RPGでおなじみの防具といえば、チェーンメイル(鎖帷子)。実際の歴史でも十字軍などで使われていましたが、果たして性能や使い勝手は良かったのでしょうか? 今回はチェーンメイルの実像に迫ります。
目次
チェーンメイルはいつ頃使われていたの?
チェーンメイル(鎖帷子)とは、青銅や鉄の針金で作ったリングを繋ぎ合わせて金属の布地を生成し、加工した防具です。
その歴史は古く、青銅器時代(紀元前3000~2000年頃)には使われ始めたといわれています。
オリエントまたはケルト文明地域で誕生し、エジプトやインド、中国など世界中へ普及。紀元前5~6世紀にはローマに伝わり、紀元前3世紀頃になるとロリカ・ハマタという名前で量産されるようになりました。
チェーンメイルはその後も長く使われ続け、11~12世紀になると十字軍兵士の防具として重宝されるようになります。しかし武器の性能が向上したため、あまり役に立たなくなってしまいました。
それでもフランスの騎士などは、1330年頃までチェーンメイルを愛用し続けたといいます。
12世紀以降になると製鉄技術の復活とともに防具の性能も向上し、やがて板金鎧が登場するようになりました。
こうしてみると、チェーンメイルは紀元前の昔から中世の騎士の時代まで、長く愛用され続けたことがわかります。
お手入れが大変! チェーンメイルの使い勝手
長い間、世界中で愛用され続けてきたチェーンメイル。果たして使い勝手は良かったのでしょうか?
【意外と大変?! チェーンメイルの使い勝手
・全身を覆うタイプの場合、重量は約20kg!
・フードや手袋など、部分鎧タイプもある。
・針金を手編みして生産する。→手間がかかるので高価だった?
・錆びやすいのでお手入れが大変。
・壊れたら針金で結び接ぎをする。
チェーンメイルには、胴体や上半身のみ、フード、手袋といった一部の部位のみのタイプの他、全身を覆うタイプもあり、手足先まで覆うものでは約20kgもの重量がありました。
実際の兵士たちは、チェーンメイルと一緒に様々な防具も装備し戦場に向かいます。
たとえば11~12世紀の十字軍兵士たちは、チェーンメイルに加え、クロスアーマー(布製鎧)、サーコート、バレルヘルムなども装備していました。総重量はなかなかのものだったのではないでしょうか。
チェーンメイルの材料・針金は、13世紀になると機械生産できるようになります。しかしその後の工程は手編みで作られていました。研究家の実験によると、葉書1枚分の面積を編むのに5時間もかかったといいます。そのため、大変高価な値段で売られていたこともあるようです。
チェーンメイルは青銅や鉄などの金属でできているため、風雨や返り血、汗などですぐに錆びてしまいます。そんな訳で油を塗ったり錆を落としたりしなければならず、お手入れが大変でした。RPGの主人公たちも、実は毎晩お手入れをしているのかもしれませんね。
チェーンメイルの防具性能
手間をかけて作られ、お手入れも大変だったチェーンメイル。その性能はどれ程のものだったのでしょう?
【チェーンメイルの性能】
○ 刀剣での切断・斬撃に強い。
× 槍や矢の貫通攻撃に弱い。鈍器の打撲にも弱い。
チェーンメイルは金属製のリングを繋ぎ合わせてできているため、刀剣での切断には強いという特徴があります。
その反面、棍棒などの鈍器で攻撃されたり、槍や矢で刺突されると弱いという短所もありました。
ひと口にチェーンメイルといっても、リングの大きさや製法の緻密さなどにより、質も大きく変わってきます。
たとえばローマのロリカ・ハマタは10万個ものリングで作られており、チェーンメイルの中でも最高峰の品質といわれていました。
チェーンメイルの仲間には、大きなリングで構成された「リングメイル」がありますが、この言葉は目が粗く粗雑なチェーンメイルという意味で使われることもありました。
長く使われていたとはいえ、決して万能とも快適とも言い切れなかったチェーンメイル。
こうした武具の使い勝手や性能などを知っておくと、ゲームで遊ぶ時も主人公の苦労などを想像できて、楽しみが広がりそうですね。小説などを創作する時も、よりリアルな描写ができるかもしれません。
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