北欧神話の中でも、竜殺しの英雄として名高いシグルズ。『ニーベルンゲンの歌』やワーグナーの作品ではジークフリートとも呼ばれています。
シグルズが愛した美しい女性の名前は、ブリュンヒルデ。その名前は、映画『崖の上のポニョ』に登場するポニョの本名としても使われています。ここでは、ふたりの間の悲しい愛の物語をご紹介しましょう。
目次
ブリュンヒルデとシグルズの出会い
- 予言の力やさまざまな知識を持つ、美しいワルキューレ(ヴァルキュリャ)。
- 竜殺しの英雄シグルズに救われ婚約するが、後に破棄されてしまう。
- その後別の男性(グンナル)と結婚したが、シグルズへの思いを断ち切れず、復讐へと走った。
北欧神話の中でも『詩のエッダ』や『ヴォルスンガ・サガ』などに登場する王女ブリュンヒルデ。
ブリュンヒルデはブズリ王の娘で、予言の力やルーン文字の知識、魔術の知識を持つ美しいワルキューレ(戦場の女神)です。
ところが彼女は主神オーディンに逆らったため、眠りの呪いをかけられてしまいます。こうしてブリュンヒルデはヒンダルフィアル山の上にある、炎に囲まれた館の中で、深い眠りにつくこととなりました。
そんな彼女のもとを、ある日、ひとりの男が訪ねます。ヴォルスング家の王ジグムンドの息子で、竜殺しの英雄として名をはせていたシグルズです。シグルズはブリュンヒルデにかけられた眠りの呪いを解くと、優しく愛の言葉をささやきました。ブリュンヒルデもこれを受け入れ、ふたりは結婚の約束を交わします。
しかし、シグルズは後にこの婚約を破棄すると、ギューキ王の娘グズルーンと結婚してしまいました。
次項ではその後の顛末もご紹介しましょう。
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ブリュンヒルデの復讐
ギューキ王にはシグルズと結婚した娘の他に、グンナルという息子がいました。
シグルズは義兄弟となったこのグンナルと、自分のかつての婚約者ブリュンヒルデとが結婚できるよう、手伝いをすることになります。
ブリュンヒルデの住む館はかつてシグルズが訪れた時と変わらず、周りを炎に囲まれていました。グンナルはなんとか館に近づこうとしますが、乗っていた馬が炎を怖がりうまくいきません。
そこでシグルズはグンナルの姿に変装し、炎を飛び越えブリュンヒルデのもとへと向かいます。ブリュンヒルデはその勇気を認め、グンナルと結婚することになりました。
しばらく平穏な結婚生活を送っていたブリュンヒルデですが、シグルズの妻と対立したことがきっかけで、あの時自分を迎えに来た男がグンナルではなく、本当はシグルズだったことを知ります。
ブリュンヒルデの心は乱れに乱れました。裏切られたという思いと、シグルズを忘れられない気持ちから、彼女は夫とその弟をそそのかし、シグルズを暗殺するよう仕向けます。
こうしてシグルズは命を落とすこととなりました。
彼の死を知ったブリュンヒルデは、高笑いした後で「シグルズとともに火葬してほしい」と言い残し、自ら命を絶ったということです。
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