小説や漫画などを創作する時、登場人物がどんな材質の武器を使っているのか、切れ味はいいのか悪いのかなど、うまく描写できずに困ったことはありませんか?
今回はそんな時のために、よく使われる武器の材質や作り方、特徴をご紹介します。
目次
武器はどのようにして誕生したの?
まずは、どのようにして武器が誕生したのか振り返ってみましょう。
太古の昔、自然界に存在する骨や石・木切れなどは動物を狩る時の道具でした。やがて、これらの道具が人に対して使われるようになったのが武器の始まりだと考えられています。
人類は当初、身の周りにあるものを無造作に握ったり投げたりしていましたが、次第に大きさや重さなどが扱いやすいものを選ぶようになり、さらに加工を試みるようになります。
こうした流れの中でよく使われていたのが、木や骨、石で作られた武器です。
木・骨・石で作られた武器とは?
①木製武器・骨製武器
木や骨を使って作られた武器には、棍棒や槍、弓矢、剣などがあります。こうした武器は石のナイフで削ったり、彫刻を施すこともできました。
・棍棒:落ちている木切れのいらない枝をはらえば出来上がり!
・槍・弓矢・剣:石のナイフを使い、木切れや骨を削って尖らせたり、石器やサメなどの歯をはめ込んだりする。
②打製石器・磨製石器
10万年前頃になると、石を砕いたり削ったりして作られた狩猟道具が作られはじめます。
石器によく使われる素材は?
・フリント(燧石=すいせき):火打ち石としても使われる。薄く剥がれる性質と硬さから、斧などによく加工された。
・黒曜石:ガラス質で薄く剥がれる性質があり、鋭い刃先に加工できる。自然界に多く存在するため入手もしやすい。欠点はもろいこと。
【磨製石器の作り方】
①素材となる石を砕き、手頃な大きさの破片を選ぶ。
②より硬い石で破片を削る。
③尖った石で形を整えたら完成!
①素材となる石を砕き、手頃な大きさの破片を選ぶ。
②より硬い石で破片を削る。
③尖った石で形を整えたら完成!
石や骨などの武器は石器時代だけでなく、地域によっては長い間武器として使用され続けています。
たとえば現在のメキシコで栄えたアステカでは、生贄の心臓をえぐるための石の短剣や、平らな木の板に黒曜石をはめ込んだ剣などが16世紀になってからも作られました。
銅の短剣の長所・短所
石器時代の終わり頃(紀元前4000年頃)になると、銅製の短剣が登場します。
【銅製の武器の長所と短所】
○長所
・一般的な「かまど」を使って製錬できる(銅は約1100度で溶ける)。
・るつぼで銅を溶かし鋳型に流し込むことで、大量生産も可能。
・銅は柔らかいので、叩いて薄く加工しやすい。
×短所
・石器時代には材料を入手しにくく、作るのにも手間がかかった。
・銅は柔らかいため、実戦向きではない(盾に当たると曲がってしまう。曲がりやすいので長剣にも不向き)。
→王様などが権威の象徴として持つにはピッタリ!
青銅の剣の長所・短所
紀元前2500年頃になると、青銅製の武器が登場します。青銅とは、銅と錫(すず)を混ぜた金属で、青銅製の剣はメソポタミアやエジプト、北ヨーロッパなど幅広い地域で作られました。
【青銅製の武器の長所と短所】
○長所
・銅と違い、長い剣でも曲がらない!
・錫10%・銅90%の割合で混ぜると最も硬い青銅ができる。
×短所
・特に錫は入手困難。
→逆に、錫の鉱山か輸入ルートを持つことが国の繁栄にも繋がった。
刀身と柄とは別々に作られることもあれば、一体成形されていることもあります。
一体成形の場合、刀身に加わる力がそのまま手首に伝わりますが、刀身と柄とが別々になっていればこの力から手首を守ることができます。
戦闘に最適! 鉄製武器の作り方
人類が最初に材料として使った鉄は「いん鉄」です。
「いん鉄」は、宇宙から来たいん石に含まれる鉄のことで、様々な武器に加工されました。
やがて人類は、いん鉄に頼らなくとも、地球上に豊富に存在する鉄を使って大量に優れた武器を作り出せることに気づきます。
鉄の製錬法を保持することは、国家の繁栄に結びつきました。紀元前15世紀頃のアナトリア(現在のトルコ)に現れたヒッタイトは、鉄の製錬法を保持し、優れた鉄製の武器を生産することで、周辺の国々を次々と攻略していきます。
紀元前12世紀にヒッタイトが滅亡すると、それまで秘密とされていた鉄の製錬法はメソポタミア全域からヨーロッパへと伝わり、鉄器時代の到来へと繋がりました。
鉄の武器には3つの作り方があります。それぞれの製作方法や特徴をみていきましょう。
【熱して叩く】
・作り方:
①鉄鉱石を熱し、管で息を吹き込み1100度程度まで加熱する。
②不純物を含む鉄塊ができるので、さらに熱して叩く作業を繰り返す。
・特徴:
純度が高く硬い鉄ができる。青銅よりも柔らかいが、量が豊富なため武器を作りやすい。
【焼き入れする】
・作り方:
①鉄製の武器を加熱する。温度は高すぎても低すぎてもだめで、工房により秘伝とされている。
②ハンマーで形を整える。
③油・樹液・蜜・血など(工房により秘伝)に入れて急速冷却する。
・特徴:
この焼き入れの作業を繰り返すことで、硬い武器ができあがる。ただし、やりすぎると逆にもろくなってしまう。
【鋼の武器】
・作り方:
①純度の高い鉄塊と木炭を「かまど」に入れ、火をつける。
②再加熱して余分な炭素を抜き、炭素が全体の2%になるよう調整する。こうしてできた硬い鉄が「鋼」(はがね)。
・特徴:
1500度以上の温度で鉄を溶かさなくてはならないので、ある程度の技術が必要。ヨーロッパでは「ふいご」が登場する15世紀頃、アジアでは5世紀頃まで、鋼の武器を作ることはできなかった。
木・骨・石・銅・青銅・鉄。材質によって、武器の入手難易度や戦闘方法はかなり変わってきそうです。あなたなら登場人物にどんな武器を持たせますか?
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