国民の浪費癖を心配した政治家が「ぜいたく禁止法」を発布するほど繁栄を極めていたローマの時代。人々はいったいどんな食事をしていたのでしょうか?
今回はパンや肉、魚、飲み物など、ローマの人々が好んだ食材をご紹介します。
目次
種類も豊富 ローマの主食・パン
最初にローマの主食・パンをご紹介しましょう。
ローマでは当初、麦粥を主食にしていましたが、やがて無発酵パンが作られ始め、その後、イースト菌で発酵させたパンがよく食べられるようになります。
パンの製造は紀元前2世紀頃から始まり、紀元前70年頃には街中に多くのパン屋が建ち並ぶようになりました。
パン作りは専門の職人(パン焼き奴隷)の仕事です。一般家庭でパンが作られることはありませんでしたが、例外的に金持ちの屋敷ではパンが焼かれていました。
ローマではパンのことを「バーニス」と呼んでいます。たくさんの種類のバーニスの中から、代表的なものをご紹介しましょう。
・バーニス・ビーケンティーノ
恐ろしく硬いパンで、酒やミルクに浸して食べます。土鍋に生地を入れ、土鍋が割れるまで窯の中で熱するという方法で作られ、手間がかかるため高価でした。
・バーニス・アディパートス
一種のピザで、平らな形をしています。ベーコンの切り身や脂身がトッピングされていました。
・バーニス・ムスターケウス
結婚式で参列者に配られる縁起物のパンです。ドーナツ型をした生地に、果汁やチーズ、ハーブを練り込み、月桂樹の冠を載せて焼き上げます。
・バーニス・ミーリターリス
ビスケットのような硬いパンで、兵糧として用いられていました。食べる時は水に漬けて柔らかくします。
ローマの人々が好んだ肉・魚とは?
続いて、肉や魚についてもご紹介しましょう。
【肉類】
ローマの人々はイノシシや野豚の他、羊やヤギの肉も食べています。紀元前3世紀までは牛を殺すことが禁止されていましたが、後に緩和され、牛肉も食べられるようになりました。
・豚肉
豚肉は煮て食べることが多かったといいます。脂肪が煮汁に溶け、柔らかく美味になるためです。
また、植民地のガリア人かゲルマン人が発明したというハムも輸入されていました。
・鳥肉
家禽の他、ヤマウズラやダチョウ、オウム、スズメといった野鳥が好まれました。
卵料理も人気です。ローマの正賓「ケーナ」では、コースメニューの最初にゆで卵が登場します。また美食家アピキウスはカスタードプリンを発明したといわれています。
【魚類】
・魚類
マグロが好まれた他、ヒメジ、ボラ、イセエビ、ヤリイカ、ウニなどがよく食べられていました。魚は塩漬けにされることが多かったようです。
・貝類
特に好まれたのはカキで、ハッカとパセリ入りの蜂蜜に生ガキを浸して食べます。ローマ軍に塩漬けのカキが納入されたという記録も残されています。
チーズや野菜、調味料
【チーズ】
チーズはとても人気があり、そのまま食べる他、燻製にすることもありました。
チーズを使った料理をふたつご紹介しましょう。
・イボトゥリマ
チーズにドライフルーツとワインを加え、加熱した料理です。
・モリトゥム
チーズをすり下し、ニンニクやスパイスを混ぜて作ります。
【野菜類】
キャベツやアスパラガス、カブ、ラディッシュ、レタス、タマネギ、豆類などが食べられています。
ニンニクもありましたが主に庶民の食べ物で、富裕層はあまり食べたがらなかったようです。
【調味料】
・スパイス・ハーブ類
胡椒、コリアンダー、セロリ、サフラン、パセリなど様々なスパイスやハーブが使われています。これらはソースの材料にもなりました。
・調味料
ガルム(魚を発酵させて作るうまみ調味料)の他、蜂蜜や酢、オリーブ油、煮詰めたブドウ汁なども料理を彩ります。
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