中世ヨーロッパといえば騎士の時代。騎士たちはどのような暮らしをし、何を見て何を考え、どんな人生を送っていたのでしょう?
このシリーズでは、1165年にフランスに誕生した架空の騎士ジェラールを案内人に、中世ヨーロッパと騎士の姿をわかりやすくご紹介していきます。
第4回目のテーマは、「中世ヨーロッパの騎士の出陣風景」です!
目次
いざ出陣! 小規模だった騎士の部隊
ジェラールが3歳になったある日。
ジェラールの父は何やら慌ただしく身支度をすると、数人の騎士や従者たちを引き連れ、馬に乗り颯爽と城を旅立ちました。
「王様の命令で、王様に逆らう城主と戦いに行くのですよ」
母は優しくジェラールに教えます。
「いってらっしゃーい!」
ジェラールは父の後ろ姿に向かい大きく手を振りました。
今回は中世の騎士たちの出陣風景をご紹介しましょう。
12世紀頃のフランスでは、1度の戦いで各地から集まる騎士の総数は200~300人ぐらいでした。戦いは意外に小規模だったのです。
ジェラールの父親は城をひとつ持つだけの領主でしたので、一緒に出陣する騎士もほんの数名にすぎません。ひとりの騎士には1~2名の従者が付いており、全体では10名程の部隊を構成していました。
騎士や従者たちは、次のような階級に分かれています。
*「旗騎士」
上位の騎士で、ランス(騎槍)に長方形の旗を結び付けています。ジェラールの父親もこの旗騎士でした。
*「平騎士」
ランスに長細い三角形の旗を付けた騎士たちです。彼らは武功が認められれば旗騎士になることができました。
*「楯持ち」「従騎士」
騎士見習いです。
旗騎士や平騎士が金の拍車(靴のかかとに取り付ける馬具)を付けているのに対し、楯持ちや従騎士は銀の拍車を付けています。
*「従者」
騎士の日頃の世話をする他、戦いの際は騎士のそばで槍や弓を持って戦う歩兵となります。
彼らは賦役を果たすために従っている自由農民や農奴の他、古くから騎士の家で働いてきた者たちでした。
上位の騎士で、ランス(騎槍)に長方形の旗を結び付けています。ジェラールの父親もこの旗騎士でした。
*「平騎士」
ランスに長細い三角形の旗を付けた騎士たちです。彼らは武功が認められれば旗騎士になることができました。
*「楯持ち」「従騎士」
騎士見習いです。
旗騎士や平騎士が金の拍車(靴のかかとに取り付ける馬具)を付けているのに対し、楯持ちや従騎士は銀の拍車を付けています。
*「従者」
騎士の日頃の世話をする他、戦いの際は騎士のそばで槍や弓を持って戦う歩兵となります。
彼らは賦役を果たすために従っている自由農民や農奴の他、古くから騎士の家で働いてきた者たちでした。
ひとりの騎士と従者が1~2名。これが最小の部隊の単位です。
遠征に出掛ける見返りは?
遠征に出掛けると何かいいことがあるのでしょうか?
報酬はすでに領地として貰っているので、出陣しても何か報酬が追加されるわけではありません。それでも遠征に出るのは、父がフランス王に臣従の誓いをたてているからです。
王や諸侯、城主、騎士たちは、「臣従の誓い」「臣従の礼」「臣従契約」などと呼ばれる関係で結ばれています。
中世ヨーロッパの臣従契約は、あくまでも契約であり、無制限に臣下が主君に従わなければならないものではありません。専属契約でなければ、臣下は他の主君とも同時に契約をすることもできました。
主君と臣下の騎士とは互いに次のような義務を負い、見返りを提供し合います。
*主君→臣下
・臣下に一定の領地や金を分け与える。
・臣下たちの争いを調停したり、懲罰を与えたりして臣下を守る。
・戦争の時は臣下を指導し、臣下の領地を守る。
*臣下→主君
・主君のために遠征に出掛けたり、領内の戦いに駆けつけたりする。
・交代で主君の城に寝泊まりし、警備を行う。
遠征などの軍役に出る人数は、臣下の領地の広さや収穫量で一律に決まるわけではなく、あくまで契約内容次第です。
また日数も非常事態以外では大抵40日間と決まっており、期限が過ぎれば帰ることもできました。主君は臣下を引き止めるため、金を出す場合もあったといいます。
遠征になれば資金の持ち出しになることもあります。中にはそれを嫌って連れて行く人数を減らしたり、出陣を避けようとする騎士もいました。
でも、戦場で武勲をたてれば出世につながりますし、戦利品や身代金が手に入ることもあります。王様の開催する宴会で盛大に飲み食いするのも楽しいですよ。
でも、戦場で武勲をたてれば出世につながりますし、戦利品や身代金が手に入ることもあります。王様の開催する宴会で盛大に飲み食いするのも楽しいですよ。
「臣従の誓い」の儀式
最後に、「臣従の誓い」をたてる時の儀式をご紹介しましょう。
主君(封主)となる人物が両の手のひらを差し出す。
↓
臣下(封臣)となる人物は、自分の手をその中に入れる。
↓
臣下の手が主君の手のひらに包み込まれたら、臣従の誓いの儀式は完了!
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臣下(封臣)となる人物は、自分の手をその中に入れる。
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臣下の手が主君の手のひらに包み込まれたら、臣従の誓いの儀式は完了!
こうした儀式を経て主君と臣下は契約関係を結びますが、その関係はいつも平和だったわけではありません。
領主となった騎士たちは主君から貰った領地を代々受け継いでいくため、時代が下ると「かつて先祖が主君に忠誠を誓う代わりに領地を貰った」という事実を忘れ、主君に刃向う者も現れるようになりました。
地域差はありますが、王や諸侯たちは配下の騎士たちに手を焼いていたのです。
遠征に出掛けたジェラールの父親とその部下たち。次回は騎士や従士について、もう少し詳しくご紹介しましょう!
◎中世騎士物語
騎士が生まれた日 ~中世時代の暦~
騎士が生まれた日 ~中世の洗礼と宴会~
騎士が生まれた日 ~中世ヨーロッパの階級社会~