」と呼ばれる指針を守りながら共同生活を送っていました。この「会則」は、520年頃に聖ベネディクトゥスが定めたベネディクトゥス会則を基につくられています。
聖ベネディクトゥスは会則の中で、社会奉仕の大切さを説きました。そのため修道院の中には、貧者や巡礼者のための病院をつくるなどの活動に熱心に取り組んでいるところもあります。
②学芸の場所
12世紀になり都市で「大学」が発展するまで、修道院は知識階級を育てる場所でもありました。優秀な修道士は諸侯や城主クラスの騎士の家に家庭教師として招かれ、ラテン語や教養を教えることもあったといいます。
修道院はあくまでも宗教組織なので、キリスト教の教義や哲学に反するような自然科学や新しい技術の研究は認められません。それでも、神学や建築学、数学、化学、薬草や治療の知識などが修道院に集まり、発展していきました。
11世紀頃から登場した、ロマネスク様式やゴシック様式といった礼拝堂の建築様式にも、数学の知識が使われているんですよ。
③知識の保存場所
修道院は知識の保存にも力を入れています。当時はまだ印刷機がなく、本はとても高価なものでした。そこで修道院は資金力やネットワークを活かして本を集め図書館をつくり、翻訳し、手書きの写本をつくって知識や文化の保護を行いました。
修道士になるための条件
修道士になってみたいですか? 実は色々と条件があるんですよ。
修道士になるための条件には、次のようなものがあります。
・15歳以上
・妻がいない
・借金が無い など
こうした条件をクリアした者は、「修道請願」をたてて修道士となることができます。「修道請願」とは、清貧、貞潔、従順を守るという誓いです。その他、各修道院が定めた修道会則も守らなくてはいけません。
請願をたてるまでは「修練者(修練女)」と呼ばれ、修道院を離れて俗世界に戻ることも許されていました。
晴れて修道士となった者は、会則で決められた修道服を着て暮らします。修道服は修道会によって色や形が異なっていました。主な修道会や修道服の特徴を簡単にご紹介しましょう。
*ベネディクト修道会
529年創設。910年に建設された「クリュニー修道院」を中心に、クリュニー改革と呼ばれる修道院の改革を進め、一般信徒からも貴族からも多くの支持を集めた。修道服は黒色。
*シトー修道会
1098年創設。会則が厳しい。テンプル騎士団の創設や第2回十字軍の実現に尽力したクレルヴォーの聖ベルナールなどを輩出した。修道服は白色が基本。
修道服を見るだけで、どこの修道会の修道士なのかわかるんですよ
修道士たちだけではなく、修道院には諸侯や城主の未亡人や、引退した諸侯、城主、騎士たちも暮らしていました。
後年、ジェラールの父も修道院のそばに小さな館を建て、隠棲することになります。
一方、これから騎士になろうというジェラールの人生はまだ始まったばかりです。彼がこの後目にするものとは?! 次回をお楽しみに!
◎中世騎士物語
騎士が生まれた日 ~中世時代の暦~
騎士が生まれた日 ~中世の洗礼と宴会~
騎士が生まれた日 ~中世ヨーロッパの階級社会~
騎士が生まれた日 ~中世の出陣風景~
騎士が生まれた日 ~騎士と従士制~
騎士が生まれた日 ~中世ヨーロッパの騎士の鎧~
騎士が生まれた日 ~騎士になるための教育~