ヨーロッパの王侯貴族や騎士たちが身に纏っていたプレートアーマー(板金鎧)。美しくきらびやかな姿は魅力的ですが、実用性や着心地はどうだったのでしょう? 今回はプレートアーマーの実像に迫ります。
目次
プレートアーマーの長所とは?
どんな鎧にも長所と短所がありますが、プレートアーマーも例外ではありません。
まずは長所からご紹介しましょう。
- ・防御力が高い!
=剣、鈍器、刺突武器、銃弾などオールマイティに対応可能。 - ・着用者に安心感と自信を与える。敵には威圧感や恐怖をもたらすことができる。
→楽に敵を倒せる! - ・工業レベルが高い場合、チェーンメイルより量産しやすい。
プレートアーマーの長所はなんといっても防御力が高いことです。
板金は剣の斬撃を防ぎ、鈍器の衝撃を拡散することができます。さらに、チェーンメイルでは防ぎにくい槍や矢などの刺突武器での攻撃も、プレートアーマーなら受け流すことができました。
オールマイティな防御力があることから、着用者は安心し、自信を持って戦いに出ることができます。
逆に、堅牢な鎧騎士を見た敵は、威圧感を覚え、恐怖すら感じることもありました。つまり、プレートアーマーを着ることで、敵を楽に倒しやすくなるのです。
プレートアーマーの短所とは?
では逆に、プレートアーマーの短所は何でしょう?
- 手伝ってもらわないと着られない。
- 転倒しやすい。転ぶと起き上がるのに時間がかかる。
- 溺れると死ぬ危険性がある。
- 修理やメンテナンスに手間や時間、金がかかる。
- 熱がこもるので息苦しい。
プレートアーマーにはまず、ひとりでは着られないという短所があります。大がかりすぎて、従者などに手伝ってもらわないと着られないのです。
プレートアーマーをフル装備した時の重量は20~30kgとされます。現代兵士の装備品の総重量(約40kg)と比べてもそれほど重くなく、馬の鞍に飛び乗ったり、横にとんぼ返りを打つこともできました。
しかしその反面、重心が高いため転んだり転ばされたりしやすいという欠点もありました。一度転ぶとなかなか起き上がれないため、敵にとどめを刺されやすくなってしまいます。
また、もしプレートアーマーを着たまま川や沼にはまると、死んでしまう危険もあります。
実際、十字軍を率いた神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世(1123~1190年)は、川に落ちて溺死したといわれています。
プレートアーマーには、修理やメンテナンスに手間と時間とコストがかかるという問題もありました。オーダーメイドで鎧を作らせている場合、こうした問題はさらに大きくなります。
こうした短所の他、プレートアーマーには熱がこもるという最大の欠点がありました。
フルフェイス兜を被っているとさらに大変です。身体の熱は頭から抜けるという性質がありますが、フルフェイスの兜では熱が抜けにくく、たとえ極寒の雪嵐の中でも、熱中症や脱水症状を起こしたり、呼吸困難になって窒息死してしまう危険すらあるのです。
打倒! プレートアーマー
最後に、プレートアーマーを着た敵を倒す方法をご紹介しましょう。
【2つの方法で打倒! プレートアーマー】
①鎧の隙間を狙ってナイフで刺す。
②重い武器で打撃を与え、鎧を歪ませる。
プレートアーマーは防御力が高いものの、人体の機能構造上、関節部分や兜のスリットなどに防具で覆いきれない部分がどうしても存在しています。
もし敵がプレートアーマーを着ていたら、腋、肘の内側、股間、掌、膝裏といった関節部分や、兜のスリットを狙ってナイフで刺すことが有効です。
もうひとつ、重い武器で力いっぱい殴り、鎧を歪ませるという方法もあります。プレートアーマーは鈍器に強いですが、板金がひしゃげれば可動部に障害が出て、着用者にダメージがいくこともありました。
きらびやかに見えて実は短所がたくさんあったプレートアーマー。戦場で敵と戦って倒されるならまだしも、転んだり沼にはまったりして死んでしまっては大変です。中世に転生するなどしてプレートアーマーを着ることがあったら、どうかお気をつけください。
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