皆さんこんにちは。新紀元社のライトノベルレーベル、モーニングスターブックス担当者です。2018年11月17日(土)、18日(日)野外イベント「ヒストリカルビレッジ(プレビュー)」にパンタポルタ特派員として参加してきました。
歴史ファン、ファンタジーファンの間ではちょっとした話題となっていたこのイベント、行きたかった方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。今回は会場の様子のレポートを参加された方々へのインタビューを交えてお送りしますね。
この催しは大空のもと、中世ヨーロッパのものをベースにしたお料理を味わいながら、歴史衣装や甲冑の着付け、中世ダンス、レザークラフト制作など様々に楽しむことができるイベントです。
会場は千葉市にある「昭和の森フォレストビレッジ オートキャンプ場」。キャンプ場という特性を活かし、装備を持参すればテント泊参加することもできました。夜には宿泊参加者同士で焚き火を囲んでの交流も楽しみのひとつ。もちろん日中のみの参加もOKです。日中は各種ワークショップ体験や物販でのお買い物が楽しめました。
主催は中世ヨーロッパを中心とした歴史や西洋ファンタジーの再現体験イベントを数多く手がけてきたコストマリー事務局です。これまでにもたびたびパンタポルタで主催イベントのお知らせをしてきましたので、お馴染みの方も多いのでは。
主催団体以外にも、日本ヴァイキング協会、西欧中世史実践研究会アヴァロンの2団体が特別協力団体として参加していました。
開催両日とも好天に恵まれ、野外イベントならではの開放感を存分に味わうことができました。主催団体、協力両団体メンバー数十人がイベントの間、中世ヨーロッパの衣装を身にまとって会場内をそぞろ歩いています。現代日本にぽっかりとファンタジー世界が出現したような光景が広がっていました。芝生に座ってぼんやりと景色を眺めているだけで楽しく過ごすことができましたよ。
このイベントの目玉はなんといっても焚き火を使ったお料理! 鳥の丸焼きや自家製のベーコンなど肉料理をメインにワイルドなメニューがたくさん供されました。
鳥の丸焼きは時間をかけてじっくり火を通していました |
2日目の朝食です。この黒パンを焚き火でちょっと炙ると香ばしくて美味しいのです |
夕食に出された鳥の塩竃焼きで残った鶏ガラは翌朝のスープの出汁に。シンプルでやさしいお味です |
日中には各種ワークショップが催されました。レザークラフト制作体験や中世ダンス、火打ち石での火起こしなどなど……まるで中世ヨーロッパに迷い込んだかのような体験をすることができます。主宰・協力団体のテントで販売されている雑貨もひとつひとつが味わい深く、中世の市場で買い物をしているかのようです。
甲冑の着付けにチャレンジさせていただきました!
日が暮れて食事の後は焚き火を囲んでの談笑。
歴史や神話・伝承に興味を持つ方、アウトドア活動の好きな方がたくさん参加していました。こうした同好の士との交流もこのイベントの大きな魅力ですね。
ここで主宰団体、協力団体の皆さんにお話を伺ってみましょう。
まずは今回の主催団体であるコストマリー事務局さんから。
コストマリー事務局主宰
繻 鳳花
さん
――コストマリーさんは以前から歴史再現料理を手がけていらっしゃいますよね。今回のようなアウトドアでのお料理を始められたきっかけってなんだったんでしょう?
繻「入り口は歴史からですね。歴史からダッチオーブンの存在を知って、歴史を再現するためにアウトドアでのお料理も始めた形です。歴史上のお料理を再現するには焚き火がつきものですから」
――今回はプレビュー開催というということですが。
繻「今までもアヴァロンさんはじめ歴史関係団体の方をお誘いして非公開でやっていたことはあったのですが、こうして一般の方にも開放しての開催というのは初めての試みでした。ネットやイベントで知った方から、行ってみたいというご希望もいただいていたので今回ちょっとだけ門をひろげてみました」
――今回の試みを経て、今後付け加えたいことや課題は出てきましたか?
繻「いっぱいあるんですけど……。野外イベントというと、どうしてもテントやアウトドア用品もそろえないといけないという思い込みがありますが、もっと気軽に写真を撮るだけでもいらしていただけるようにしたいですね。力まずに来ていただけると嬉しいです。歴史衣装も着てこなくちゃいけない、というわけでなくて、普段着でふらっと来て楽しんでいただける形にできればなと思います」
――野外イベントならではの苦労もあると思いますが。
繻「天気ですね! 小雨でもいらっしゃらなくなる参加者もおられますし、できないことも出てくるので。今回も事前の予報が雨だったので中世テントを持って来られなかったんです。雨に濡れるとダメになってしまうらしくて。後は季節の問題もあって。夏は暑さや特に女性には虫が苦手な方も多いですし。冬はテント泊するにも装備が高い物になりがちで。そうなると季節が絞られちゃうんです」
――今後のご予定を教えてください。
繻「種類が少し異なりますが、2月2日に神奈川県川崎市で準体験型のハンドメイド即売会をテスト開催で行う予定です。こちらはファンタジー世界にあるような幻想的な雑貨を作られている作家さんに多くお越し頂き、買うだけではなく五感もついでに体験していただくという、ちょっと変わった趣向にする予定です。体験するという意味においてはこのキャンプも同じかな、と思います」
Drop In the Secret Garden(公式サイト)
http://nozoniwadrop.com/
西欧中世史実践研究会アヴァロン フォックスさん・ミルドレッドさん・グンナルさん・シャルルさん
続いて特別協力として参加の西欧中世史実践研究会アヴァロンのメンバーの方々に伺いました。
女性メンバーのフォックスさんとミルドレッドさんです。フォックスさんは西洋剣術の世界では日本初の女性ファイターとして有名な方なんですよ!
――アヴァロンさんというと西洋剣術・ファイティング団体というイメージが強かったのですが。
フォックス「前は戦闘が多かったのですけど、女性メンバーも増えてきて、食であったり衣装であったり文化的な面も充実させようってなってきていますね」
ミルドレッド「衣食住ですね。衣装も手作りしたり靴なんかも作ったり。中世ヨーロッパの食を再現したりしています。他にダンスのレクチャーなんかもやってるんですよ」
――将来やってみたいことってなんでしょう?
ミルドレッド「中世の町の再現っていうのを一度はやってみたいですね。大きなテントを張って食事をしたり、作ってきた革の小物や衣装を売ったり。中世の市場の再現なんかしてみたいですね」
フォックス「アメリカのイベント行くとキャンプ場を借り切って本当に町ができていて。各グループでキャンプサイトを自分たちのテーマに合わせて作って、例えばギリシアの神殿作っちゃったり、蛮族の集団がいたりするんです。お店もマーケットがずらーっとできていて、辻で楽士が音楽を奏でていて。戦闘も何千人も集まって合戦のようになっているんです。ちょっと小さくても良いのでそういったものを目指したいですね。ただ今は前ほど一生懸命にメンバー勧誘しているわけじゃないんです。ちょっと勧誘にがんばりすぎて自分たちが楽しむのを置いてきてしまったところがあるので」
ミルドレッド「今はまず自分たちが楽しいと思える活動を重視しています。その上で、一緒に楽しめる人たちをちょっとずつ増やしていけたらなと思ってます」
フォックス「いろんな歴史団体も増えてきているので、合同で町作りなんかできるといいですね」
グンナルさん
グンナル「以前からこういう歴史再現イベントには参加させてもらっていて、その中で参加者の皆さんにバトルの体験であったり、鎧を着てもらったりしてました。コストマリーさんのイベントとは方向が合致しているところも多くて参加しやすいですね」
シャルルさん
シャルル「僕はレイピアをメインにやっていて、中世の楽器を始めたのはその後からですね。今はルネッサンスダンスもやっているんですけど、ダンスは一人で踊るものでもないので、みんなで楽しめる方向で深めていきたいですね」
日本ヴァイキング協会 本山さん
同じく特別協力団体の日本ヴァイキング協会さんにもお話を伺いました。
日本ヴァイキング協会代表の本山さん
――協会を立ち上げたのは昨年だそうですね。どういった経緯だったのでしょう?
本山「私は北欧神話がきっかけでヴァイキングに興味を持ちだして。18年ほど前、二十歳くらいのときに実際に北欧に行き、縁あって中世のヴァイキング時代を再現している人達と出会うことができました。それからは、現地のヴァイキング村で当時の交易の場を再現した催しに参加したり、回を重ねてそこで自分の手製の革物を出品したりする様にもなりました。日本ではヴァイキング模様を刻んだ革物の製作や、家族や友人とヴァイキングの衣服を着てキャンプを行っていました。あくまで個人の楽しみとして行う程度だったんです。
過去の文化を再現する中には現代に活かせる発見があるということを、北欧のヴァイキング再現者の活動から教わりました。この感覚を自分一人で持っているのではなく、日本で他の人たちと共有していきたいと思う様になり、去年、日本ヴァイキング協会という形で活動を始めました。北欧のヴァイキング達にも情報をもらいながら、テントを作りフライパンを作り、現在の形になりました。
当時の暮らしを体感できるヴァイキングキャンプとイベント出店が今の主な活動内容ですが、活動の方向性は進めながら模索している感じです。今の所ヴァイキングキャンプの公募はしていなくて、物販イベントなどで実際にお会いして興味を持っていただいた方をお誘いしています。1回のヴァイキングキャンプで十数人の方にご参加いただいています。2019年からはより多くの方にご体験いただける様に、公募を始めていく予定です」
――衣装も皆さん自前で揃えていらっしゃるんですか。
本山「様々な方に体験していただきたいので、衣服は貸し出しで行っています。今後は作りたい方に向けたワークショップも行っていけるように、今準備をしています。
衣服は見た目の変化だけでなく、着ることで1000年前の空気を全身で感じられると思っています。当時と同じ素材でできた服を着て、当時の暮らしを再現することで、1000年前にタイムスリップした感覚になれる。そしてその中に日常とは違う新しい発見がある、それがヴァイキングキャンプです。」
――1000年前を再現する上で一番ハードルになることってなんでしょう。
「そう言われると……難しいことの方が多いですけれど、それが再現活動の楽しいところだと思っています。例えば、料理でも当時どんな料理が食べられていたのかというレシピはそんなに残っていない。ただ食材であったり鍋のような道具であったりは分かるし、伝説や伝承にはわずかの料理描写がある。そこから想像して実際に作ってみる。調べて考えて行動してと、完成までに多くの過程が必要ですが、その分だけ楽しみがあるのではないかと思っています。
ヴァイキングキャンプでは、あえてヴァイキング料理と限定せずに「1000年前の料理」をテーマに参加者に自由に想像して食材を持ち寄ってもらっています。どこまで調べるかどこまで作るかというのも参加者にお任せしています。思いもよらない料理にも歴史があり、新しい発見になることもありますよ」
――失敗することもありますか?
「作ろうとしたのですが、ヴァイキング時代の石臼が作れず保留になっています。現代の道具を使っても、もちろん手作業でもうまく削れず穴が開かない。こんなに硬い素材があるのかと驚きました。今の様な道具のない時にこの素材を加工し利用してきたヴァイキング達の知識と技術のすごさをあらためて感じられたことが収穫です。ヴァイキング時代の製粉とパン作りを体感できる石臼。精進して今後また再挑戦していきます」
ヴァイキング協会の皆さん。料理、神話、物作りなど、思い思いの分野に興味を持って活動しているとか |
実は3団体とも密に連絡を取り合っていたわけでなく、各々独自に歴史再現をテーマにした活動を始めていたそうです。ところが寄り合えば意気投合。会場のあちらこちらで団体の垣根を越えた交流が生まれていました。
◇◇◇
主催・協力団体メンバーだけでなく、一般の宿泊参加者もいらっしゃいました。女性のお2人組です。お話を伺うと、歴史やファンタジーの好きな方がお友だちのベテランキャンパーを誘って参加されたのだとか。2人ともとても楽しそうに過ごされていましたよ。
中世ヨーロッパの歴史やファンタジーが好きな人たちがこうして一堂に会することで素敵な出会いがたくさん生まれたようです。今回はプレビュー開催ということでしたが、次回の本格開催への道が開かれることを期待したいですね。もちろん私も参加させていただきたいと思います!
◎おすすめ記事
【レポート】4/15(日)星降る森の魔法市
コストマリー事務局:http://woodruff.press.ne.jp/
Avalon:http://avalon.tsukaeru.jp/
日本ヴァイキング協会:http://japanvikings.com/