黄色いサフランライスをはじめ、パエリアやピラフ、ブイヤベースなど、様々な料理に欠かせない調味料サフラン。実は料理に使えるだけでなく、紀元前の昔から香水や薬などに広く利用され親しまれてきた植物でした。
今回はそんなサフランの魅力をたっぷりとご紹介しましょう。
目次
サフランってどんな植物?
- アヤメ科クロッカス属の多年草。秋に紫色の花を咲かせる。
- 原産地:地中海東側沿岸
- 花言葉:歓喜、節度ある態度、陽気、青春の喜び
- めしべを乾燥させたものが香辛料のサフラン。
サフランという名前は、アラビア語のzafaran(黄色)という言葉に由来しています。サフランの花の色は紫ですが、乾燥しためしべから黄色い色が出るため、この名が付きました。
サフランのめしべには強い芳香があります。このめしべを乾燥させたものが、私たちが料理などでよく知る香辛料のサフランです。
サフランの利用法
エジプトやヨーロッパを中心に、サフランは紀元前から珍重されてきました。その利用法は実に幅広いものです。
①香辛料
私たちもおなじみのサフランライスやパエリアなど、食材を鮮やかな黄色に染め、風味をつけるために使われます。
②ハーブ・ティー
サフランのめしべはハーブ・ティーとしても利用できます。
③染料
サフランのめしべからは鮮やかな色が出るため、紀元前から染料としても使われています。
④子孫繁栄の儀式
サフランの産地インドには、子孫繁栄を願い、粉状にしたサフランに米粒を混ぜて新婚夫婦の肩に投げかけるという儀式があります。
⑤薬
紀元前16世紀にエジプトで書かれた世界最古の薬草書『パピルス・エーベルス』や、古代ローマ時代に大プリニウスが著した『博物誌』には、サフランを薬として用いていたという記述があります。
『博物誌』によると、サフランは内臓の潰瘍や咳、胸膜炎に効くだけでなく、飲酒の際の悪酔い防止、性欲向上にも良いと考えられていました。
⑥香水・洗髪料・化粧品
古代ギリシアやローマでは、サフランの搾り汁を香水や洗髪料として使っていました。また、クレオパトラが化粧品にしていたという説もあります。
サフランにはこのようにたくさんの利用法がありますが、わずか1グラムのめしべを得るために約120~170個もの花が必要な上、手作業で摘み取らなくてはいけないため、最も高い香辛料といわれています。
アラビアのサフラン
昔、バグダッドにいた裕福な商人の娘が王に見初められ、妃として迎えられることになりました。王は彼女に金貨10万枚の価値がある黄金の首飾りを贈ると、「これは先祖代々伝えられてきた大切な品です。もしなくしたら、あなたの手を斬り落としますよ」と話しました。
そんなある日、王宮の前に物乞いがやって来て、「預言者ムハンマド様のお情けにかわって、なにかめぐんでいただけませんか」と言うではありませんか。敬虔なイスラム教徒だった彼女は首飾りをあげてしまい、それを知った王に手を斬り落とされ離縁されてしまいました。
一方、物乞いの男は首飾りを売ったお金を元手に大商人になりました。ある日、けっして人に会おうとしない奇妙な娘がいるという噂を聞き、興味を持って求婚してみたところ、「もしあなたがよその国の方なら結婚してもいいです」という答えが返ってきたのです。そこで男は娘と結婚し、自分の国に帰ることにしました。
実はこの娘こそ、王に手を斬り落とされてしまったあの妃でした。彼女は今まで手がないことを隠してひっそりと暮らしていましたが、これから結婚生活に入れば、手を使わなければならない場面も出てくるかもしれません。
思い悩んだ彼女がアッラーに祈りを捧げたところ、緑のターバンを巻いた老人が現れました。
「私は預言者ムハンマドです。斬られた手をお出しなさい」
娘が手を差し出すと、老人はあっという間にその手をもとどおりに戻してくれました。さらにムハンマドが娘の頭上に手をかざすと、その指が触れたところから次々とサフランが咲き、なんとも言えぬ良い香りが漂ったということです。
高貴な香辛料として、神や預言者とも結びつく話が残されているサフラン。サフランを使ったお茶や料理を楽しむ時は、神話や逸話に思いを馳せてみるのも素敵ですね。
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