現代の私たちが想像する「メイド」は、メイドカフェのメイドさんが着ているようなフリルのついたメイド服に身を包んだ女性ではないでしょうか。
アニメや漫画、ゲームにもこうしたアイドル的な存在としてのメイドが度々登場します。
それでは、実際のメイドはどのような仕事をして、どのように暮らしてをしていたのでしょうか。
今回は、『図解 メイド』(池上良太 著)を参考に、メイドが全盛期を迎えたヴィクトリア朝時代まで遡りましょう。メイドの歴史や職種、仕事内容についてご紹介します。
目次
ヴィクトリア朝のメイド①:メイドの歴史
19世紀ヴィクトリア朝の時代は、メイド全盛期ともいえる時代です。
当時、メイドを雇えるということは一種の社会的ステータスになっていました。また、当時のヨーロッパでは男性は社会に出て仕事をし、女性は家庭を守るという考え方が一般的であり、さらに上流階級の女性の中では、暇な時間をもてあます有閑女性であることが理想とされていました。
こうした生活を続けるためには、身の回りの家事を行うメイドの存在が必要不可欠だったといえます。
加えて、産業革命や対外貿易で大きな利益を得られるようになった結果、中流階級の人々もますます使用人を雇うようになりました。こうした社会情勢の影響を受け、当時の使用人の数は、今世紀までの中で最も多いものになったと考えられています。
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ヴィクトリア朝が全盛期 イギリスのメイドの歴史とは
もしもお屋敷で働くことになったら? ヴィクトリア朝のメイドたちの生活
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ヴィクトリア朝のメイド②:メイドの職種
メイド(使用人)というと、エプロンドレスの特徴的な制服を着て屋敷の主人に仕え、家事などを行う女性というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。ですが歴史上では、彼女たちはかなり細かい職種に分かれ働いていました。
漢字で「家政婦」と書くと、掃除や洗濯、料理といった家事を代行する女性を想像するのではないかと思います。ですがヴィクトリア朝以降のイギリスの歴史の中では、「家政婦(ハウスキーパー)」は女性使用人の中で最高位の者を指す言葉で、日本語のいわゆる「家政婦」とはかなり異なった職種でした。
小間使い(レディーズメイド)は、女性使用人の中で家政婦(ハウスキーパー)に次ぐ高い地位にある職業です。小間使いになるには、若くて外見がよく、性格も明るくて従順で、気立てがよい人物であることも大切なポイントです。
台所女中(キッチンメイド)は、台所(キッチン)の雑用や簡単な調理を行うメイドです。彼女たちは明確にランク付けされており、ランクによって仕事内容も細分化されていたのです。
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メイドの職種①教養や知識が必須 家政婦、女家庭教師とは
メイドの職種②華やかだけど苦労もあった小間使いと客間女中
メイドの職種③厳しかった料理の世界 料理人と台所女中
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ヴィクトリア朝のメイド③:メイドの生活環境
ヴィクトリア朝では様々なタイプの台所用レンジが登場します。
18世紀頃までは、密閉されていない開放型のレンジが主流でした。しかし、開放型レンジは熱効率が悪く、料理を作る際に大量の石炭を使わなければなりません。
そこで、19世紀になると密閉型の料理レンジが登場します。開放型レンジに比べ、密閉型レンジはより効率的に料理ができる上に多機能でした。
またヴィクトリア朝では、レンジなどの台所用品以外に、照明器具も急速な発展を遂げています。
19世紀初頭に主に使われていたのは蝋燭です。獣脂や蜜蝋などでできていて、嫌なにおいや煙、ススが出るものの、安価なことが特徴でした。やがて時代が下ると、オイルランプが登場します。蝋燭に比べて明るく、煙も少ない反面、当初は非常に高価だったため、富裕層の邸宅などで主に使われ、労働者階級の人々は引き続き安価な蝋燭を使い続けていました。
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台所用レンジにオイルランプ ヴィクトリア朝の生活用品
日本の皿も置かれていた 家政婦部屋はメイドの仕事場&食堂
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ヴィクトリア朝のメイド④:メイドに見る階級社会
上流階級や中流階級に雇われていたメイドのうち大多数は、労働者階級の出身です。特に女性は12~13歳になると家事奉公に出ることが一般的でした。住み込みの仕事のため住居や食事に困ることがない上、給料ももらえるため、メイドは条件が良い仕事だと思われていたのです。
しかし、ヴィクトリア朝中期以降になると、工場労働など女性が就くことのできる職業が多様化し、メイドになりたいと思う女性は減っていきました。
労働者階級の中にも、熟練労働者など、豊かな階層が存在します。彼らは皮肉を込めて「労働貴族」と呼ばれていました。労働者階級の人々は、一般的には使用人として働く側の者が多いですが、労働貴族たちは逆に日雇いの雑役婦を雇うなど、メイドを雇用する側になることもありました。
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生活も考え方も全然違う! イギリスの階級社会とは
過酷な労働に暴力、人種問題 欧米諸国の使用人事情
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