駆け出し冒険者だった頃、多くの方が戦ったことのある敵といえば、ゴブリンです。
ファンタジーRPGではおなじみの下っ端モンスターですが、RPGが普及する前はどんな姿で描かれていたのでしょう? 今回はゴブリンやその仲間のモンスターをご紹介します。
目次
悪戯好きの妖精ゴブリン
【ゴブリンって本当はこんな奴】
- 悪戯好きで、人に小さな害を与えるイギリスの妖精。
- 子どもくらいの大きさで、容貌は怪異。暗闇を好む。
「ゴブリン」という名前は、アングロ・ノルマン語(11~14世紀頃にイギリスを支配していたノルマン人たちの言語)の”gobelin”に由来します。
ゴブリンは元々、イギリスを中心としたヨーロッパに伝わる妖精でした。子どものように小さく醜悪な姿をしていて、馬屋や洞窟などの暗闇を転々として暮らしていると考えられています。
ゴブリンは悪戯が大好きで、人をからかい不幸にすることを好みます。コップをわざと倒したり、人を転ばせたり、悪夢を見させるといった小さな悪事をはたらくのです。
また、彼らの笑い声はミルクを腐らせ、果物を木から落とすといわれていました。
日本では子どもを躾ける時、「言うことを聞かないと、鬼に喰われてしまうぞ」などと言って脅しますが、ヨーロッパでは「ゴブリンにさらわれてしまうぞ」と言います。日本の鬼のように、ゴブリンは民話に登場する恐ろしい存在だと考えられているのです。
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ゴブリンが登場する物語
ゴブリンが登場する物語にはどんなものがあるのでしょう?
有名な物語のひとつに、19世紀スコットランドの作家ジョージ・マクドナルドが著した『お姫さまとゴブリンの物語』があります。
この物語の中では、ゴブリンは元々、地上に住んでいた人間でしたが、地下の洞窟に追いやられ、そこで王国をつくり暮らすようになったとされています。彼らは人間の妬み深い面を象徴する存在であり、夜になると地上にやって来て悪さをしでかしていました。
ゴブリンが出てくる有名な物語をもうひとつご紹介しましょう。トールキンの『ホビットの冒険』です。
この物語に登場するゴブリンは、後に書かれた『指輪物語』では「オーク」というオリジナルの名前で呼ばれるようになります。同じ種族なのに名前が異なるという矛盾を解消するために、「ゴブリンとはホビット語でオークのことだ」という設定が付け加えられたといわれています。
ゴブリンの仲間 コボルトとホブゴブリン
最後に、ゴブリンの仲間とされるモンスターをご紹介しましょう。
・コボルト
ファンタジーRPGの世界では、コボルトというとゴブリンと同じように下級のモンスターですが、元々はドイツの妖精で、家の精霊だと考えられていました。
コボルトは金髪で赤い絹のコートを着た小さな子どものような姿をしています。夜中になると人間の代わりに家事を行い、報酬として皿いっぱいのミルクを貰っていました。未来を簡単に予知したり、色々なものに化けたり、姿を消すこともできるといいます。
コボルトはまた、鉱山にもよく出没します。よい金属を盗み、代わりに役に立たない金属を置いていくとされ、後にその金属はコバルトと呼ばれるようになりました。
・ホブゴブリン
ホブゴブリンもファンタジーRPGでは邪悪なモンスターとして描かれますが、元は善良で人間の手助けをしてくれる妖精です。ホブゴブリンの「ホブ」とは、善良な妖精の総称で、ホブゴブリンとは「善なるゴブリン」という意味でした。
ホブゴブリンのイメージが善良な妖精から邪悪なモンスターへと変わったのは、ファンタジーTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)の登場がきっかけだといわれています。
D&Dでは、ホブゴブリンはゴブリンの上位種族であり、より強力で邪悪な種族として描かれます。D&Dのヒットとともにこのイメージは人々の間に広まり、今やすっかり定着してしまったというわけなのです。
こうしてみると、ただの下っ端モンスター・ゴブリンとその仲間たちにも様々な歴史背景があることがわかります。ゲームで遊ぶ際には思い出してみるのもいいかもしれませんね。
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