30年続いた平成も終わりに近づき、新しい元号に変わる日が近づいてきました。日本の大きな節目を前に、心機一転したいという人も多いかもしれません。
新しい気分で毎日を送るために、お引越しや模様替えで住環境を整えるのもいいですし、パワースポットに行くのも気持ちがリフレッシュするかもしれませんね。
住まいの環境や特別なスポットには人の気分を変える不思議な力があるのです。
今回ご紹介する風水は、大地の力を借りて幸運を呼び込む手助けをしてくれます。
風水とはどんな術なのか、その歴史とともに探ってみたいと思います。
目次
風水は不思議な環境学
風水というと、家の中の間取りの配置や水回りの位置の吉凶を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし本来、風水術とは家屋に限らず町や村、国にいたるまで広い範囲の事柄を判断するための運命学なのです。
風水を生み出した中国では、昔から住居がその住人の運命を決めるという考え方が根付いていました。
風水の原型は、中国古代に成立した「帰蔵易」だといわれています。
風水という言葉は比較的新しく、使われるようになったのは宋代になってからでした。同時代に書かれた『葬書』の一節が元になっています。
それによれば、大地の気を集めるのには「風」と「水」を使うといいます。ここから「風水」という言葉が使われるようになったのです。
風水は単なる占いとは少し違います。
多くの占いは未来の良し悪しをのぞき見て、これからの行動に生かしていこうというものですが、風水はさらに積極的に不運を退け、幸運を引き寄せることを目的としています。
風水では主に地面の力を利用します。「地」の力が強ければ、そこにできた街や家は栄え、物事もうまくいくというのです。逆に地の力が弱いところでは人々も何かと不運に遭うことが多くなるといいます。
「地の力」というと曖昧ですが、これを「環境」と言い換えるとまた違った印象があるのではないでしょうか。
環境が人間の心身に与える影響は、決して軽視することはできません。風水とは、いわば呪術的な環境学ということができるのです。
風水の3つの竜「山竜」・「水竜」・「道竜」
さて、ではどんな場所が地の力を借りられるポイントなのでしょうか。
先に風水ならではの概念をご紹介しましょう。
風水では地形を重視しますが、それには竜脈と竜穴という概念があります。竜脈とは地面は地中、もしくは川の中を走る「気」の流れ、つまり大地のエネルギーのことを指します。この竜脈は3つに大別され、山竜・水竜・道竜と称されています。それぞれ「山」「川」「道」を表す竜脈のことです。
そして竜穴とは、エネルギーが地表に吹き出している点をいいます。大地のエネルギーは竜脈の上であればどこでも恩恵が受けられるというものではありません。この竜穴の上でなければいけないのです。言い換えれば、風水とはこの竜穴を見つけ出すための技術でもあります。
そして、竜脈には良し悪しがあるのが重要なポイントです。
山竜を例にとって見てみましょう。山竜とは、山の連なりのことです。これに高低差があり、左右にうねりがあるものが「よい竜」だとされます。逆に、単調で落ち込みがあるような山は「悪い竜」だと表現されます。
そのほか山の表面にも重要な要素が隠れています。ごつごつとした荒地のような山は良くありません。ましてや人工的に切り崩されたものは竜脈を切断しているようなもので、風水的にはよくない山竜だといえるでしょう。
水竜や道竜の良し悪しには、これに方角や形など複雑な要素が絡んできます。
こうした点を見極めて、竜穴を利用するのが風水なのです。
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風水におけるよい竜穴の条件とは?
風水における「穴」から放出される「気」は、その場にとどまるわけではありません。吹きさらしの地では、風に気が乱されてしまうこともあります。また、水がないと陽の気(日光)が地の力を散らしてしまいます。
しかし、風がまるで吹き込まない場合もよくありません。澱みがたまってしまい、せっかくのいい気も悪い気に変質してしまうのです。陽の気があたらない場所も同様に、地の力の悪い変化が起こります。
竜脈は、必ず水のそばに竜穴を作ります。この水は水たまりであればよく、大きさは問われません。そして、水質がよければなお良いとされています。汚れた水は、悪い気になるのでよくありません。
つまり好条件の竜穴は「風」と適度の光、そして「水」が重要な要素なのです。
実は、これは植物の生育条件と同じです。
植物に限らず、このような土地ならば動物も心地よく過ごすことが可能ですね。当然、人間にも同じことがいえるでしょう。心身が健康で快適な環境があるならば、ストレスも最小限に日常生活にもよい気持ちで取り組めます。
風水は環境が人間に与える心理・身体的な影響を考慮にいれた術だと言えそうです。
ちょっぴりホラー、風水上良すぎる竜穴は問題あり?
最後に風水のちょっと不思議な話をしましょう。
中国に深く根付いた思想に、「過ぎたるはなお及ばざるが如し」というものがあります。陰陽は同じだけ存在するもので、どちらかに傾けば釣り合いを取るように反動が起こるというものでもあります。
風水の中にもこうした思想が垣間見えるところがあります。
良すぎる竜穴は、陽のエネルギーが強過ぎて墓所には向かない、とされているのです。
こうした墓所に死体を埋葬すると、死体は陽のエネルギーの影響を受け続けて腐ることもなく、生きている時と同じ様に髪や爪も伸び続け、しまいには子孫にも祟り続けるといいます。その影響が大きければ、ついには妖怪キョンシー(僵屍)となって墓所を抜け出し夜な夜な人を襲うようになるとも言われているのです。
良い影響も受け続ければ悪いことに……というわけなのですね。
ライターからひとこと
風水といえば鬼門、と思いましたが、ちょっと勘違いしていたようです。「鬼門」は風水が成立するより前に日本に入ってきた陰陽道などの影響が強く、日本独自に発展した側面も強いそう。疲れきった時には、いい竜穴の上でいっぱいパワーをもらいたいなあと思うこの頃です。